ドラゴンクエスト・アナザー
第十一話 「青碧の珠光るとき」
陽が落ち、再び魔物たちがやってきた。
なんとセーラは磔にされている。
「おまえたち、天空の兜は持ってきたか」
「残念だな。天空の兜はないぞ」
「なんだと? 俺の言うことを聞かなかったな。街を全滅させてやる!」
魔物たちは街を壊し始めた。
「早くやめさせないと!」
「こういうときは親玉を倒すにかぎる」
しかしゼランの近くにセーラがいるため、思うように攻撃できない。
また青い珠をセーラの首にかけようとしても、容易に近づくことはできなかった。
「何か助けが必要ですか?」
いきなり声が聞こえたので三人はあたりを見渡すが誰もいない。
「ここです。もう少し上ですよ」
なんと声の主は妖精のリサであった。
「リサ! どうしてここへ!?」
「魔物の群れがこちらに向かっていたので様子を見に来たのです。それより勇者様は一体どうされたのですか」
「説明は後。リサ、お願い。この青い珠をセーラの首にかけてきて」
「なにか事情がありそうですね。わかりました。やってみます」
マリアたちが囮となってゼランの注意を引き付ける。
リサはその間に珠を持ってセーラの近くに飛んでいった。
だがゼランに気づかれ叩き落とされそうになる。
リサはゼランの顔の近くを飛びまわった。
「ええい、うるさいハエめ」
ゼランはリサを叩き落そうとしたがかわされ、自分の顔を叩いてしまいひっくり返る。
この隙にリサはセーラの首に青い珠をかけた。
「やった!」
しかしセーラは目を覚まさない。
よく見ると青い珠は輝きを失っていた。
「一体どうして……」
「多分エネルギーが足りないんだ」
「じゃあどうやってエネルギーをあの珠に入れるの!?」
しかし誰にもわからなかった。
「あのー」
いきなり声がしたので再び三人は驚いた。
振り返るとどこから出てきたのか、大勢の街の人々がいる。
「あなたたちは勇者様のお仲間ですか?」
「え、はい、そうですけど……」
「我々のために戦ってくれている皆さんのお手伝いをしたいのですが、何かできることはありませんか?」
マリアはふと魔物たちが朝になり帰っていったことを思い出した。
おそらく光が苦手なのであろう。
倒すまではいかなくても、力を弱めることはできるかもしれない。
「それでは松明などを使って、魔物たちをできるだけ明るく照らしてください」
「わかりました!」
街の人々はどこかに散って行った。
三人は時間稼ぎのため、三方に分かれゼランを攻撃した。
攻撃しては離れるという戦法でゼランを翻弄した。
だがゼランの攻撃がアレフに当たり、マリアがベホマを唱えているときに、マリアはゼランの手に捕まってしまった。
「マリア!」
「グハハハ、このまま捻りつぶしてやる」
「今のうちにセーラを!」
「しかしこのままじゃマリアが……」
「あたしはいいの! 早くセーラを助けて!」
「そんなことはさせん。おまえらは皆殺しだ」
リサがゼランの目に向かっていったが、ゼランの息で吹き飛ばされてしまった。
ゼランはマリアを握った手にさらに力を入れる。
カイがブーメランを投げつけたが、ゼランは角で払いのけた。
「あきらめろ。おまえたちはここまでだ」
「こうなったらメラミであいつの目玉を焼いてやる!」
「よせカイ。へたに攻撃するとマリアがつぶされる」
「くっ、ちきしょう!」
ふと気がつくと周りが明るくなっていく。
「この光は?」
見ると街の人々が大勢両手に松明を持ってやってくるところであった。
松明の明かりがゼランを照らす。
ゼランはその光を浴び、思わずマリア
を落としてしまった。
すかさずカイがマリアを助け出すが、マリアの体は満身創痍であった。
「セ、セーラは……助かったの……?」
「マリア、こんなときまで人の心配をするのか……」
「マリア! ベホマを使え!」
「もう……長い呪文は……だめみたい……」
「誰か! 誰かベホマを使える奴はいないのか!」
アレフが叫ぶが街の人々はみな黙っている。
「我々にできることはこれだけだ。鏡を持て!」
街の人々は大小・赤青様々な鏡を持ってきて頭上に掲げた。
さらに強力な光が魔物たちを照らし始める。
「うぐぐ。そ、その光を止めろ!」
ゼランは苦しんでいる。
「カイ、アレフ……今のうちにゼランを倒して……」
「マリア、すまん。俺はおまえを置いて行けない!」
「セーラ、お願いだ! マリアを助けてくれ! もうセーラしかいないんだ!!」
そのとき――
青い珠が鏡の光を受け、今までにない明るさで輝きだした。
あたりを青い光が包み込み、セーラの全身も青く光っている。
ついにセーラは目覚めた。
そして磔の縄を引きちぎる。
すぐさまマリアのところに行きベホマを唱えると、マリアの傷が一瞬で回復した。
「みんな、ありがとう。みんなの、街の人たちの祈りが聞こえたの。後はまかせて」
青い珠の力の消耗が激しいため、アルメリアでのバルガ戦以来封印していた背中の家宝の剣をセーラは抜いた。
セーラの攻撃はすべて会心の一撃となる。
ゼランも光の中必死に反撃した。
ルカナンを唱えその後強烈な一撃を加えてくる。
だがそこまでであった。
マリアがスクルトで援護する。
さらにカイがメラミで攻撃し、アレフがゼランの目を刺し貫いた。
そしてセーラの会心の一撃がとどめとなった。
ゼランを倒した。
それとともに他の魔物たちも消えていった。
だが蘇生魔法がまだ使えない弱点が露呈してしまった。
セーラが街を見ると既に全滅している。
セーラは申し訳なくなり、街の人々に謝った。
「あの、助けてもらったのに、街を守れなくてごめんなさい」
「いや、地下の街が残っていれば、地上はすぐ復興しますよ」
「地下の街?」
「ああ、ここは本来地下の空洞を利用して作られた街で、地上は主に新しく来た人が住んでいたんですよ」
一行は驚いた。
「そうそう、お渡しするものがあります。ずっと地下に保管されていました」
それは天空の兜であった。
兜を受け取ると青い珠と兜が光り出す。
セーラは天空の兜を手に入れた!
「さてみなさん、今日は宿屋でゆっくり休んでいってください」
「マリアー、お風呂入ろー」
「ええ、入りましょう」
セーラたちはあくびをしながら宿屋に入って行く。
なぜかリサも一緒であった。
作品名:ドラゴンクエスト・アナザー 作家名:malta