go to summer time
シャイニング事務所の若手である七人はロケバスに乗車していた。
向かう場所は聞いていない。
「ねぇねぇ、今日の仕事ってどんなの?」
先頭に座っていた音也が振り返りながら近くの那月に質問した。
うーん、と考えながら那月は答えを絞ろうとしているが出てこない。
「那月、知らないなら知らないって言えよー」
「うーん、どこかで聴いたかなぁ、って思って…」
翔の呆れ声の突っ込みに、那月はやはり悩みながら返答する。
音也はそうかぁ、と納得したような声を出して前方に視線を戻した。
空は青く、太陽は眩しく光って入道雲がどどんと鎮座している。
正に、夏、である。
一週間前に事務所に呼び出された七人はスタッフからスケジュールについての用紙を受け取っていた。
必要なものや集合時間・場所、そしてロケ先は書かれているが肝心の「仕事内容」が書かれていなかった。
何か質問は?の声に全員が、「…で、俺達は何をしに行くんですか?」と真顔で質問したものだ。
そこにいたスタッフ全員が一拍間を置いて大笑いしたのが何とも不思議だった。
この流れは余り宜しくない、基かなりきつい仕事だと全員は兜の緒を締めた。
七人の表情を見てさっき笑っていたスタッフが必死にこらえながら、
「大丈夫大丈夫。怖い仕事じゃないよ、何時も通りに全力で頑張ってきて」
と伝えてきた。
だが、その言葉をその通りに受け取れないのが“シャイニング事務所”なのだと、七人は学園を卒業してからすっかり理解出来るようになっていた。
嫌な予感を抱えながら、それぞれの仕事やレッスンをこなし、現在に至るのである。
作品名:go to summer time 作家名:くぼくろ