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沖神で「逃走ロマンティック」

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思えば、沖田は中学生での留学生だから、といって変に気をつかう奴ではなかった。

最初に「何だそのしゃべり方」と言われて腹が立って、手を出してしまったけど。

でも、そのおかげでみんなからの接し方が柔らかくなった。

だからといって沖田を好きになるということはなかった。ずっと、『ムカつく野郎』だと思っていたし、ちょっと嫌っていた。

(いつから・・・アイツのことが嫌いじゃなくなったアルか?)

いつの間にか、沖田と過ごす時間は増えていたのだ。

張り合って、共闘して、会話して。それが楽しくなっていた。心地よくなっていた。

沖田が、女の子に告白されていたのを偶然目撃したとき、変に苛立った時もあった。

(私は・・・!!)

何を思い出しているんだろうか。

今はただ走って、頭を空っぽにしたい。

(せめて、隣の山まで・・・っ)

神楽は、ただ走った。

答えを見つけるのに考えすぎ、悩みすぎは必要ない。

必要なのは、自分の気持ちだ。

「はっ・・・はっ・・・はぁ〜」

目標地点まで走りきった神楽は、後ろを確認する。

「・・・アレ?」

沖田は後ろにはいなかった。どうやら追い着けなかったなかったらしい。

「・・・ふふん」

ちょっと優越感。

「・・・」

だが、すぐに虚しさに変わる。

「・・・追いかけて、来なかったアルか」

誰も追いかけてくれない鬼ごっこ。

それは紛れもない事実。

そこには寂しさも入っていて。

(あぁ・・・そっか・・・)

さっき走ったときは楽しかったのに、今は何で―――。

(そうだったアルか・・・)

正当率があがるのなら距離置くのもいいと思う。

(私・・・沖田のことが・・・)

でも、もう沖田はいない。

「沖田・・・」


パシッ


手を捕まれた。

驚いて後ろを振り向く。

「・・・!!」

手を掴んだのは、沖田だった。

「お、お前・・・」

「・・・てめぇ、何であんなに走るの早いんだよ。おかげでアイスが溶けちまったぜ」

そう言ってアイスを神楽に差し出す。

「アイス・・・?お前が人に何かを奢るだなんて・・・」

「何でィ。俺、前にお前に酢昆布おごった」

「あれは私が賭けに勝ったからアル。お前が私に奢るのは当然ネ」

「あぁそうかよ・・・まぁ良いから早くアイス食え」

「あ、うん」

ストロベリーアイスを受け取ると、神楽は決心が着いた。

「あのナ」

「あぁ」

「私・・・お前の事が好き」

心臓の音が高まる。

「・・・やっとかよ」

沖田からの返答を聞いて、神楽は初めて山からの景色が見えた。

正当率があがるのなら、距離置くのもいい。

「・・・うん」

なぜか急に、こっ恥ずかしくなった。
なので、ちょっと距離をあけて、後ろを向いて、急いでアイスを食べる。

沖田の顔に黒い笑顔が浮かんでいたのは気のせいだろう。

急いで食べたストロベリーアイスは、冷たくて、でも温かくて。

(というか―――)

涙がこぼれ落ちる。

「〜〜〜っ」

(―――辛っ!!)

辛さに不意うちされて、涙が頬へと伝わる。

「・・・ぷっ」

沖田の黒い笑顔は気のせいではなかった。

「沖田・・・」

「何だよ」

神楽は沖田に向かって跳び蹴りを発した。

「てめェェェ!!またタバスコかコノヤロー!!」

「ひっかかるテメーが悪いんだよ」

神楽の跳び蹴りを軽々と沖田は片腕でふさぐ。

「この借りは一生忘れないアル!!」

「じゃあ俺も一生かけて借りを返してやらぁ」

「え?」

「え?」





違う景色 見えるよ きっと


君と