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雪割草

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早苗にもっとモテる方法!






一方、日々情報収集の為身を粉にする努力をしていた弥七とお銀はなかなか敵が何者かつかめないでいたが、やっと変化が見えた。
現藩主である義勝の叔父が参府を終え、国に帰って来るらしい。

知らせによると、二三日すれば到着する。
家老の岸田も味方が帰ってくる、若様の安全が確保できるとほっとした様子で光圀に報告しにきた。

しかし、光圀は念の為に弥七に藩主を探らせた。


弥七は命を受け今だ旅の途中の藩主の宿泊先に忍び込んだ。
奥で腰元相手に酒を飲んでいる藩主は一見人の良さそうな好々爺に見えた。
しかし、そのそばに仕える腰元は女の忍びだった。

「…義勝は無事か?」

「…はい。何事もお変わりなく。」

「…室も余計なことをしてくれたものだ。兄上の室の親戚だったのがいかんかったな。」

「…御正室様はおって処置をいたします。」

「…あれの後ろには公家がついておる。無暗なことはするでないぞ。」

「…はい。お任せを。あの時のように穏便に済ませます。」

「…その前に義勝を頼む。もし明後日までぴんぴんしておったら、わしが直にあいつをかわいがってやらんといかん。」



用意周到な藩主だ。
会話も核心がつかめない言い回しを使って油断がない。
細かい真相は分からないが、これで敵がわかった。
真面目で純粋な家老と義勝が信じて疑っていなかった、義勝の肉親が敵だった。

報告して、対策を立てなければ一刻を争う。
義勝はともかく、助三郎の命が危ない。

光圀のもとへ取って返し、皆にわかっている事の次第をすべて報告した。

「…叔父上が?」

「へい。残念ですが、そのようで。」

「…岸田、叔母上と私はどのような関係が?」

「は。前代様が亡くなり、若様の御母上も亡くなった後、現藩主の御正室様付きの老女が若様を伴って私の所までやって参りましたことは確かでございますが、詳しいことは教えられておりません。」

弥七が考えいた事を皆に告げた。
「…あっしの想像ですが、叔父上が義勝殿に手を掛けようとしたのを叔母上は事前に察知して助けて下さったんでないでしょうかね。」

「叔母上が?で、叔父上が私を?」
義勝は眼に見えて動揺していた。

「義さん?いかがされました?」

「…ちょっと失礼します。」
そう言うと、奥の部屋に消えた。

今まで信じていた肉親の叔父に裏切られた。
命を狙うのは実の叔父だった。
義勝は相当な打撃を受けたようだった。
部屋に籠って出てこなくなった。

早苗は、部屋の外からそっと声をかけた。
「義勝殿、御察し申しあげます。」

「格さん。ありがとうございます。お心遣い痛み入ります。」

「…必ずや、叔父上を屈服させ、藩主の座を貴方様のものに。」

「…しかし、相手はいくらなんでも私の本当の叔父です。…まだ決心が。」

「…心を落ち着け、考えてみてください。きっと答えが出てくると思います。」

「…はい。」

早苗は義勝をそっとしておくため、そこから離れた。
表には出していなかったが、彼女は不安と恐怖でいっぱいだった。
弥七からの報告では、助三郎の身が今まで以上に危険に晒されていることは疑いもない事実だった。

偵察から久しぶりに宿に戻ってきたお銀に皆の護衛を頼み、早苗に戻ると一人で出かけた。
近くの神社で、御百度をする為だった。

徹夜で御百度を終え、宿に帰ってくると、休まずに今度は井戸の水を使い|水垢離《みずごり》で願を再び掛けた。
周りは蒸し暑かったが、井戸水は冷たかった。
水を被りながら、
『我が夫、助三郎をお守りください。わたしの命に代えても無事にお戻しください。』

一心不乱に、それだけを願った。


作品名:雪割草 作家名:喜世