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雪割草

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〈29〉仲たがい



…本当につまらんやつだ。真面目すぎる。
ちょっと遊ぶくらいいいだろ。
ガミガミ細かいことにうるさい。やってられん。
仲良く出来てると思っていたが無理だったかな
…考えてみると、性格が真反対だ。

あいつは真面目で、几帳面。
俺はいい加減で不真面目だ。

…女だったらそれでも大丈夫だったのに。

早苗、すまん。格之進と仲違いした。ダメかもしれん。





お銀が光圀に報告しにきた。

「ご隠居さま。近くの庄屋で何かいざこざがあるそうなんですが…」

「悪いがお銀と弥七で調べてくれんか?二人があのようにバラバラでは何もできん。」

「解りました。」



数日たっても相変わらず仲違いしている二人の間に立っていたのは新助だった。

「新助、これはなんだ?」

「…あの、助さんが渡してくれって。お金を立て替えたから払ってくれって。」

「何に使ったか解らんじゃないか。書き直せって突き返して来てくれ。」



「…だそうです。」

「言いがかりだ。読めるじゃないか。なんだ、ちょっと自分が字が上手いからって。
そのまま出して来てくれ。」

「あの、助さん、自分で出して来たらどうです?自分の口で説明して…」

「あいつに話す事は何もない!」


「…って言ってましたよ。」

「じゃあ、金は払わんって言って来てくれるか?」

「格さん、自分で助さんのところに行ったらどうです?話した方が…」

「あんなふざけたやつと話してなんになる?行かないよ。」


あまりにも二人が口を聞かず顔を合わせようとしないので新助は由紀に相談した。

「由紀さん、どうしましょう。」

「このままだと、婚約解消の危機ね…」

「はい?誰のです?」

「とにかく、二人を反省させるの。新助さん助さんの方、お願いね。」





早速、新助は助三郎と話をした。

「助さん、格さんと仲直りしないんで?」

「するもんか!あんなやつと。」

「凄く仲良かったじゃないですか。おいら羨ましかったんですよ。
親友っていいなって。…おいらも会いたくなってきたなぁ。」

「…」

親友か…。
俺にはそんなやついないかもな…。

出仕が人より早かった分、遊ぶ時間がなく友達は少なかった。
周りは大人ばかりだった。

同い年の気兼ねなく付き合えるなんでもいえる『親友』っていうものが確かに欲しかった。

格さんは一緒にいると楽しかった。
隣にいると思うと安心する。
自分に無いものを持っている気がする。

せっかくそんなやつがあらわれたのに…。
親友になれたかもしれないのに…。
俺があれぐらいで怒って怒鳴ってバカだったかもな。

「ね?話したらどうです?」

「考えとく…」




一方、由紀は早苗を説得していた。

「まだ助さんとケンカしてるの?」

「…」

「謝ったら?カッとして怒鳴ってごめんなさいって。」

「俺は悪くない。いかんのは助さんだ。」

「…芸者さんへの焼きもち?」

「ちがう。そんなんじゃない。」

「ねぇ、やっぱり、我慢しすぎよ。何かで発散させましょ。こっそり抜け出して…」

「ダメだ。芸者遊びを叱っておいてそんなことできるわけがない。」

「…頑固者ね。どうしても仲直りしないの?」

「あぁ、しない。あっちが謝るまではな!」




由紀と新助は互いの成果を報告しあった。

「助さんの方はどうだった?」

「ちょっと効き目あったみたいですよ。寂しそうな顔してましたから。」

「上手いわね、じゃあ格さんも頼める?」

そこに、光圀がやってきた。

「由紀、ワシが話す。新助、ご苦労じゃな。説得が上手いようだの。」

「不器用な分、口で勝負してますから!」

「また、何かあったら頼むぞ。」



光圀は一人で書き物をしている早苗のもとに行った。

「ちょっと良いかな?」

「なんでしょう?」

「話がある。戻っても良い。」

「…はい。」

「早苗、まだ助さんと口を聞いておらんな。あれが嫌いになったか?」

「…いえ、嫌いではありません。」

「では、謝るなり、歩み寄るなり、仲直りしなさい。」

「…謝りたくありません。あの人は、女に気を移してばかりいます。
イヤなんです。見ていられないんです。でも、今のわたしの立場で、
わたしだけを見てとは口が裂けてもいえません。仕事中なのもわかってはいます。
でも…。」

「やはり、辛いか。好いた男が女遊びをするのを喜んで見られる訳はない。
ワシからも謝る。お前さんの気持ちを考えて止めるべきじゃった。」

「やめてください。ご隠居さまに謝られても困ります。」

「では、仲直りするか?」

「…努力します。話しかけてみます。」

「頼むぞ。あと、話しておきたいことがある。」

「何でしょう?」

「助さんは、ふざけすぎと思っておるじゃろ?」

「はい…。子供の時はあそこまでではなかった気がするのですが…」

「そうじゃ。昔はもっと真面目だった。息抜きが上手く出来んでな。思いつめていたことがよくあった。」

「はぁ…」

「なにがきっかけかは知らんが、ある時から変わっての、知らないうちにああいう性格になっておった。」

「そうですか。」


「あと、これはおなごに言っていいのかわからんが、男はの、おなごを見ていないと気分が滅入るのじゃ。」

「へ?」

「おなごは、綺麗じゃろ?かわいいじゃろ?優しくて癒される。それを男は求めておる。」

「はぁ…?」

「いかんの、おなごにこんなことは…。とにかく、仲直りしなさい、格さん。」


「はっ。心得ました。」

「やはりおなごの方がいいの…」

「ご隠居、なにか?」

「なんでもない。」



早苗と別れた光圀のもとに弥七がやってきた。

「ご隠居、調べがつきやした。」

「ご苦労。では明日、乗り込むとするかの。」


作品名:雪割草 作家名:喜世