二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

雪割草

INDEX|154ページ/206ページ|

次のページ前のページ
 

由紀は自分も暗かったら、早苗が可哀想だと、元気でいようと心掛けていた。
助三郎に相談したほうが良いと早苗に持ちかけたが、猛烈に反対された。
なので、保留にしてある。

「おはよう…。」
今日も、気分が晴れない様子だった。

「元気出して!晴れて天気がいいから、気分転換に散歩行こ!」

「どうしようかな…。わたしと歩いたら逢い引きになっちゃうから…。」

「…え?」

声は男のままだったが、話し方がが女の子の早苗だった。
口調は戻った。

「あっ。え…。口調だけは戻せるみたいだ。変だな。」

「もうすぐ戻れるようになるんじゃない?」
吉兆に違いない。そう思わないと、ますます早苗が落ち込むだけ。

「…どうかな?」



晴れたと思ったが、また雨が振り、一行は出鼻を挫かれた。
朝早く、早苗と由紀は習慣の人目を避ける身支度をしていた。

「…由紀、そろそろ自分で出来るようにしないといかん。
好きでもない男の髭なんか剃らせるのはかわいそうだ。」

「…べつにいやじゃないわ、早苗だもの。」

この子は、元の女に戻ることを諦めようとしている。
危ない。気分が滅入っている。

「いや、覚える。…やり方教えられるか?」

強い意志が込められたまなざしで見られ、由紀は折れた。

「…人のを剃るのはできるけど、自分でやるのはねぇ。…男の人に聞いたほうがいいけど。」

「…助さんはだめだ。」

いまだに許嫁には言っていない。いい加減向こうも気付くはずなのに、全く気にしてない様子がもどかしかった。
光圀も、新助も異変を感じ取っているようだが、早苗に直には聞いていなかった。

「そうよね…新助さんなら良い?」

「あぁ。この際だ、あいつにも言う。」



しばらくすると、新助がやってきた。

「どうしたんです?格さん。」

「…恥ずかしいが、髭の剃りかた教えてくれるか?」

「…わかりました。」

少し驚いたという顔をされたが何も聞いてこなかった。

一通り、指導を受けた後、すまなそうに新助が聞いてきた。
「…格さん、助さんとケンカでもしたんですか?」

「どうして?」

「格さんなんかここ最近ずっと元気ないし、寂しそうだから。
早苗さんにも最近戻ってないですし。でもケンカだったら変ですよね?助さんはいつも通りだから…。」

やはり、敏感な新助さんはわかってたんだ。

「…戻れないんだ。」

「…ごめんなさい。変なこと聞いちゃって。大丈夫ですか?」

「心配してくれてありがとな。」

「なんでも言ってくださいね。相談に乗りますから。」

「新助…あのな…。」

「格さん、心配しなくても助さんには何もいいません。格さんが自分から言ったほうがいいですもんね。」

本当によくわかってくれる。
これくらい助三郎さまもわかってくれたら言うことないのに…。

「ありがとう。あいつに余計な心配かけさせたくないから…。」
というより怖い。戻れなくなったなんていってどんな顔されるか…。
覚悟はしてるつもり、戻れなくなったら、婚約破棄されるって。
でも、怖い…。


「…やっぱり、ご隠居さまには相談しましょ。」

「そうですよ。ご隠居なら何か手を打ってくれるかも知れませんし。」

「…わかった。」





その晩、早苗は二人きりで光圀と話し合った。
「…戻れないと?」

「はい。男のままです。」

「おかしいとは思っておったが、なぜもっと早く言わなかった?」

「……。」

「…責めても仕方あるまい。…大丈夫か?」

「はい、どうにか。…しかし、もう戻れないかもしれません。」

「…諦めてはいかん。気を確かに持つのじゃ。助さんは知っておるのか?」

「いいえ。」

「…言いたくないか?」

「はい、しかし自分から言いますので、ご隠居はおっしゃらないでください。」

「わかった。だが、念のためじゃ、水戸の橋野に文を出す。よいな?」

「わかりました。」

少し、ご隠居さまに打ち明けて気が楽にはなったけど…。
たぶんわたしは女には戻れないんだろう…。
大丈夫と言ってたけど、よくあてにならないときがある父上だもん。
このままの可能性が高気がする。

助三郎さまにも言いに行かないと、そろそろ気づいている頃だと思うし…。
なんて顔されるかな、怖い…。


作品名:雪割草 作家名:喜世