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アルロラアル ショート詰め合わせ

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反比例のグラフ


あいつはチェスの兵隊で俺はそれを狩るもの
(君はボクらに抵抗するもの)
だから、決してこの思いは口に出してはならない。
(なのに「好き」だなんて、皮肉な。)
俺はあいつの差し出す手を拒んだ。
(ボクは君に拒まれた)
あの瞬間から
(ボクらは違う道を歩み始めた)
自分の『本当の気持ち』が見えないふりをして。
(本当は苦しくて仕方がない癖して)
この感情は決して交わることはない。
(ボクの願いが叶うはずがない)
ファントムを殺さない限りは
(君が歩くのをやめるまでは)

何度だって戦おう


















(ロラ→アル)
存在意義

少し前までは、自分が存在する理由を聞かれたら即座に「ファントムを守るため」と答えられた。
でも、今、同じ質問をされたらどうだろう?ボクはぶれる事なく、昔と同じように答えられるだろうか?
 自分が分からなくなってしまった。
何のために生きるのか、誰のために生きるのか、自分は存在していていい人間なのか。そんな疑問が脳内を右往左往する。
 きっと、それはあの青い瞳に出会ってしまった日からだ。
爆発によって飛び散る石の欠片、舞い上がる砂塵その圧倒的に不利な状況を気にも止めず、こちらを真っ直ぐに見つめる海のように碧く静かな双眸に囚われた気がした。
 力でも、場数でも、自分の方が勝っているはずなのに・・・目が離せなかった。それどころか、恐怖を覚えもした。
 (なんでだろう、どうしようもなく会いたくなってしまう)
 手に入れたい。ロランはそう思った。
彼が何かを求めるのはファントム以外では初めての事だったので、混乱もひとしおだった。
 (誰かに必要とされたいと思うのは)
(あの人以外で)
(もう、有り得ないと思っていたのにな。)

















(アルロラアル)
青い花


森を歩いていた時だった。足元で小さな青い花を見つけた。
どこの国の道端にでも咲いているような、ありふれた花。
だけれど、その色にロランは心を惹かれた。
「アルヴィス君みたいな色だ。」
「俺がどうしたって?」
「うひゃっ!?あ、アルヴィス君、なぜこんな所に?」
「何だっていいだろ(お前の声が聞こえたからなんて恥ずかしくて言えない)。」
「そ、そうですよね。すみません」
「あ、いや別に怒ってるわけじゃない(から、そんな悲しそうな顔をするな)。」
「そうですか(よかった~、ただでさえ敵なんだからこれ以上印象が悪くならなくて)。」
「あぁ。で、何が俺みたいだって?」
「・・・この色です。」
「色?あぁ、お前にはこんなに鮮やかに見えるのか。」
「え、」
「自分じゃ見慣れてる所為か、くすんで見えるんだ。」
「そ、そんなことないです!とても綺麗な色ですよ。ボク、アルヴィス君の髪も瞳の色も大好きですから」
「ロラン(大好きって言われた)!」
実は、アルヴィスもロランのことを密かに想っていたのだ。だから、その相手からの褒め言葉がが嬉しくないはずがない。表情こそ、いつも通りの無表情だが彼を取り巻く雰囲気が心なし柔らかくなる。
「あ、それにこの花の花言葉もアルヴィス君に良く似合ってるんですよ。」
「どんな?」
「揺るがぬ意思、可憐・・・あとは国によってですが、大切な人とか」
「大切な人。」
「はい」
その一言でアルヴィスは、ぼうっとしてしまう。
「どうしました?」
「え、あ・・・いや、そんなに真っ直ぐに好意を示されるなんて予想外だったから・・・」
「め、迷惑でしたかっ!?」
「そうじゃなくて・・・」
「ごめんなさい!」
勢いよく頭を下げるロランに、アルヴィスはどうしたらいいか分からなかったので、傍から見た二人は挙動不審なのだが互いに必死であったため、そんなことにまで気が回らなかった。
「だから、嫌じゃないって」
「とか言いながらアルヴィス君、声が怒ってますよ?」
「それは、お前が勝手に一人合点して人の気持ちを勝手に決めつけてるからだ。」
「え?」
「はぁ~、本当に鈍いな。」
「鈍い・・・」
ガーンとでも効果音が付きそうなほどショックを受けてしまった。
「ぷっ、くくく。お前本当に面白いな。」
「笑わないでください」
「ふっ、・・・あー、そのアレだ。お前はもう少し自信を持ってもいいってことだよ、ロラン。じゃあ、ヒントだ。「嫌」の反対を考えてみろ」
「バカにしてますね。そんなの、誰だって分かるじゃないですか。」
「でも、さっきは分からなかったじゃないか?」
と、意地悪そうに笑うアルヴィスに、ロランは自分の頬が熱くなっていくのがわかる。
「えっ!?」
「そういうことだよ。・・・好きだ。ロラン、お前のことが好きなんだ。だから、あんなことを言われると困るよ。自分に都合良く考えたくなるじゃないか。」
「アルヴィス君」
「馬鹿だな。本当は言うつもりなんてなかったのに、ずっと黙っているつもりだったのに・・・出来なかったよ。」
「・・・。」
「なぁ、ロラン。こっちに、メルに来ないか?お前は強い。それに、良い奴だ。きっと、ギンタたちも気に入る。」
「ごめんなさい。ごめんなさい。本当に、それは無理な事です。・・・君は、狡い」
「狡い?」
「えぇ、そうです。だって、僕にはそんなこと出来っこないのに。」
「ファントムか」
「そうですね。彼も理由の一つですよ。ねぇ、言ったでしょう?アルヴィス君。ボクのこの手は血で汚れているんですよ?そんな人間を、本当に彼らは認めるでしょうか」
「ロラン!」
それ以上は聞きたくないとでも言うように、アルヴィスはロランを抱きしめたが身長差の所為でアルヴィスの方がロランに甘えているように見えてしまう。
「くすくす、あなたも大概、酔狂ですね。アルヴィス君。」
「うるさい。」
強く抱きしめているので、アルヴィスの声はくぐもっている。
そんなアルヴィスにロランは苦笑とも溜息ともつかないものをつきながら、さらりと毒を吐く。

「殺す気で向かってきたり、人の生き方を本気で否定してきたり・・・・」
「それはっ!」
アルヴィスが慌てたように、反論しようとするがそれより先にロランが言葉を続けてしまう。
「でも、ボクも酔狂の域にいるんでしょうね。そんな君が好きなのだから。」
「・・・えっ!?」
驚きすぎて間が空いてしまった。
「ほら、酔狂でしょ?」
「~っ!馬鹿!」
照れ臭さからアルヴィスは間近にあったロランの腹をつい殴ってしまった。
「っ痛」
「ご、ごめん大丈夫か?」
「なんて。」
「うわっ!」
今度はロランの方も、アルヴィスの華奢な体に長い腕を回し、互いに抱き合った状態になる。
「ふふっ、幸せですね。」
「あぁ、そうだな」
ごめんなさい。ファントム。今だけは、ボクをこの人の傍にいさせてください。
(ごめん、皆。今だけはこうしていたいんだ。次に会えるかどうかも分からないから。)
二人は、密かに同じことを考えながら互いを抱きしめる腕に強く力を込めた。