tmmy
待ち合わせをした。
珍しく、待ち合わせをして出かけた。
いつもは約束なんてしなくても隣にいるのに。そう思うとすこし、むずがゆかった。
美しく晴天。風が光るように涼しい。ひとり、手放しで歩くのは楽しいような。心許ないような。
雲のない初夏に、お前は待っていた。当たり前のようにオレより先に来ていて、しっとりと、まるで時など流れていないかのように立っている。
少し遠くから名前を呼んだ。するとお前はこちらを見る。柔らかな睫毛がひとつ瞬いて、そうしてオレに焦点が合う。
途端、お前は小さく駆け出した。お前のいたところのほうが正しかったのに、何の躊躇もなくオレの目の前に走りきた。
やってきた、お前のかお。
うれしいのだと、満面にほころんだお前のかお。
「………」
たまらず、抱きしめた。
人目なんて、ないもののように力づくで引き寄せて抱きしめた。
そうしてしまうと、お前の顔は見えなくなった。でも、わかる。困り顔の、赤い頬。
知っている。わかっている。
お前は、オレのこと。
「好きなんだろ」
小さな声を、目の前の耳に吹き込んだ。え、とか、なに、とか。そんなようなことをオロオロと口走るのは無視した。
「知ってる。オレも」
好きだよ、ささやいた。そうして、やっと体を離す。
見えた顔は赤くて、でも、困り顔なんかではなかった。
「………なんで泣くの」
「…空があおいから?」
そんなことを言う、お前。
悲しそうでもなく、寂しそうでもなく、ただただ頬を伝い落ちていく雫。
お前の目の裏から、それを押し出したのは間違いなくオレだ。
おもう。
むかし、お前は幸福だったんだろう。
いつか、春のような。
ゆめのなかかもしれない。
お前はオレの手をとって泣いた。
音もなく、絵空事みたいに落ちていく涙は手指を濡らす。こぼれていく涙を、拭いたいとは思わなかった。
つないだ手に零れて濡れていく、その水はひどく心地よかった。
涙はあとからあとからあふれてくる。
たった四つの音が、お前に何をもたらしたのか。それは、オレにはわからない。わかりようもない。
オレがささやいたその言葉にお前は、答えなかったし、頷きもしなかった。
お前は涙を零して、ただ、とりあった手は離さなかった。
そういう、そういうお前だから。いつかまあるくあったお前のやわらかいなにかが傷ついて、欠けて落ちて、きれいになるのだろう。
たぶんきっと、オレの所為で。
そういうお前でなかったら。そういう、お前だったから。オレも、あわせた手のひらを解くことはできない。
いつか、お前はしあわせだったのだろう。
「なんで、泣くの」
「太陽が、まぶしいから?」
もう一度訊いてみたけれど、返ってくるのはそんな言葉。
陳腐すぎる。そう思って、少し顔をしかめると、今度はゆるく笑っていた。笑っていたから、もう、なんでもよかった。
空が青い。雲はない。
嘘みたいな晴れ空だ。
手を引いて、歩き出した。
ついてくるお前に、好きだよ、もう一度告白した。
やっぱり、答えはなかった。