二人と一匹の事情⑤
ただ単に、あの子の傍に居るのが心地良いだけ。
初めは本当に、ただそれだけだった。
意外と面倒見がいい所とか、お人(猫)良しだとか、好きなものには一途なところとか。
「結局、なんだアレか?アレだろ?それって恋って事だろ?」
「咬み殺すよ?ねえ、本当に人の話し良く聞いてた?あなたの耳には念仏だったのかな?」
「いや、念仏じゃなく惚気だろ?いーなー、いーなー青春っぽいじゃん!」
「ワオ、そんなに死に急ぎたいのかい?」
「うわっ!?あぶねー、不意打ちはナシだろ?」
「・・・そんなんじゃないよ。」
「じゃあ、何だ?」
何だ?そんなのこっちが知りたいよ。
酔ってるわけじゃないのにぐるぐるするんだ。
心が乱される?
この僕が?
そんなの、そんなの、笑えないよ。
「お母さん?」
「んなっ!?」
ビュ!
ゴーン
「いい音だね。」
「ってー!おまっ、変なところでボケるなよ!こっちは慢性的ツッコミ不足なんだぜ!?」
「気を抜いたあなたが悪い。」
「・・・まあ、あながち間違っちゃいねーけどな。はぁ、じゃぁお前は何だ?」
「・・・・・・・・・・・・お父さん?」
「ぶはっ!?」
あの猫からすればそんなところだろう。おそらく。
「大人の階段っつーか、エスカレーターだな。ってか何だ?ソレ先生にちゃんと教えなさい!」
「うるさい。」
いい加減話の通じない大人の相手するのがめんどくさくなった僕はもう一発トンファーで殴って、屋上を後にした。
「っていう訳なんだけど。」
「ちょっとまて?今、テメー、なんて言いやがった?」
「え?話が通じない大人を殴ってからここに来たって」
「ソコじゃねーよバカ!」
「じゃあドコ?」
「お前、跳ね馬になんて説明してんだよ。」
「そんなの、『最近気になる子がいるんだけど、』って・・・」
「このバカ!どこの中学生日記だよ!?」
「別に、間違ってはいないじゃない。」
「あぁ、勘違いされることを問題としないならな!」
「・・・・・・。」
「ばーか。」
「君が悪い。」
「いや、今回は間違いなくテメーだ!」
「・・・、あの外国人が意味を取り違えてた可能性」」
「残念ながら、現代の常識じゃ奴の考え方が正しい。」
「ワオ、どうするの?」
「奴が広めないことを祈るしかねーな。」
どんな奇跡的展開だろうね。