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雪割草

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どうやろう。

クロがうなった事と、わたしの直感。
これだけじゃ証拠が薄い。
そうだ。あれにしよう。


「助さん、将棋しましょ。ご隠居さま、お立会いお願いします。」

「わかった。」

将棋盤を挟み、向かい合った。
怪しまれないよう、会話しながら将棋を指した。

「お使いどうだった?」

「まぁ無事に出来た。」

「へえ…。」

強い…。
こんなに直ぐに手をうってくるなんて。
先を確実に読んでいる。
普段絶対打って来ないような難しい手も普通に打ってくる。
こちらの裏の裏をかいて確実に攻めてくる。

うっ…。
負けるかも。兄上よりずっと強い。
あっ…。
もう打つ手がない。

「おや、俺の勝ちだ。」

掛った。将棋の勝敗が目的じゃない。
わたしの勝ち。

「負けたわ…。」

わたしの予感は当たってた。
思ったとおり。

「助さん!?初めて見た…早苗さんに勝ったところ。」

「お前さん、頭でも打ったか?」

「雨でも降るんじゃない?槍かもね。あれ?助さん口答えは?」

「え?はぁ、ははは…。」

皆勝手気ままに思った事を言っている。
でも、わたしは最後の詰めに出ないと。
あの人に言われた。『みんなを頼む』って。

「…助さん。疲れたでしょ?肩でも揉んであげましょうか?」

「え?あぁ…。」

すっと背後に回った。
肩を揉む振りをして、素早く首筋に手刀を当てた。

「貴方はどこのどなたです?名乗りなさい!」

女のままだったが、できる限り凄みを効かせ、脅しをかけた。

「どうしたのだ早苗?」

「助さんに何を言ってんですか?」

「なんで皆さん気付かないんでしょうね?この人は助さんではありません!」

しばらく驚きのあまり、沈黙が続いたが、助三郎の様相をした男がそれを破った。

「…早苗さん、気付かれましたか?」

「へ?」

「やっぱり、欺けませんでしたね。さすがです。」

笑顔で言う男を見て早苗は今までにない恐怖を感じた。

「…ねぇ、助さんは!?助さんをどこにやったの!?」
思わず、胸ぐらを掴み、叫んでいた。

約束したのに帰ってこなかった。
いなくなった。代わりにそっくりな別人がいる。
わたしの大事な助三郎さまは?
『早苗』って呼んでくれるあの人は?

眼の前が真っ暗になるような気がした。


作品名:雪割草 作家名:喜世