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雪割草

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「辛くなったら由紀に相談してください。力になってくれます。」

「本当はお二人でいた方がよろしいのでは?」
一応聞いておかないと。由紀が無理強いしてたら申し訳ない。

「私たちは結婚したらずっと一緒にいられます。しかしお友達は、特に女同士は難しい。
ですから、結婚前に好きなことをさせてあげたいんです。目一杯、貴女との思い出を作ってほしいんです。」

このお方は本当に理解がある。由紀の行ってた通り。優しいし、賢いし、女だからってさげすんだりしない。この方なら、由紀も幸せだ。

「わかりました。由紀を必ず無事に江戸まで連れて帰ります。それまでしばらくお待ちくださいね。」

「はい。どうぞ、旅を楽しんで。」

「では、そろそろ…。」

「あっ、そうでした。私たちの祝言を、あなたたちの旅が終って落ち着き次第、江戸でしたいと思いますので、ぜひお越しください。」

「よろしいんですか?」

「一番のお友達を呼ばないなんて由紀に怒られます。」

「では、お言葉に甘えて御伺いします。
では、明日の朝迎えに来ると由紀に伝えておいてください。失礼します。」

二人に別れを告げ、屋敷に戻った。
道すがら、早苗は、強い現実味を帯びてきた親友の結婚について思いを巡らせていた。

いいなぁ。祝言か。
白無垢着るんだろうなぁ。由紀絶対似合うだろうなぁ。
わたしも無事に着ることできるかな?
ほんとに結婚するんだ。うらやましい。
わたしの方は何の進展もない…。
助三郎さまが水戸に戻ったらって言ってたけど、結納さえもやってない。
親が婚約を認めただけで不安定だから…。
やっぱり不安はある。


屋敷に戻って一息ついていると、助三郎が戻ってきた。

「新助どうだった?」

「ついてくるって。江戸まで行きたいそうだ。由紀さんは?」

「残らないって。俺たちと来るとさ。」

「残ればいいのにな。一緒にいたいと思うけどな与兵衛さん。」

「そうだよな。」

「そういえば、由紀さん江戸で祝言挙げるんだろ?お前も呼ばれたか?」

「あぁ。一応。」

「…なぁ。格之進。お前の家の事情はよく知らないが。良かったら俺の祝言に来てくれるか?」

「え?」

思いがけない言葉に驚いた。

「水戸に帰ったら挙げることになってるんだ。だから、お前に祝ってもらえたらいいなって思って。」

「…あぁ。わかった。…行けたらな。」

本当は無理。
貴方の隣にわたしは座るから格之進は行けないの、とは言えない。

国に帰ったら解毒剤とかもらって男の姿に変われないようにしようかなって思ってたけど。
この人はいなくなった格之進を探すかもしれない。
幻を追い求めるかもしれない。
かといって、死んだことにしても悲しむかもしれない。
やっぱりいつか言わないと…。

その時、この人とは友達じゃなくなるかもしれないけど。
一生騙し続けるよりはいいと思う。








次の日の朝早く、早苗も助三郎も町人の格好に変わっていた。

あぁ。またか…
せっかく佐々木助三郎さまを堪能出来たのにな。
また助さんになっちゃった。助三郎さまって呼べなくなる。

ボーっと考え事をしていたら天井から弥七が現れた。

「びっくりした。普通に障子開けて入ってきてくれよ。」

「すみませんね。それより、助さん、格さん、支度できましたかい?」

「あぁ、いつでも発てるぞ。」

「ご隠居から二人でイチャイチャしてたら取っちめてこいって言われましたが。どうやらしてないみたいですね。」

「は?」

「…弥七。何にもないからな。言わなくていいからな!」

弥七さんは口がすごく重いみたいだから心配はないと思うけど、念には念を入れた。

「わかってますよ、格さん、それはそうと由紀さん迎えにいかないといけやせんぜ。」

「あぁ。そうだった。行ってくる。」



家に行くと由紀と与兵衛は別れを惜しんでいた。

やっぱりわたしのために引き離すのはよくないんじゃないのかな?
悪いことしたな…。

声を掛けようとしたが、二人寄り添っているので、邪魔したらいけないと思い
静かに待っていた。


「由紀、気をつけてね。」

「与兵衛さまも。身体に気をつけてお仕事頑張って下さいね。」

「江戸で待ってるからね。早苗さんと楽しい思いで作るんだよ。」

「はい。じゃあ、もう行かないと。…え、与兵衛さま?」


会話が途切れた、もういいかなと思い、早苗はそっとのぞいてしまった。

由紀が与兵衛に口付されていた。
驚いた早苗はとっさに身を隠した。

友達から聞いたことあったけど。
ほんとにあるんだ。ああいう行為。
あんなことできる与兵衛さまってやっぱり凄いのかも。


「あっ。早苗、来てたの?待たせちゃった?」

「いいや、でも、邪魔だったかな?もうちょっと二人でいてもいいぞ。」

「ううん。これ以上いると行けなくなるからちょうど良い。」

「渥美殿、由紀をよろしくお願いいたします。」

「はい。八嶋殿、無事に江戸まで送りますので、ご心配なく。」

「あの、江戸で、佐々木殿も新助さんも一緒に男だけで飲めたらいいですね。」

「はい。楽しみにしております。」



さまざまな人に見送られ、紀州を後にした。
帰路は助三郎の予想通り、物見遊山しながらということになった。

おもむろに助三郎が由紀に聞いた。
「与兵衛さんと一緒に寝たのか?」

「なんで女の子にそういうこと聞くの!?信じられない!」

「そうよ。無神経もいい所!助さん最低よ!」

女二人に集中攻撃を受けてさすがの剣豪もひるんだ。

「なんだよ、寄ってたかって…。」

その様子を傍で見ていた早苗は疑問に思った。
なんで由紀もお銀さんもそんなに怒るんだろ?
わたしだって助三郎さまと隣り合わせで二晩も寝たのに。

「別にいいだろ寝るくらい。なんでそんなに怒ってる?」

「え?」

なんか皆がきょとんとしている。なんで?

「…格さん、案外やり手なんだな。
その好きな人とはそこまで行ったんだな?負けた…。」

「へ?何の話だ?」

意味を把握しかねているところへ、由紀が再び助三郎に攻撃をした。

「やっぱり助さんはいやらしいわね!格さんと二人きりでイチャイチャするんだものね!」

「そうなの?由紀さん、誰から聞いた?」

「想像つきますよ。フフフ。」

「あっ、そうよねぇ。」

「助さんってそういう人なんですか?おいら隣で寝るのやめようかな…。」

「馬鹿!新助、この人たちの言うこと真に受けるな!俺はそんな趣味は無い!」

「助さん、恥ずかしがらんでもよい。武士はそういう趣味があっても普通じゃ。
信長公も、信玄公もそうじゃったからの。」

「なんでみんな変なことばっか言うんだ?」

しばらく黙って考えながら歩いていた助三郎だったがいきなり声をあげた。

「あ!」

「なんだ?いきなり。」

「…もしや格さん、そっちの気が有るのか?」

「なんだ?そっちの気って。…あれ?なんだみんなして。」

由紀とお銀が二人でくすくす笑っていた。
新助が眉間にしわを寄せていた。
光圀は一人で高笑いしていた。

「そっちがわからんのか?だったら、さっきの寝るも意味わかってなかったんじゃないのか?」
作品名:雪割草 作家名:喜世