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なつめ ゆず
なつめ ゆず
novelistID. 4036
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センサー

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 後ろから髪をひかれるような感覚に、平和島静雄は振り返った。
「…どうした?」
 先に立って歩いていた上司である田中トムが、静雄の気配が離れたのに気付いてか振り返る。
「や、なんでもないっす」
 首を振って歩きだしたが、後ろ髪が引っ張られる感覚がおさまらない。
 それどころか、背筋がぞくぞくするような感覚までしてきた。
 もしかして、と立ち止った静雄は、トムを呼びとめた。
「すんません。ちょっと…」
「次は俺一人でも大丈夫から、用事あるなら行ってこいよ」
「すんません!」
 頭を下げると静雄は勢い良く駆けだした。


 ぞくぞくする。
 体中がセンサーになったような感覚。
 この感覚になった時には必ずやつがこの町にいる。
 しばらく走っていると、たまたま覗き込んだ路地の奥に黒づくめの細い姿を見つけた。
「…くくっ」
 思わずもれた笑い声とともに、そばにあった標識を引き抜く。
「い〜ざ〜やぁあああああ!!」
 走り出しながら叫ぶと、振り返った男の顔が笑みに歪んだ。
「シズちゃん…元気だねぇ」
「うっせえええ!ここにはくんなっつってるだろうがああ!」
 振り下ろした標識をひょいとよけられ、頭に血が上る。
 壁に当たる感触も無視して斜めに振り上げると、コンクリート片が宙を舞った。
「でもごめんね?シズちゃんと遊んでる暇ないんだ★」
 お疲れー、と走っていく臨也の背中を追って静雄は走り出す。

今日も池袋の街で小さな戦争が始まった。
作品名:センサー 作家名:なつめ ゆず