怖いか怖くないか、そういう問題ではないんですよ。僕が僕で在る事を誰も否定できず肯定できないように、僕が『機関』の一員として神人を狩る行動もまた、誰も肯定できず否定できず同情や制止することも出来ないのです。死?そうですね、或いはそれも僕自身が考えている以上に僕の身近にあるのかもしれません。例えば閉鎖空間の、あの神人との戦いの中で僕の同士たる赤い光球が1つ、2つ、喪われていないと断言することはできませんから。貴方も見たでしょう、あの空間で僕等は『個』を失くしてただの赤い刃になる。戦いの中で刃が欠ける事もあるでしょう。その結果『個』に戻れなくなる者も居るかも知れません。しかし、それが僕の…或いは僕等の、意思を挫くかと言えば答えはNoです。何故なら僕等は同士と言いながら共に戦う誰かの顔を知りません。『機関』はその辺りの匙加減が実に上手だと思いますよ。僕には、僕等にとっては、顔も知らない同士とはつまり『個』ではなく同じ刃の構成物質に過ぎないのです。欠けたなら補充すれば良い。誰かが失われても誰もそれを関知しない。ただそれだけのね。ああすみません、話が逸れました。怖いか怖くないか?答えはYesです。ならば逃げる?答えはNoです。Noにしか成り得ないんですよ、僕等はおそらく『そういう存在』として定義されてしまっているから。誰にって?それを貴方が聞くんですか?
何故?なるほどWhoの次はWhyですか、実に常識的ですね、貴方は。え?別にからかっているわけではありませんよ。何故貴方にこんな話をするのか、それは自分とは異質なものに惹かれるからでしょうね。有り体に言えば憧れのようなものです。貴方がよく、僕に言うように。…ふふ、否定しても駄目ですよ。言うじゃあありませんか、「俺はお前らと違ってごく普通の一般市民なんだ」ええ、それと同じようなものです。僕も、彼女達もね。自分がどういう存在なのか、どれだけ異質で孤独な存在なのか、誰かに宣言したくて溜まらないんですよ。貴方や涼宮さんが宇宙人や未来人や超能力者に憧れるように、僕や朝比奈さんや…ひょっとしたら長門さんでさえ、貴方達に対して憧れに近いそれを抱いているんです。信じられませんか?ええ、いいです。僕の言うことは何もかもくだらない戯言、それでもいいです。僕が、僕等が望むことはただ、貴方という聞き役に自身の脆さを、
「いい加減にしろ、気色悪い!」
突き飛ばすように突き放したその理由は気付かないうちに随分と近づいていた整いすぎた顔ではなく常と変わらぬ張り付いたような笑顔でもなく、