世界の中心は帝人くん!
頬杖をついてそっぽを向く臨也はそれでもちらりと視線を動かす。
この場を去るという選択肢は無いらしい。当然といえば当然か。臨也が愛して愛して止まない帝人が同じ空間にいるのだから自分もいて当然というのが臨也論だろう。
とはいえ、嬉しそうな表情ではない。
今にもポケットに忍ばせているナイフを静雄に投げそうな殺気。だがそれをする素振りもない。何故なら、静雄の隣で帝人が眠っているからだ。
静雄の肩に頭を乗せている帝人はすぴすぴと口を開けて眠っている。幸せそうに寝ている帝人を起こす事は臨也には出来ない。
あの冷徹卑劣、鬼畜外道、ありとあらゆる言われて嬉しくない誹謗中傷を言われても笑顔で「ありがとう。それ褒め言葉だから」とのたまう臨也が、だ。
寝顔は見たいけどシズちゃんの肩で寝ているのは許せないシズちゃん死ね。
だけど今シズちゃんにナイフを投げたら帝人くんが起きちゃう。
目が覚めて一番に見る顔は俺じゃないといけない。全く忌々しい。
シズちゃんも満更でもなさそうだから余計むかつく。
カチコチになって呼吸をして帝人くんを起こしてはいけないと息も止めているシズちゃんはそのまま死ね。
帝人くんの隣は俺。
それは俺の役目!
帝人のこととなったら非常に分かりやすく顔に出る。
ブスッと頬を膨らませる臨也は子どもとしかいえない。
しかし帝人にいくら甘く、敵わないとはいえ、限界というものがある。
もういい加減起きてその汚らしい肩から離れてくれないと俺はどうしてしまうか分からない。
ガタリと椅子から立ち上がった時だ。
「ん…、やさん……」
帝人の寝言を聞き逃すはずがない臨也はそれだけで机に突っ伏した。
へにゃへにゃとこんにゃくのように崩れて、あうとか、うわあああだとか何やら唸っている。
いやあまさか臨也がこれだけでノックダウンとはねえ!そりゃ告白どころかまともに顔を合わせる事も出来ない訳だ!いやあ青春青春♪
笑い声を上げた新羅に「帝人くんが起きるだろ!」と一番声を上げた臨也の声で帝人が起きたのは言うまでもない。
作品名:世界の中心は帝人くん! 作家名:(いとを)