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風香の七日間戦争

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 時間が空いたので、風香は買い物に行くことにした。
仕事部屋にいる小岩井に声をかける。
「小岩井さん、買い物に行こうと思いますけど、何か買ってくるものありますか?」
「んー、大丈夫だと思う」
「それじゃ行ってきますね」
商店街をぶらぶら歩く。
「そういえば、私おしゃれな服ってそんなに持ってないな。もし小岩井さんとデートとかするとしたら、何着てけばいいんだろ」
しかしどう考えても、小岩井がしゃれた服を持ってるようには思えない。
「そうだよねー。パンツマンだもんねー」
さしあたってデートの予定はないので、洋服は後回しにした。

 次に本屋に入り、まず料理の本を眺める。
本を見ながら料理のレパートリーを増やそうかと考える。
後で恵那に料理の本を家から持ってきてもらうことにした。
そして目的の本のコーナーに向かう。
ティーン向けのファッション雑誌を何冊か見てみると、恋愛関係の特集が載ってる物があったのでそれを買うことにした。
最後に鏡を買って、小岩井家に戻った。

 帰ってきてもさしあたってやることもないので、買ってきた本を読み始める。
家ではいつも床に横になって読む風香だが、さすがに人の家ではやめておいた。
「へー、メールでのアプローチの仕方かー。あれ? 小岩井さんて携帯持ってないんじゃなかったっけ。あ、パソコンがあるか。でも小岩井さんてメールは面倒だとか言いそう」
それ以前に同じ家にいてメールは不自然である。

 さらに読み進める。
「『男性は頼られたり教えたりするのが好き』、うーん、小岩井さんちょっと適当なとこあるし。何教えてもらおう」
あらためて風香は、学生の自分と社会人の小岩井との接点のなさに気がつく。
「ああ、夏休みの宿題教えてもらえばいいんだ。それでいこう!」

 風香は家に電話して、恵那にいろいろ持って来てもらうことにした。
しばらくして、恵那が荷物を持ってやってきた。
よつばも一緒である。
「よつばちゃん、おかえりー。恵那ありがとう」
「お姉ちゃん帰ってくればよかったのに。お父さん寂しがってたよ」
「”家出中”だからそうもいかないのよ」
恵那は家へ帰って行った。

 夕食で風香の作った他人丼は好評で、風香自身もその出来栄えに満足であった。
 片付けを終え、自分の部屋に戻る。
恵那に持ってきてもらった荷物を眺めているうちにひらめいた風香は、少々強攻策に出ることにした。
「ふふふ、ちょっとはしたないけど、誘惑しちゃおうかな」

 今日は小岩井がよつばを風呂に入れ、寝かしつけた。
風香はこれからの自分の行動を考え、ドキドキしながら風呂に入った。
そして風呂から上がった風香は、体にバスタオルを巻いて小岩井の仕事部屋に行く。

「こ・い・わ・い・さん」
小岩井は振り返ると同時にふき出した。
「風香ちゃん、そ、その格好は……」
「セクシーですか?」
「う、うん。いや、そうじゃなくて」
「もし小岩井さんが見たければ、このバスタオルの下、見てもいいですよ。一度見られてるから平気です」
そう言い、風香はゆっくりと胸元のバスタオルを緩める。
「風香ちゃん、ちょっと待った!」

 しかしバスタオルを取った風香は水着を着ていた。
「あはは、びっくりしました?」
だが小岩井の目はつり上がっている。
「そういう悪い娘はお仕置きだ」
風香を捕まえ、お尻を引っぱたく。
「痛い! 痛い! 小岩井さんひどいー!」
風香はお尻をさすっている。
「小岩井さん、子供扱いするんだからー。セクハラですよ、セクハラ」
「大人をからかった罰だよ」

「小岩井さん。私って魅力ないですか?」
「いや。十分魅力的だと思うよ」
「だったら……」
「子供はもう寝る時間だぞ」
「男の人ってわかんないなぁ。もういいです。おやすみなさい」
風香は不機嫌な様子で、部屋に戻って行った。
「そんなことを言われても、しょうがないじゃないか」
小岩井は独り言を言い、しばらく考え事をした後仕事に戻った。
作品名:風香の七日間戦争 作家名:malta