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甘いものが食べたい

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甘いものが食べたい。
珍しく真面目に仕事をする上官が山となった書類に手を伸ばしつつ、半ばうわ言のようにそんなことをつぶやいていた。
「この書類の山が崩せたら何か買ってきましょうか」
たまに真面目に仕事をしたのならばきちんと飴をあげなくてはいけない。ホークアイは犬のしつけのようだと思いながら申し出た。
「いや、そうじゃなくて……」
普段はちょっとでも甘い顔を見せるとすぐに飛びついてくる癖に何をためらっているのだろう。
不思議そうに見つめていると決心したように彼は口を開いた。
「君の手作りが食べた「却下です」」
「最後まで言わせてくれよ」
「残念ですがお菓子づくりはある程度時間がかかります。そもそも今こんなに書類の山が溜まっているのは誰がサボったせいでしょうか。そしてそのせいで私の休みも非常に減っています。たまにある貴重な休みをそんなことで使いたくありません」
「…………悪かったよ」
昔はよく作ってくれていたじゃないかとブツブツ言っているのが聞こえたがとりあえず無視した。
その後しばらくは不機嫌な様子で、時折「私はこんなにもがんばっているじゃないか」「昔はなんて可憐だったんだろう」などと聞こえたが彼女は気にすること無く終わった書類を次々と整理していった。


日が傾きだした頃、朝には自身の身長ほどに積まれていた書類が3分の2以下に減った頃、ホークアイはお茶と、司令部近くの店で売っていたお菓子を添えてまだ文句を云っているマスタングのもとへ持っていった。
「大佐、これで機嫌を直して下さい」
「私はき・み・のが食べたいんだといっているだろう」
それでもいざ口に運んだ菓子が意外にも美味しかったようで表情もだんだん和らいでいく。
「しかし、本当に君には負担を掛けてしまっていたんだな」
「何をいまさら」
「……そのセリフは使いどころによっては凶器になるな」
「大佐、そんなことをおっしゃっている暇があるのならば私に負担を掛けないように努力して下さい」
「わかったわかった」

その後も彼はさぼること無くすっかり日が暮れた頃に書類は綺麗に片付いた。



遅くなると決まって言われる食事の誘いを厳しく断り家路を辿る途中で一軒の本屋に特に何も考えていなかったが誘い込まれるように入ってしまった。

そこで見つけたお菓子作りの本。
昼間のあれはすこし言い過ぎたかしら。彼が口を尖らせて怒っていた姿を想像して少し笑いそうになりながら気づけばその本を購入してしまっていた。

手帳を確認すると明後日は休み。
仕方ない、たまにはつくってみようか。
今度は斜向かいにある食品店に足を向けつつ、自分が手作りお菓子を持っていった時の彼の表情を想像して少し笑みをこぼした。
作品名:甘いものが食べたい 作家名:朝香るり