Muv-Luv Alternative~二人の傭兵~
「シルビア、行けるな?」
「問題ありません」
数分の時刻がたった頃、19号目標に近づくにつれ見え始めて来たBETAの大群。
既に19号目標付近では誘導を兼ねた作戦が実行されており、機体が捉えた映像の各地からは火が上がっている。
そしてラザフォート場に釣られて地上に這出てきた万を優に超える数のBETA郡。
このBETA郡の真ん中に道を作り、此方に向かってきているヴァルキリー中隊の道を作らなければならない。
「行くぞ!」
「はい!」
起動していたOBを停止し、メインブースターのみでBETA郡の中枢に突撃する。
光線級の照射を数多く受けるが、レーザーが飛んでくる前にBETA郡のど真ん中に着地。それと同時に弾倉の増えたライフルとマシンガンを放つ。
BETA郡の真ん中に降りることによって突撃級の存在は気にしなくていい。突撃級の進撃力には目を見張るものがあるが、所詮それは一方通行。
その車線上からどいてしまえばあいつらは基本的にその進路を変えることが出来ない。その旋回能力の低さから。
さらにBETAは仲間同士を攻撃することはない。つまり突撃級が要撃級を押しのけてまでくることはない。
そうなれば残る相手は要撃級と小型のBETAのみ。遥後方には光線級、要塞級の姿を確認出来るが、ヴァルキリー中隊はまだ到着しない。ヴァルキリー中隊の到着が目に見えてから光線級、そして要塞級は破壊してゆく。
撃破の手順を決めてから次々と要撃級の体を粉砕してゆく。
粉砕した直後に、その屍を超えて現れる要撃級。その永遠とも思われる無限ループ。埒があかない…!
「シルビア。月光を使う。」
「了解。此方も月光を使用します」
通信が切れると同時に近場で戦闘を行なっていた白輝皇二型は此方から距離をとっていく。
ある程度の距離が離れた事を確認してから二つの月光を起動。
そして現れる紫色に輝く刀身。
「ブラストモードに切り替える。一気に叩くぞ」
「了解」
ML機関の搭載に加え、新しく改良された月光。
かつてはエネルギーブレードとして使用していた月光だったが、新しく改良された月光はエネルギーブレードではなく、その刀身はラザフォート場となっている。
そして月光から展開されたラザフォート場を操作し、密集させてゆく。
薄く展開されていた刀身は中心に集まり、その形をレイピアのように変貌させる。但しその大きさは規模違い。全長100には及ぶであろうラザフォート場で形成された刃は触れたBETAを全て吹き飛ばす。
これだけ言えば新しく改良された月光は非常に便利なものだと捉えられるかもしれないが、そうではない。
ラザフォート場に付加がかかれば、その付加は全て操縦者にフィードバックされる事になる。故に月光は諸刃の刃でもある。その刀身を一箇所に密集させる事により操縦者にかかる付加は低くなっているが、それでもかなりの付加がかかると香月には言われている。
その事を頭の片隅で思い出しながらも、形成された巨大な細い刀身を横一線に振るう。
「…っ!」
視界に広がっていたBETAの少数は弾き飛び、それと同時に頭に響く小さな痛み。
しかし、此処で刃を止める訳にはいかない。まだ道は開けていない。
頭の痛みを抑えつつも刃を振るい続ける。
「此方ヴァルキリー1!あと少しでそちらに到着する!」
通信から宗像の声が聞こえ、それと同時にシルビアの方に連絡を入れる。
「光線級と要塞級をやるぞ。遠距離からのライフル狙撃で行くぞ」
シルビアからの返答は返ってこないが、月光を停止させ空中に躍り出ているので此方の声は聞こえているだろう。
恐らくは月光使用の反動で頭痛が酷くなっているのだろう。最も、それは俺も同じだが。
シルビアが射撃を開始したのを確認し、俺も月光を停止、そして空中に躍り出る。それと同時に左手にライフル狙撃を開始。
空中に出ると同時に数多の照準を受け、数多のレーザーが飛んでくるが、QBを使い錯乱させれば充分によけれる。
トリガーを絞り銃口から打ち出された弾丸は確実に光線級の瞳を打ち抜いていき、着々とその数を減らしていく。
レーダーが捉えたヴァルキリー中隊との距離はおよそ1000。
「シルビアは右に行け。俺は左に行く」
シルビアの返事は待たずに、光線級の撃破を確認した後、バルキリー中隊の進路の左側に機体を向ける。
黒輝皇二型に釣られたBETAの半数は当然俺の方に、そして白輝皇二型に釣られたBETAはシルビアの右側に。
すると当然のように地面を埋め尽くしていたBETAの群集は二手に別れ、一つのHIVEまでの道が出来る。
最初にBETAの数を減らしていただけあってその道の広さはそこそこある。これだけあればヴァルキリー中隊も損害が出ることなくHIVE進入路近くまでいけるはず。
そして光線級をすbて撃破したいまレーダーには弾丸の補充を兼ねた補給部隊もヴァルキリー中隊と合流し全身している。
このままいけば最初の段階はクリア出来る筈。
左手に別れ、BETAの群集が割れ、ヴァルキリー中隊と補給部隊の影が見え始めたところで機体の警告機が甲高い音を鳴り響かせる。
意識をモニターに移せば眼前に要塞級の触手が迫ってきており、反射的にQBを使用し難を逃れた。
「今はこいつらの相手が先か」
意識をヴァルキリー中隊の皆からBETAに切り替え、即座に銃口を要塞級の頭と思わしき部分に向ける。
レーダーを見る限り要塞級の数は30。右腕装備のANNRの弾丸は残り60といったところ。左腕のマシンガンも200は残っている。
これだけあれば要塞級を撃破することは容易に出来る。
俺達がHIVEに潜入した後に後退する補給部隊の事も考えれば今いるBETAを全て殲滅したいところだが…流石に弾丸の問題でそれは不可能だ。
月光、あるいは荷電粒子砲を使えば目前に広がるBETAは全て殲滅できるだろうが…後の事を考えればふさわしい選択ではない。
補給部隊の撤退に関しては各々に頑張ってもらうしかないだろう。
「ヴァルキリー中隊が此処を抜けるまでは要塞級の撃破を最優先にする」
一方的な通信を入れたあと、再び要塞級の撃破に取り掛かる。
既に6体の要塞級を撃破している。
ヴァルキリー中隊の現在位置は今BETAが割れたところに差し掛かっている。
今のペースで行けば充分に間に合う…!
そう確信した俺は此方に向け伸びてきている触手をよけ、一番近くにいた要塞級の背中に乗る。
こいつらBETAは互いを攻撃することはまずない。つまり要塞級の上にいる限り他の要塞級の触手の攻撃は短調になる訳だ。そうなれば簡単によけれる事が出来る。
そして俺の思った通り味方に当てまいと短調になったきた要塞級の触手。
それを難なく避けつつも視界に入った要塞級の頭部をANNRを使い粉砕していく。
「こちらヴァルキリー1!あと少しで抜ける!」
宗像の言ったとおりヴァルキリー中隊、そして補給部隊はBETA郡の中心を抜けるところだった。
作品名:Muv-Luv Alternative~二人の傭兵~ 作家名:灰音