二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

雪割草

INDEX|72ページ/206ページ|

次のページ前のページ
 

「水戸からまいりました。」

「旅をしておるのか?」

「はい。」

「…うらやましい。わたしはここで命を落とした。国に帰ることができなかった。国を見ることができなかった。…今もここにいる。」

「お悔やみ申し上げます。御心配なさらず、駿河の国は平和な良い国でした。」

「…そうか、ありがとう。平和であったか。
…早苗、そなたは優しい賢い女とみえる。旅をしている間、同じような者に会うであろう。
会ったら同じように話し相手になってやってくれぬか?慰めてやってはくれぬか?」

「わかりました。」

「…では、離したいことがまだあるが、もう遅い。連れが心配するであろう。さらばじゃ。」

「失礼いたします。」

会釈をし、再び顔をあげるとすでに二人の姿はなかった。
異様な雰囲気もなくなっていた。

殺風景な林の中にポツンと小さな石碑があるだけだった。




「あっ。格さん、大丈夫だったか?」

「あぁ。そっちは?」

「平気だ。何も来なかった。」

「じゃぁ、帰るか。怖いのイヤだろ?」

「なぁ…あの女の人は?」

今言うと絶対に怖がる。
明日にしよう。

「家に一人で帰っていった。送らなくていいって言われたからそのままにしてきた。」

「そうか。」




次の朝、案の定三人は抜け出したことを咎められ叱られた。

「どうして黙って抜け出した!格さんもいたのに。いったい何をしておったのだ?」

「肝試しに…桶狭間に。」

「情けない。戦場跡で肝試しなどするでない!亡くなった者に失礼じゃ!」


「しかし、ご隠居、昨晩そこで今川義元公に会いました。」

「ほう。会えたのか?」

「信じていただけますか?」

「あぁ。もちろん。」

「女の人に案内してもらったのですが、その方は奥方でした。」

「え?あの人…人間じゃなかったのか?」

震えた声で助三郎が聞いてきた。

「あぁ。亡くなってた。」

「で、格さん、義元公は何と?」

「お願いだ、それ以上話すな!…やめてくれ!夜寝られなくなる!」

「そうですよ格さん!意地悪しないでください!」

おもしろいくらい怖がっている。
なんでそんなに怖いのかな?
気を使って明るくなってから昨日の話をしてるのに。

「本当だから仕方がないだろ?それにあの人たち悲しんでただけで、恨みは無いそうだ。
安心しろ。取りつかれたりはしないから。」

「そんなこと、笑顔で言うな!余計怖い!」

「ははは。怖がりだなぁ。それで、ご隠居…」

「…新助、逃げよう。ここにいたら危ない!」

「はい!」


作品名:雪割草 作家名:喜世