雪割草
「何を御冗談を。あれは男ですよ。」
鼻で笑い、冗談じゃないという顔をしていた。
「…では、由紀は?一番の友達じゃろ?」
「いいえ。由紀さんは八嶋殿の奥方になるお方。友などではありません。」
一番仲の良いはずの友を友ではないと切り捨てた。
尋問が異常な結果に終わり、これ以上聞いても無駄と判断した光圀は退くことに決めた。
「格さん。今日はもう良い、すまなかったな仕事の邪魔をして。早く休むのじゃよ。」
「はい。お気使いありがとうございます。」
光圀は結果を助三郎には言わなかった。
その代り、屋根裏に忍ばせ、様子をうかがわせていた弥七を呼んだ。
「…弥七、どう思う?」
「…格さん、演技が上手いんでちょっと難しいですね。しばらく様子見いたしやしょう。
それから言わせてもらっても構いませんか?」
「…わかった。頼むぞ。お前さんから何か言っておきたいことは無いか?」
「…お銀から、クロの世話を頼まれやした。しばらくあっしのところで世話をいたしやす。」
「…なぜだ?」
「…由紀さんが助さん、格さんの間を案じた上だそうで。お銀から聞きやした。」
「…気付いておったか。」
「…新助と二人で調べるそうです。お銀も手伝うと。」
「…そうか。お前さんも頼むぞ。」
「…へい。ではこれにて。」
部屋で一人になった光圀は今後の対策を考えた。
早苗の異変に気付いていないのは助さんだけだったか。
鈍感が仇になったの。
これからどうすべきか…。
ひとまず、旅程を遅らせるかの。
今まで他人の揉め事に世話を焼いていたが、とうとう内輪に問題が勃発した。
とても厄介な問題が…。