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『仮面ライダーW』-Another Memory-

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Episode:5『変化』







「アパートが…無い」

翔太郎やフィリップとの別れから、その後大学の研究室での仕事を終えた速人は、駅前で昼間食べ損ねた牛丼を弁当で買い、彼が借りているアパートへと帰って来た。

だが、そこに3年住んだ見慣れたアパートは無く、代わりに見た事無い2回建ての古いビルが建っていた。

(道を間違えた?)

今日は色々あった。
夢想降ろしの速人でも度胆を抜かれる出来事ばかりだ。
自覚はないが、きっと疲れてたんだろう。
でなきゃ、研究で徹夜して半分寝ながらでも帰って来れる我が家を間違える筈はない。

(きっと一本道を間違えたんだな)

そう思った速人は、踵を返し、来た道を引き返そうとしてある事にハタと気付く。

速人が住んでるアパートは、大きな高架下側道の奥まった場所にある。
電車線路を越える為の高架だ。
当然側道は突き抜けてはおらず、突き当たりにあるアパートの先は線路だ。
そして側道に入ると、脇道無く一直線。
つまり一本道なのだ。

(まさか、ありえ………るか?)

速人は少し考えて振り返り、ビルの一階部分のシャッターを見る。

(これ…チタン?)

シャッターをチタンで作るなど、何処の軍事基地?と言いたい。

しかも、小さな二階建てのビルは、何処から見てもその装いは古く、壁には無数のヒビが入っている。
シャッターにしても汚れが酷く、速人が機械工学の博士号を取得しているから見抜けた物の、そうで無ければこんな"錆び"だらけに"偽装"したシャッターの材質等見抜ける一般人はいないだろう。

マジマジと見て、触り、少し動かしてみる。
当然シャッターはビクともしない。
ガシャリと音も立たなかった。

速人は腕組みして少し考えると、徐に鞄の中に入れっぱなしの携帯電話を取り出そうとして固まった。

(なんだこのゴツゴツ感は?)

ゆっくりと鞄の中から手を出していくと、手の中には携帯電話が収まっている。
但しデカイ。
今時こんなデカイ携帯電話等使っている者はいないだろう。
スマートフォンでは無い、携帯電話だ。

(マジか…何時入れ換わったんだ?いや、変化したのか?)

そこにあったのはスタッグフォン。
翔太郎が使っていたクワガタに変形する携帯電話だ。

速人は取り敢えず開いてみる。
すると、番号ボタンが勝手に光出して、5桁の番号を刻んだ。

『00000』

「…………」

無言で速人はその番号をプッシュした。
すると、ゴウンと言う音と共に、シャッっとシャッターが一気に開く。

(こんな一瞬で開くシャッターねぇぞ?偽装の意味ねぇな)

開き方の不自然さにそんな事を思いながら、速人は開いたシャッター中に入っていった。





「ハードボイルダーに、リボルギャリーかよ…」

外であれこれしてる間に、冷たくなった牛丼弁当をムシャムシャと食べながら、速人は目の前にあるバイクと回転換装ベースを見ながらボソリと呟いた。





外から開いたシャッターの中に入った速人は、取り敢えず人が居ないかどうか確認しながら、「すいませーん」と声を掛けて色々と歩き回った。

結果、誰も居なかった。
正確にはカタカタ動くメモリガジェット達以外居なかった。

鞄の中の携帯電話がスタッグフォンに変化していた事から、ある程度予想はしていた物の、『カタカタ、ヒューン』と近づいて来たメモリガジェット達に対して、情けない声で「うぉっ!?」っと声を上げてしまったのは、彼の秘密の一つとなった。

二階には"あの"応接室と、自分の元居たアパートの部屋があった。
家財道具も総て揃っている。
とは言っても、田舎から一人東京に出てきて、あまり裕福では無い実家の世話にはならずに大学に通う速人だ。
それほど多くの物は無い。

小さな冷蔵庫と、ホームセンターで買ったプラスチック製の三段衣類収納箱に、パイプ製のシングルベッドと、最近購入した14型薄型テレビ、後は型落ちのノートパソコン位だ。

だが、それらを見て一応ここが自分の部屋であると、安堵の息を吐く。

大学の研究室で懇意にしてくれている教授の手伝い仕事以外収入の無い速人は、大学の学費を出してくれている両親に、家賃や生活費迄面倒見て貰う訳にはいかなかった。

実家には、速人の下に三人の妹達がいる。
長女が高校に入ったばかり、次女はまだ中学二年生で、三女は小学六年生だ。
速人の上に兄がいるが、実家の農家を継いでいるので、外からの収入は見込めない。

速人に取っては、実家の面倒と農家を継いでいてくれて、「お前は好きに生きろ」と言ってくれた兄には感謝の気持ちと申し訳なさで一杯だ。
だから、そんな兄の世話になる訳にもいかない事は解りきっていた。

実際には速人が路頭に迷ったら、一も二もなく助けてくれるだろうが、速人は例え路頭に迷っても助けて貰うつもりも無かった。

自分の道は、己で切り開いてこそのヒーローだ。
まあ、まだ学費の面倒をみて貰っている身分で大きな声では言えないが、そう言う矜持を速人は持っている。

そんな矜持まで持っているのだから、尚更宿無しになる訳にはいかなかった。
そんな安堵の息を吐いたのである。





(しかし、ご都合過ぎて逆に清々しいな)

牛丼を食べ終え、ハードボイルダーとリボルギャリーを触りながら速人は思う。

Wに関する略総てのアイテムが揃っている訳だ。
しかも拠点まで新調されている。
外見はボロビルだが。

(家賃とかどうなるんだろ?)

そんな事を考える速人だが、実際問題はもっと複雑だ。
一体全体この現象はいかにして起きてるのか?
Wに変身するに際しては、翔太郎とフィリップがもたらしてくれた。
そこには、常軌を逸した経緯があるものの、一応理由付けもできている。

じゃあ、この今起こってる事実は誰がもたらした?

「これからWとして活動していくのに際しては、至れり尽くせりだな」

だが、速人は今その考えを破棄する。
今考えても答えが出ないものは、答えに至るキーワードが出てから考えれば良い。
勿論調べはする。
だが、それは今じゃない。

そう思い今は憧れのライダーツール達を楽しむ事にしたのだ。

したのだが………、

(しかしこれ、バイクは別として…)

「公道走れるのか?」

速人はリボルギャリーを見ながら、そんな事を呟くのだった。