君の見ていた世界
初めは、ただの興味だった。
普段、夏目はどんな世界を見ているのかとても気になっていたんだ。
だけど、実際目にしてみて分かった。
「こんなの、塔子さんたちに言える訳が無い」
こんなのを、あいつはずっと抱え込んで生きてきていたのか・・・誰にも頼ることなく。
自分の無力さにも、普段からこんなにしんどい光景を見ている癖に弱音なんか吐かない夏目に対しても苛立ち、思わず唇を噛み締める。
そんなに、俺は頼りないか?
確かに余り力にはなれないかも知れないが、話を聞くくらいは出来るはずだ。
強くなりたい。
そう思った。
こんなにひどい光景をあいつが、夏目が見なくて済むように。
名取さん、といったか?せめて、あの人と同じくらいに俺が強かったら・・・
頼ってくれるのかな?
「ッ痛!」
なんて事を考えながら走っていたら、突然目に激痛が走った。
この気配、こっちか!
ぽん太とは逆の方向になってしまうけれども、仕方ない。
少しでも、夏目の役に立ちたいんだ。
ずっとあいつの傍に・・・いや、隣に居たいから。
守られるだけじゃなくて守りたい。
夏目、もし今回お前の為に役立ったらお前も少しは俺を頼ってくれるようになるかな?
俺は、お前にとっての「特別」になれるかな?
そうなれたら良いのに。