二人と一匹の事情④
現に、応接室に訪れる回数も隼人に着いてくる回数もかなり減っている。
猫という生き物は6ヶ月あれば仔を産む事が可能にまで育つらしいから、そんなに驚くことではないのだけれど。
「生々しいね。」
「まーな。ちくしょー」
「どうしたの?いきなりしんみりしだして。」
「聞くなよ。ばかやろー、そーゆーのは放って置くのが優しさだろ?」
「知らないよ。」
「・・・なんか、なんていうんだ?肺がだんだん壊死してくみたいな?」
「なまなましいね。ていうか、それタバコの所為でしょ。」
「黙秘権はつどー。」
「ばかじゃないの?」
たし、と隼人の頭が優しく叩かれる。
「うるせー。」
「要するにあれでしょ?寂しいって言いたいんでしょう。」
「当てるなよ。」
「やだよ。嫌でも目に入るから。」
「そーかよ。」
「そーだよ。」
そっけないその物言いに隼人は少しだけ傷付きながらも、ソファーの少しだけ開いている空間に視線を移す。その様子に雲雀は少しだけ呆れるがそのままにしておく。・・・雲雀とて少しばかり寂しいのはおんなじで、隼人の気持ちも何となく理解することができるから。
ばっ
「うおっ!?」
「魚?」
「ちげーよ!ってか、いきなり抱きしめんなよ気持ち悪りぃ。」
「君が悪い。」
「はぁ?」
「寂しいなら、正直にいいなよ。」
「んだよ。」
「・・・そうやって、うじうじされるよりは甘えるなり無くなりされた方がマシだって言ってるの。」
「~~っ!?雲雀のクセに生意気だ。」
「なにそれ。」
「しっ、仕方ねぇな。甘えてやるよ。」
「初めからそうしなよ。」
まだるっこしい。そういいたげな顔をしているのだろうが、雲雀の顔は隼人の肩口にある為、定かではない。
「ていうか、普通逆じゃね?」
「いいんじゃない?・・・声、震えてるし。」
「う、うるせーよ!雲雀のバカ!ばーか!」
「はぁ、子供?」
「だまれ!」
「やだ。」
ぎゅっ、隼人を背後から抱きしめる雲雀の腕の力が増す。
「ひば、くるし」
「本当、可愛くない」
「んなっ!?」
「いい加減にしなよ。・・・止められなくなるでしょ?」
「は?なにを、」
「君が、知らなくて良い事だよ。」
「ふーん?」
「何?知りたいの?」
イマイチ納得しない様子の隼人に雲雀が何かを説明しようとするが、その雲雀の瞳になにやら剣呑な光を見つけてしまい隼人は無意識に生唾を呑む。
「べつに、」
と、何でも無い風を装ってその一言を搾り出すのが精一杯だった。
「そう。」
どこか落胆したような、それで居て安堵したかのような返事が生ぬるい吐息と相まって首筋をなぞる。それに、一抹の居心地の悪さを覚えて隼人は誤魔化す様に背後―雲雀に体重を預けた。