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雪割草

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「御心配なく、早苗は私のことを、かっこいいと言ってくれました。」

実際は男のままだったが、中身が早苗だった。
俺のこと、格好いいって思っててくれてたんだ。
うれしい。俺もあいつのことちゃんと言ってやらないと。
可愛いし、綺麗だって。
あぁ、あの顔が見たい、笑顔が見たい!

「とにかくその格好はやめるのじゃ。」

「わかりました。もう遅いので、明日にします。風呂の護衛はいりますか?」

「それより、夕餉じゃ。風呂はな新助と入る。そんな泥と垢だらけじゃと、風呂が濁る。」

「そうですか…。」

そんなに汚いかな?
こんなんじゃ女の子に会わせる顔がない。
綺麗にしないと。



夕食後、助三郎は姿が見えない由紀を探しに行った。
「由紀さん居るか?」

部屋を覗いた瞬間叫ばれた。
「キャ!」

黄色い叫びではなく。
恐怖の叫びだった。

「どうした?由紀さん。」

「びっくりした…。夜盗かと思った。」

「は?俺が?」

「そんな格好じゃ誰でもそう見えます。で、何の御用?」

「悪いが明日、剃刀と、きれいな着物、髪結いの手配をしてくれないか?」

「綺麗にしないといけませんからねぇ。」

「それと、早苗に会いに行きたい。一緒についてきてくれないか?」

「あの、怒ってます?早苗のこと…。」

「いいや。まったく怒ってない。」

「そうですか。たぶん、動揺してると思うので、極力普通に接してください。」

「わかった。」

「…鈍感野暮天助さんが上手くできるかしら?」

「なにが野暮天だ!」

「あら、鈍感は認めるの?」

「……。」





その頃早苗は医者の家で横になっていた。

…なんかどっかが痛い。
頭もボーッとしてる…

あれ?この手小さい、ほねばってない…。
元の手だ…。

「目がさめたかな?」
見知らぬ総髪の老人が目に入った。

「わたし…。」

「斬られておりました。でも心配無用ですよ。傷はほとんど残りません。
ゆっくり休んでください。では…。」

「ありがとうございます…。」

斬られた?
未だ少し痛む脇腹に触れると、包帯らしきものが巻かれていた。
じゃあ、あの痛みは、刀で斬られたんだ。

そこから記憶がない。
気絶してたんだ…。

いま元に姿に戻ってる。
ということは…あの人に見られた。

あぁ…。
口で言うつもりだったのに。
なにも言わない前に、あの人が見ちゃった。

怒ってるんだ、きっと。
怒鳴り散らしてるんだろうな…。
だましてたって。半分男の変な女だって。
気持ち悪いって。そんな女、願い下げだって。

みんながなだめすかしてるんだろうな。
でも、あの人聞かないと思う…。
だからそれに手をとられてみんなわたしの前から居なくなった。

はぁ、おしまいだ。
面と向かって、いやなこと言われた方が良かった。
いないところでさんざん言って、明日から無視するつもりかも。
二度と口を聞いてくれないんだろうな…。

明日からどうしよう。
仕事あるからあの一行からは抜けられない。
でも、あの人に追い出される可能性が高い。
一人で帰れって。
二度と目の前に現れるなって…。

どうしよう…。


早苗は部屋で一人、泣いた。


作品名:雪割草 作家名:喜世