雪割草
「…わたしもずっとお会いしたかったです。」
「ごめんね。文一つ出さないままで。でも、そんな町娘の格好をして…何しに来たの?」
「それは、与兵衛さまが心配で。」
「一人じゃないよね?連れがいたの見たけど。」
「水戸の人たちと来ました。」
「…もしかして、御老公様も?」
「えっと、その…。」
「ご隠居、由紀さん困ってますよ。どうします…ってどこ行った?」
「あれ?あっ、勝手に。助さん、ご隠居もう与兵衛さんとこ行ってる。」
「勝手に行かれると困るんだよなぁ。行くぞ、格さん。」
「あぁ。」
由紀が言葉に困っていたところに光圀は出ていった。
「貴方が、由紀のお相手かな?」
「はい。八嶋与兵衛と申します。もしや、貴方様は…。」
「お前さんの予想道理じゃ。あぁ、よい、ひざまずかんでもよろしい。」
「では、立ったままで失礼いたします。」
「ワシが来るのを知っておったのか?」
「噂が流れていました。しかし本当にお越しくださるとは。」
「上様に頼まれての。ここで起こっているゴタゴタをどうにかして来いと。」
「そうでございましたか。」
「八嶋殿、何が紀州で起こっているか教えてくれんかの?」