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雪割草

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家の馬もそうだった。
道端の猫も。
犬でさえも、わたしのもう一つの姿を嫌うのか…。

この不安を助三郎に話した。

「まぁ、がっかりするな。怖がらない奴だっているさ。」

「いるかな?この仔たちの中にも…。」

「探してみろ。居たらいいな。」

「うん。」



その日、早速三人の姿を見かけたという若い夫婦が犬を見にやってきた。
小さな店をこれからはじめるそうで、看板犬兼番犬が欲しかったそうだ。
五匹を見比べ、白い雌の仔犬を貰って行った。

「一匹いなくなっちゃった。」

「寂しいか?」

「ううん。飼ってくれる人見つかったからうれしい。」




次の宿場で、為替待ちをしながら三日ほど過ごした。
その間に、飼い主探しをした。

「新助、犬欲しがってる人いないか探せるか?」

「はい、ちょっくら行ってきます。」

すぐに、犬が欲しいと言った人に二匹あげて帰ってきた。

「どんな人にあげたんだ?」

「身元が確かな預けても安全な人です。証書貰って来ました。」

「新助さんやっぱり几帳面ね。誰かさんとは大違い。」

その誰かさんを見ると、拗ねていた。
「ふん!」

それを放置し、新助に詳細を聞いた。
「白い雄は町のお役人。焦げ茶の雌は呉服屋に貰われました。番犬が欲しかったって。」

番犬か。
この辺って物騒なのかな?
山の中で静かで住みやすそうだけど。
でも、がんばっていい番犬になってほしい。


仔犬が少なくなった籠を由紀と覗きながら話していた。

「また減っちゃった。」

「そうね。あんなにいっぱいいたのにね。残るは黒いのと、焦げ茶か。」

「なんであなたたち残っちゃったの?」

二匹そろって首をかしげた。

「由紀、首かしげた!かわいい!」

「ほんと!キャー!」



それからも地道に探したが、今までのようにうまく行かなかった。
焦げ茶の仔は身体がほかの仔より小さく、弱そうと不安がられたのが理由だった。
もう少し大きくなってからでないともらってくれない。

黒い仔は…。
理由が考えたがわからなかった。

「ねぇ、新助さんこの子は?今までなんで貰われなかったのかな?」

「そういえば、歯を剥いてうなってました。」

そんな仔には見えなかった。

「あなたうなるの?うなって見せて。」

そう言っても、尻尾を振って顔をなめるだけだった。
しばらく様子を見ることにした。

全く問題はない。
尻尾を振ってじゃれてくる。
一番好きなのが助三郎のようで、彼がいる時は何時も後をついて歩く。
驚いたのは、ほかの仔は格之進を怖がり、嫌がったのにまったく嫌がらず。
早苗の時と同じ接し方をしてくれた。

ふと思いついて、早苗はこの犬に聞いてみた。

「お前、貰われたく無いのか?」

「ワン!」

「助三郎の仔になりたいか?」

「ワンワン!」

あたかも返事をしたように思えた。

「可愛いな!」


その様子を助三郎がそっと見ていた。


作品名:雪割草 作家名:喜世