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もう一歩を踏み出したい=ひよ恋より=

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気がつくと、
いつもそこにいる……

そこであなたは、憮然として、私の友達を見ている……

そんなあなたに私は、いつしか目が離せなくなっていて……
最近、私の胸の中はあなたでいっぱいだ。

☆☆☆
「またあんたかよ!」
「……だって……」
私と二戸部君は、いつもこんなやりとりをしている。

『私、気になる人がいる』
そう友人のひよりに告げてから、私はいつも彼を目で追ってしまう。

『私は、私の友達も大切にしてくれる人と付き合いたい』

そうずっと思っていた。
二戸部君は、ぶっきらぼうだけど、ひよりのことをなんだかんだで大切にしている。

……というか、ぶっちゃけてしまえば、『ひよりのことが好き』ともとれるような行動を取る時がある。

さりげなく、ひよりをフォローしている彼。
目立たないけど、目に見える優しさより、それはずっと価値があると私は思う。
ひよりの彼の結心はみんなから好かれている……
だからこそ、ひよりにも悩みはつきないわけだけど……

でも、二戸部君は、『さりげなく』ひよりのことを見守っている。

だから、私は彼が……好きなんだ。

この前、私とひよりはちょっとしたいざこざでケンカした。
そんなとき、私を慰めてくれたのが二戸部君だ。

結構勝気で、感情を素直に表現するのが苦手な私でも、彼の前だと素直になれる。
でも、二戸部君がもし……ひよりを好きなままだったら……どうしよう……
そんなことを考えると胸が疼く。

「二戸部君ってさ、ひよりのこと……好き?」
なるべく平静を装って、尋ねる私。
「はっ? あのちんちくりんのことが? だいたい西山には広瀬が……」
そういう二戸部君。少し動揺しているのが私にはわかる。
「じゃあさ、ひよりが結心とその別れたらどうするの?」
そう尋ねると、
「あんたの発言、ときどきよくわからないことがあるんだけど……」
冷やかな視線で私を見る二戸部君。
「私には分かるの! ずっとひよりと一緒だったんだから……それに私……」
そういいかけたとたん、私は口をつぐむ。
「……好きとかじゃなくて……あいつのこと、気になるのは確かだけど……」
「でしょ? ほら、やっぱりひよりのことが……」
「そんなこといったら、あんたのことも、気になるんだけど……俺……」
その言葉に私は真っ赤になって、
「な、なに言ってるの!」
と大声をあげてしまう。
「なんていうか……その危なっかしいところとか、気持ちが見え見えのことろとか……あんたたち、似たもの同志だもんな」
そういう彼に、
「……そのわりに、私の気持ちには気付いていないんだ……」
私がそう返す。
「? あんたが西山のこと大切で、でも、実はすごくさみしがり屋だっていうことは……」
「そういうことじゃなくて!」
「? だったら……何だよ?」
「その……あたしは、二戸部君とその一緒にひよりを見守りたいなぁと」
今の私にはこれが限界……。『好き』なんて言葉直接言えないよ……。
「西山には、広瀬がいるだろ?」
「でも、結心はにぶいとこあるし、ひよりはすぐ自分の気持ちを押し殺しちゃうとこもあるし……あの2人には必要だと思うんだ。二戸部君が」

……
……
しばらく無言になる私たち。

「まぁ、いいけどね……あいつらも、あんたも見てて退屈じゃないし……」
ぷいっとそっぽをむいて、憎まれ口をたたく彼だけど、耳が少し赤くなっているのが分かる。
「あはは……二戸部君照れてる!」
そう私がいうと、
「な! ……」
彼が振り返る。
「あのさ、私も二戸部君とこと、『コウ君』って呼んでいいかな?」
そう尋ねると、
「勝手にすれば」
といつもの口調が返ってくる。
「じゃあ、コウ君! よろしくね!」
そう私がいうと彼は無言で走っていった。

ひよりのこと『もどかしい』とかいってたけど、
人を好きになるって大変だな……
下の名前で呼ぶだけで……私、精いっぱいだ……。
ほんとは、私のことも
『律花』
って呼んで欲しかったけど……。
別に焦らなくてもいいよね。

これで、ひよりと対等になれたかな?
ひよりも二戸部君のこと『コウ君』って呼んでるもんね。
心にあった暗くて重い雲がどんどん晴れていく。
私って単純だな。
そう思った。