東方~宝涙仙~ 其の壱五(15)
「そういわれてもなぁ…油断してたお前が悪い。」
「なんだとー、このズル虫!!」
「なんだそれ、そう油断してるとまた切られるぞ」
チルノの目の前で倒れて寝そべっていたネペルはいつの間にかいなり、天井に張り付いていた。それも一瞬で、まるで瞬間移動したかのように早かった。
「は、早い!」
チルノはビックリ仰天。
「チルちゃん気を付けて。おそらくあれがさっきの赤い光の正体。」
大ちゃんがチルノに冷静な言葉をかける。
「チルノ、あれは私達じゃ敵わない…」
「何言ってるんだルーミィ!さっきアタイはアイツに一撃喰らわせてやったんだぞ!もっかい行くよー」
「氷符『アイシクルフォール』!!」
さきほど同様の氷の弾幕が廊下に発生する。今度はかぼちゃんの弾幕の光の効果があるおかげで相手の位置までよく見える。
二度目も正面めがけてネペルは突っ込んできた。
「さっきと同じなんて懲りないなぁ、えいっ!」
また正面めがけて飛んでくるネペルに対して正面に壁を作るように弾を飛ばす。
「さっきと同じで成功すると思うとは単純な奴だ」
ネペルはしゃがみ態勢を低くして弾を避けながら、刀を床と水平に横に突出し両手で構えをとった。
「降段の構え『身―残ノ白河(みね―ざんのしらかわ)』」
「なんだってー!?」
ネペルの刀はチルノの左胴を斬りぬいた。
「チルちゃんッ!!」
大ちゃんが叫ぶ。
「ん?アタイ斬られてないよ?」
「え?」
「阿呆。斬られそうになった場所を確認しろ氷妖精」
チルノは言われた通りに斬られたと思う場所を見た。
「これは!!」
チルノの左横腹を通った刀の軌道を描くように白い光のような線が残っている。見るからに触れてはいけなさそうな感じだ。
「一撃で終わりはしないぞ」
「チルノ!ルーミアも戦うぞ!」
「ルーミィ来ちゃダメだ!サイキョーのアタイでもちょっとやばいかもしれないくらいなんだ!」
「そんなこと言ってないで!」
「チルノ、ちゃんと避けてね!闇符『ダークサイドオブザムーン』!」
ルーミアはチルノがいてもお構いなしに狭い廊下で赤い弾を拡散させる。
「簡易パーフェクトフリーズ!」
ルーミアの飛ばす弾幕が自分の目の前にきた時、氷で凍らせて固め飛弾を止めるチルノ。ある意味守備面においてチルノは本当に"サイキョー"かもしれない。
「薄い薄い。まだこんなんじゃ弾幕には見えないな」
目で追える程度のスピードでルーミアの弾幕を避けるネペル。
「油断しちゃダメっていったのはあんただぞー」
ルーミアは赤い弾に紛れて、満月のように丸く黄色い少々大きめの弾も追加する。
「どうせ氷妖精のように隠し弾があると思ったぞ。残念だったな…」
「!?」
「すでに後ろだが、どうする」
「い、今まで目の前にいたのに!?」
ルーミアが振り返るとそこには誰もいなかった。チルノも大ちゃんもかぼちゃんも、誰ひとりとして攻撃するタイミングを掴める者はいない。唖然と見ているしかなかった。
「横だ」
「横!?」
「ただいま、正面だ」
「しょ、正面!?どこ!どこ!」
「私を探してないでお前の周りをよく見渡せ」
ルーミアの周りは五角形に結ばれた白い光の線で囲まれていた。
「残光『光屈ノ線々-プリズムライン-』。お前ら二人に忠告するぞ。動けばその残像から弾幕を放つ」
「線から…」
「弾幕を…!?」
▼其の壱六(16)へ続く
作品名:東方~宝涙仙~ 其の壱五(15) 作家名:きんとき