東方~宝涙仙~ 其の弐拾(20)
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「真っ薄暗だな。こんなとこに人はいるのか?」
ー魔理沙&霊夢ー
魔理沙と霊夢はちょうど妖精の森の上辺りを飛んでいた。
とくにこれと言って話すこともなく黙々と飛んでいたのだが、妖精の森を見た魔理沙が頭の片隅に残っていたことをふと思い出した。
「そうだ、霊夢」
「ん?」
「大妖精とチルノがな、紅魔館に行っちまったルーミアとその友達を救ってくれって」
「余裕があればね」
「大妖精達も探すらしいが…もし紅魔館内でとんでもないのと当たったらアイツらで勝てるわけないぜ」
「ルーミアの友達が強い事を祈るしかないわね。とりあえず紅魔館の異変解決が先ね」
「まあな」
大妖精の事は見知らぬルーミアの友達に任せた。
妖精の森の上を通り過ぎ、二人の目線は紅い館に向いた。
煙はさっきよりは治まっているもののやはり崩れ落ちている部分は目立つ。
「ひどい崩れようね。とりあえず入りましょう」
「おう…気をつけろよ」
言われなくても気を付けるわよと言わんばかりの表情で霊夢を先頭に二人で中へと侵入する。もちろんエントランスからではなく崩れ落ちて壁のないところから。
二人の侵入した頃にはすでにだいぶ煙は薄くなっていたが、足元は変わらず惨いままだった。二人はちょうど図書館の上の階の辺りの部屋だった。おそらくメイドが何かしらに使う部屋なんだろうが、跡形もないほど崩れ落ちている為何の部屋かはまったくわからなかった。
ひとまずその部屋(部屋といっても天井と壁がかすかにふきとばずに残っている程度だが)から出て廊下へ出た。
「これが廊下なのか?」
「赤い絨毯のおもてなしもないわね」
二人の踏んでいる床はほぼコンクリートの道だった。フローリングも絨毯もすべて剥がされ、内部高層丸出しである。
「こんな紅魔館に住むくらいなら霊夢の神社に住んだほうがマシだぜ」
「今私の神社の価値低くみた?」
「そんなことないぜ」
「はぁ…。なんであんたの嘘はそうわかりやすいのかしら」
「ハハハ。先進もうぜ先!」(←のんき)
「ここは二手に分かれたほうがいいのかしら」
「二手に分かれるとお互いの安否が確認できないからなぁ」
「ただ時間がないわ。別々に生きましょう」
「そうだな。集合は早めで」
「了解」
「ちゃんと生きてろよ?」
「りょーかい」
他のメンバーもそうだが、幻想郷では二手に分かれて行動するのが主流なのだろうか。だいたいのメンバーが二手に分かれえてゆく。
そして今回霊夢と魔理沙も別々の道を行く事になった。
お互いは背を向け右に進む霊夢、左に進む魔理沙と別れた。
ー紅魔館廊下・魔理沙側ー
魔理沙は崩壊の少ない方の道を選んだ。崩壊はしているが霊夢の進んだ方ほど崩れ落ちはしていない。照明もところどころ役割を果たしており、廊下もしっかりとした道になっている。
敵襲にそなえて心臓を常に高鳴りさせながら、その目で辺りを確認して進む。
魔理沙にとって紅魔館とは見慣れたものだが、こうも内装が変わっては多少迷いもする。以前にも何度も紅魔館には立ち入ってはいるが、迷ったせいか一度も来たことのない廊下へとたどり着いてしまった。
「ここの廊下はそんな被爆してないな」
足元がさっきよりフカフカな感触を感じ取るように魔理沙は歩いた。魔理沙の足元にはしっかりと赤い絨毯が敷いてあり、壁はいつも通りの紅魔館の場所である。
フカフカな絨毯の上を辿ると階段に導かれた。
「この階は霊夢に任せてアタシは下を調べようかな」
魔理沙はそのまま階段を降りた。
階段を降りるごとに段々と光を失ってゆく。下の階に光はほとんどなかった。
「真っ薄暗だな。こんなとこに人はいるのか?」
薄暗くてもやはりこの辺りは被爆はほぼしていないようだ。ぽつぽつとしか照明が灯っていないところを思うと確かに電気に影響がでているのがわかるが、所々壁に着いている蝋燭の火が消えていないということは爆炎はおろか爆風すら来ていないというのが証明されている。
「人影ひとつ感じられないぜ」
大雑把に見たところ生き物の気配は感じなかった。
魔理沙は消えたり着いたりを繰り返す照明を薄い眼差しで見つめた。別に何か考えていたわけでもないが、これからどうすべきかわからなくてぼーっとしていただけだ。
「あ、魔理沙さん」
「!?」
心臓に刃物は突き刺さったような勢いで魔理沙は驚いた。瞬時に後ろを振り向くと後ろには美鈴が若干息を切らして立っていた。
「よかった。いつ来るのかと探していたんですよ」
「な…なんだお前か…。脅かすなよまったく」
「じゃあどう声かければよかったんですか」
口元に苦笑いを浮かべる美鈴。
「それより、お前はレミリアを見たか?」
「ええ。お嬢様からの伝言を伝えます…」
"アイラ"と名乗る狂人。そして"シズマ"と名乗るその姉(本当かどうかはわからない)。レミリアからの伝言。美鈴は全てを魔理沙に伝えた。そして最後にそのレミリアが力尽きたことも伝えた。
「レミリアが!?」
「ええ……」
「そんな…レミリアは…レミリアはどこにいるんだ!?」
「案内しましょうか?」
「ああ、死体だろうと、半分生きてようと案内してくれ!」
「わかりました、ではこっちに!」
前を行く美鈴の後を魔理沙は追った。
レミリアの部屋へ向かう途中魔理沙は口を開いた。
「フランじゃなかったってわけか」
それみろ自分の言う通りじゃないかと言わんばかりの流れだったが、深刻な内容にそこまで呑気ではいられなかった。
レミリアに限って本当に死んでいるわけがない―そう信じて魔理沙は美鈴の背中を追い続けた。
ー紅魔館内部ー
ふふふふ。順調ね。
そうか?
多少邪魔が入ってるけどね。
あの二人はだいぶ厄介だぞ。
たかが巫女と魔法使い、アナタがなんとかしてよ。
私が?仕事をちょこちょこ増やすな。それに確実に勝てるとは…。
ま、アナタがなんとかしなくても自然と消えてくれると思うしね。
狂気…か。
そう、その通り。私には狂者がついてるもの。
狂気といえど二人相手にするのは慎重にな。
大丈夫ダイジョウブ。狂気なら二人いるから。
甘くみすぎないようにな。
わかってるって。もしもの場合はアナタが、ね?
時と場合による。
頼りにしてるわよ。
期待はするな。
ふふふ。
▼其の弐拾壱(21)へ続く
作品名:東方~宝涙仙~ 其の弐拾(20) 作家名:きんとき