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雪割草

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顔が真っ赤になっていた。恥ずかしいのかどこかへ行ってしまった。


「本当、格さんって助さんのことが好きですね。」

「そうか?…そう、見えるかな?」

やっぱり新助さんは人の気持ちに敏感。
助三郎さまはイヤになるくらい鈍感。

「はい。でも、うらやましいですよ、そこまで友達のこと好きになれるの。」

友達…。
本当ならいい響きなのに。わたしはあの人を騙してるせいで重い言葉。
本当は喜んで、明るい気持ちで心から友達でいてあげたい。






登城まで準備が大分あるということで、早苗と助三郎はぶらぶらと屋敷の庭で歩いていた。
助三郎にとっては本来の格好なので違和感もなくむしろ落ち着いたという感じだったが、
女が本当の姿の早苗はいやなことを感じていた。

刀だった。
女は丸腰が当たり前。大小を腰にさして歩くことなど今までに二三回しかなかった。


重い…
こんなの良くさしてあるけるわ…
イヤだけど身体が男で力があるはずなのに重い。
父上と兄上の下駄の左足の歯が刷りきれてた理由がやっとわかった。

早苗の不満は動作と表情に出ていたようだ。

「どうした?眉間にしわ寄せて。」

「刀が重くて疲れた…」

「は?」

「あっ、なんでもない!」

「やっぱり腰にこれがあると落ち着くな。本当は俺の刀がいいんだがな。」

剣術が得意な助三郎さまらしい。やっぱり小太刀や人から奪った刀での立ち回りはやりにくいんだろうな。


…ちょっと待って。
城に乗り込むということは闘うのは必須。
相手は抜き身の刀持ってて、普段なら素手でいいけど、
今わたしは腰に同じような刀を差してる。
ということは…。

「…抜かなくても良いよな?」

「なんで?」

「…怖い。」
一度も持ったことないから怖い。

「は?人が振りかざしてくるのは平気だったろ?」

「…自分で持つのは怖い。」
包丁は大丈夫だけど刀は絶対無理!
魚はさばけるけど、人を斬るなんてできない!

「だから剣術苦手だったのか?…もしかして抜き身持ったことないか?」

「…あぁ。」

あきれてるんだろな。普通の男だったら小さい時からやってるんだから。

「まぁいい。一度抜いてみろ。少しは使えないと危ない。」

抜くくらいはできるかも。

「あれ?抜けないな。え?」

引っかかって刀が出てこない。

「抜きかたもダメか?驚いたな…もっと早く気付けば良かったな。すまん…。」

けなしたり笑ったりは全くせずに謝られた。
別に助三郎さまが悪いわけじゃない。
いい加減で適当な父上が悪い。
町人の格好だから刀は使わないだろうとたかをくくっていた。

「いや、謝らなくていいから…。」

「そうか?じゃあ、素振りしてみろ。木刀と一緒だからできるはずだ。」

言われたとおり、何度か振りかぶってみた。
刃がついているせいか、空気を切る時抵抗が少ない。

「そうだ。できるじゃないか。もうちょっと腰を入れてみろ。」



「ダメだ、まだ怖い…」

「なにが怖い?」

「これで斬ったら人が死ぬ…」

「当たり前だ。武器だからな。」

「…」

「勘違いするなよ、斬ったら死ぬのが当たり前。だから殺さなくてもいいように努力する、鍛練するんだ。」

「そうなんだ。」

「剣術を人を殺すために磨くやつもいるが、俺は違う。」

「何のためだ?」

「俺は守る為だ。大切な人を守る為に剣を鍛錬してきた。刀を振るう時は守る時だ。特に、あいつの笑顔を守るために。」

「え?それは…」

聞こうとしたら笑顔ではぐらかされた。

「お前もいるだろ?誰か大切な人?」

「まぁ…。」

いけない、口が滑った。
女嫌いで通ってるのに…。
まぁ、鈍感だから気付かないか。

「人を平気で殺すやつには俺はなりたくない。格之進にもなって欲しくない。
お前優しいからな…。」

「…わかった。やってみる。」

それからもひたすら素振りをし、巻藁の試し切りもしてみた。


「だいぶマシになったな。いけるんじゃないか?」

「…やっぱりダメだ、実戦はちょっと。」

つい、実戦の恐怖を想像し、泣き声になってしまった。
低い声だと変…。

「そんな声出すなよ。まぁ、無理に刀使って怪我したり相手を傷つけたらいかんからな。
今まで通り素手で倒せばいい。」

「そうする。」

「じゃあ、鞘にしまってみろ。」

「あ、今度はできた。やった。」


「しかし、本当に変わってるなお前。」

「…刀が怖くて使えないだもんな。」

やっぱり変て思ったんだ。
包丁使えるくせに刀もてない男だと思ってるんだ。

「落ち込むなって。あんまりいないぞ。柔術は凄いし算学得意で料理こなせるやつ。」

「誉めてるのか?」

「ああ、面白い男だお前は。」


作品名:雪割草 作家名:喜世