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Flying Get !

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「今日の撮影は終了……っと」
黄瀬涼太はそうつぶやきつつ携帯電話からツイッターに書き込んだ。
今日は日曜で学校は休み。海常高校バスケ部の練習はなく、ひさびさにモデルの仕事をした。
黄瀬の撮影は午前中で終了したが、スタッフは他の撮影があるということで今も仕事をしている。
そんなわけで、黄瀬はひとりで撮影現場を後にした。
とりあえずどこかで昼飯。
そう黄瀬が道を歩きながら思ったとき。
「きーちゃん!」
聞き覚えのある明るい声が聞こえてきた。
「!?」
予想外すぎて黄瀬はついビクッとし、それから、声の聞こえてきたほうを見る。
想像したとおり、そこには桃井さつきがいた。
しかし、それだけではなかった。
「!!!???」
黄瀬はさっきよりも驚き、眼を見張って立ちつくす。
なぜなら。
そこには、桃井だけではなく、青峰大輝、緑間真太郎、紫原敦、赤司征十郎、そして黒子テツヤがいたからだ。
黄瀬を含めてキセキの世代と呼ばれる者たちが勢ぞろいしている。
帝光中学のバスケ部でともにすごした者たちがいる。
みんな、私服だ。
「……な、なんで……?」
黄瀬がぼうぜんとする一方で、彼らはぞろぞろとやってきた。
「朝、きーちゃんがあそこで仕事するって返信くれたから」
近くまできた桃井が撮影現場を指さし、笑顔で言った。
そういえば、朝に黄瀬がツイッターに「今日は午前中はモデルの仕事するっス」と書き込んだあと、桃井から「どこで撮影するの?」と携帯電話にメールが来て、撮影場所を教えるとまずい相手ではないので、気軽に本当のことを返信したのだった。
「黄瀬、ぼーっと突っ立ってないで、行くぞ」
そうえらそうに言ったのは青峰だ。
黄瀬が長いあいだ憧れていた相手である。もちろん、バスケの選手として、の意味であるが。
「あ、うん」
命令されるのに従って黄瀬は歩きだした。
そして、すぐにハッと我に返る。
「って、どこに行くんっスか!?」
「この時間だから昼食に決まっているのだよ」
緑間が黄瀬を振り返りもせずに冷静に答えた。その緑間の隣では身体がひときわ大きな紫原がまいう棒をサクサクと食べている。
「あ、そっか、オレもこれから昼飯に行こうと思ってたっス」
黄瀬は納得した。
だが、すぐにまたハッと我に返った。
「いや、そういうことじゃなくて、なんで、みんな、ここにいるんっスかーーー!?」
一番の疑問は、コレだ。なぜ、みんなが、遠方で高校生活を送っている紫原や赤司までが、ここにいるのか。
みんながここにいる。その驚きで、黄瀬の声はつい大きくなった。
「……黄瀬君、今日は何月何日ですか?」
ふいに近くから黒子の声がした。
黄瀬はその声のほうに眼をやる。
いつのまにか黒子が隣を歩いていた。
本当に、いつのまにかだと思いながら、黄瀬は黒子の質問に答える。
「六月十七日っス」
「じゃあ、明日は?」
「六月十八日に決まってるっス」
「六月十八日はなんの日でしょうか?」
「えっ……」
一瞬、黄瀬は言葉をなくした。
六月十八日がなんの日か。
わからないわけがない。
「……オレの生まれた日っス」
そう答えた声はなぜか小さくなった。
けれども、ちゃんとその声は届いたらしく、みんなが黄瀬のほうを見た。
「明日は月曜だ。さすがに来られない」
京都で暮らす赤司が言う。
「だから、フライングすることにした」
その顔には笑みがあった。
フライング。
誕生日の、お祝いの、フライング。
それに気づいて、黄瀬はまた言葉をなくす。
「あのな、黄瀬」
長いあいだ憧れていた相手が、決まり悪そうな表情で話す。
「てんでバラバラなオレたちを、バラバラになったオレたちを、つなごとしてんはだれかなんて、みんなちゃんとわかってんだよ」
「きーちゃん、まめにメールくれたり、ツイッターでいろんなこと知らせてくれたりするもんね」
青峰の幼なじみが補足した。
お互い相手に対していろいろと言ったりするが、なんだかんだいって息が合っている。
「だから、今日の昼はごちそうするのだよ」
「あ、でも、オゴリって言っても、オレたちはおまえみたいに仕事してるわけじゃねぇから、たいしたもんオゴれねぇからな」
「ごめんね、きーちゃん。ムッ君の交通費、みんなで折半してるの」
「うん、そうなんだよねー」
「ちなみに赤司君は全額自己負担ですが、最近、将棋大会で優勝して賞金を獲得したそうで、問題ないそうです」

黄瀬は笑った。
さっき撮影していたときの完璧な笑顔ではない。
黄瀬涼太、等身大の笑顔だ。



本当はごちそうもいらない。
みんながここにいることが、最高のプレゼント。










作品名:Flying Get ! 作家名:hujio