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ドラゴンクエスト・アナザー

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第一話 「失われた記憶」


 気がつくと彼女はそこにいた。
ふとあたりを見渡す。
(ここはどこだろう)
そこは広々とした草原であった。
だが見渡す限り人がいそうなところはない。
彼女は見覚えのないこの土地で、どこへ向かって歩いて行けばいいのか迷っているうちに、ふと自分が何者かすらわからないことに気がついた。

(私……誰?)
だが、彼女の記憶のどこにも自分の名前はなかった。
自分が何者か、なぜここにいるのかが抜け落ちている。
彼女は自分が持っている物を調べてみた。
しかし黒い珠が一つあるだけで、手掛かりになりそうなものは何もなかった。

 自分のことを思い出すのをあきらめた彼女はとりあえず歩き出した。
そこに居続けることに耐えられなかったのである。
ところが運悪く三匹のスライムに遭遇してしまった。
スライムはある程度の武具さえ装備していれば、それほど恐ろしい敵ではない。
だが彼女は何の武器も持っておらず、防具もただの布の服というありさまであった。
彼女は危険を感じ逃げ出そうとしたが、スライムに回りこまれてしまった。
スライムたちは彼女に容赦なく攻撃を加える。
彼女のHPが徐々に減っていくが、彼女にはなす術がなかった。

 彼女が覚悟した瞬間、何者かが戦闘に踊り出た。
一人は剣を持った大柄な戦士風の男、もう一人の男は魔術士のいでたち、そして三人目は法衣をまとった少女である。
三人は瞬く間にスライムたちを倒してしまった。
「あなた大丈夫?」
法衣を着た少女が話しかけてきた。
「このあたりは弱い魔物しか出ないけれど、その装備じゃ一人で出歩くのは無謀ね」
そう言いながらその少女は彼女にホイミをかけてくれた。

「あたしはマリア、この魔術士はカイ、そしてその剣士がアレフ」
「あ、あの……助けてくれてありがとうございます」
「君の名前は?」
彼女は事情を説明した。
「えぇ! 記憶喪失で自分の名前も思い出せないの?」
「はい……」
「年は俺たちと同じぐらいか」
「じゃあ17、8ぐらいね」
「それじゃオレたちの村に来て、ゆっくり思い出せばいいさ」
「ああ、そうだな」
「じゃあ名前が必要ね。あたしがつけてあげる。えーとね、セーラってどうかな?」
「ありがとうございます。いい名前ですね」
「それじゃセーラ、オレたちの村へ行こうぜ!」

 かくして彼女はセーラという名前をもらい、彼らの村へ向かうことになった。
村に向かいながら一行は話をしていた。
「何か思い出すような物は持ってないのか?」
「ええ、唯一持っているのがこの黒い珠だけなんです」
「黒い珠……いったい何に使うものなんだ?」
「それが……全然わからなくて……」
「うーん、まあ気長にやるさ」

 やがて一行は目的地についた。
「ここがオレたちの村、アルメリアだ。旅立ちの村とも呼ばれている」
「旅立ちの村、ですか?」
「そう。この村にははるか昔魔王を倒すため、勇者がここから旅立っていったという伝説があるんだ」

 みんなが入り口で話をしていると、マリアがセーラを街の中に引っ張って行った。
「さあ、中に入りましょう。セーラ、村を案内してあげる!」
「やけに張り切ってるな」
「マリアは年の近い女友達がいなかったからうれしいのさ」

 そのころ、世界に魔の手が伸びようとしていた。
「四天王よ」
「はっ!」
「ワシの体はもうじき復活する。しかし魔力を回復するためには、以前ワシを封印した勇者が装備していた武具が必要だ。おまえたちで今すぐ探してくるのだ」
「はっ! ギルドラス様!」
四天王は散開した。

 セーラはマリアの家に滞在することになった。
マリアは村長であるジムラの孫である。
屋敷についたセーラはその大きさに驚いた。
屋敷の中を見て回るうち、ある部屋の壁に大剣が唐突に飾られているので眺めてみる。
「その剣、あたしたちは家宝の剣って呼んでるんだけど、今まで誰も装備できた人がいないんだって。だからどのぐらいすごい剣なのかわからないの」
興味がわいたのかセーラはしばらくその剣に見入っていた。

「さてこのぐらいで大丈夫ね」
「え?」
「セーラの装備を一通り用意したの」
「マリアさん……いろいろありがとうございます」
「マリアさんじゃなくてマリア! なんか他人行儀で悲しいな」
「あの、いえ、そんなことは……」
「くすくす、冗談よ。それより本当に友達として接してくれるとうれしいわ」
「は、はい!」
「それじゃお風呂にでも入りましょうか」

 そのころアレフとカイが話をしていた。
「おい、アレフ。彼女、何者だ?」
「セーラか? そんなことわかるわけないだろう」
「だけど何か引っ掛かるんだ」
「おいおい、おまえがここに連れてきたようなもんだろう」
「そうなんだけどな」
「カイ、おまえは心配性だな。そんなに心配ならずっとセーラを見張っているか? ついでにマリアも見張れるぞ」
「な、何バカなこと言ってるんだ! とりあえず何事も気をつけた方がいいと言ってるんだよ」
「わかったわかった。俺も気をつけるよ」
だが二人が予想だにしない悲劇がこの平和な村に起こることを二人は知らなかった。