ドラゴンクエスト・アナザー
第十九話 「時空のオーブ」
戦いの口火を切ったのはギドラである。
ギドラはイオナズンを唱えた。
ベホマラーで回復しつつ、こちらもイオナズンで攻撃する。
ゼランがルカナンを唱え、打撃で攻撃してくる。
セーラがベホマを唱え、バイキルトをかけたアレフが反撃する。
次にゴルドラが出てきた。
セーラたちが唯一勝てなかった相手である。
ゴルドラは焼けつく息を吐いた。
セーラと、スーパーリングをはめたマリアには効かなかったが、カイとアレフは麻痺してしまった。
マリアは二人をキアリクで回復する。
ゴルドラはパルプンテを唱えた。
ゴルドラたちの力がみなぎる。
そしてゴルドラの打撃は、痛恨の一撃となってセーラたちを襲う。
セーラは天空の剣で、パルプンテの効果を打ち消した。
今度はバルガが冷たく輝く息をはく。
マリアはフバーハで威力を弱める。
しかし四天王の攻撃により、四人のHPは削られていった。
ベホマラーと賢者の石で回復するが、再びゴルドラがパルプンテを唱えた。
またも天空から流星が降り注ぎ、敵味方全員のHPが1になってしまった。
カイは敵の全滅を狙ってギラを唱えようとしたが、それより早くギドラがイオを唱えた。
イオを受けたセーラたちは気を失ってしまった。
四天王はセーラから天空装備を剥ぎ取り、どこかへ去って行った。
ギルドラスは祭壇の間にある魔法陣の中にいた。
その指には赤い指輪がはめられている。
四天王が天空装備を持ち四方に立つと、ギルドラスが声を上げた。
「天空装備を掲げい!」
四天王が持っている天空装備を天にかざすと、天空装備から光が発せられギルドラスの虚無のオーブへと吸い込まれていった。
同時に天空装備が黒く染まっていく。
そして天空装備の光が消えたとき、虚無のオーブの力が復活した。
ギルドラスたちが立ち去った後に、セーラたちが駆けつけた。
しかしそこには黒く変色した天空装備が打ち捨てられてあった。
「みんなが……みんなが守ってくれた天空装備がこんなことに……」
セーラは涙を浮かべた。
一行は黒い天空装備を持って天空の塔へ行き、オルドに見せた。
「これはまた派手にやられたもんじゃな。聖なるエネルギーを残らず吸い取られておる。元に戻すのに時間がかかるぞい」
セーラはうなずいた。
四人は天空装備の修理が終わるのを待っていた。
「天空装備どうなっちゃうのかな。元に戻るのかな」
「基本的には聖なる力を注入するだけだろう。だがあれだけの武具にエネルギーを蓄えるには、俺たちのレベルでは無理だ」
「ギルドラスの魔力は戻ったのよね。何か始める気かしら」
「四天王にもういくつかの街が滅ぼされてるからな。またあいつらが出てくるかもしれない」
二日たち天空装備はオルドにより修復された。
「ほれ、持っていくがいい」
「わーい。おじいさんありがとう!」
「少々おまけしといたからの」
一行は気球に乗り、ヘルキャッスルへ向かう。
気球から様子を見ると、ヘルキャッスルの周りが闇に包まれている。
「ギルドラスはこの世界を闇に変えようとしているのか!」
「闇の部分が増えると俺たちに不利になる。早くギルドラスを倒さなければ」
一行は再びヘルキャッスルにたどり着いた。
だがセーラは前回も感じたが、何かを忘れているような気がする。
このまま進むと取り返しがつかなくなりそうで足が止まる。
みんなが疑問に思いセーラに声をかけた。
セーラは自分の記憶を探ってみる。
そして精霊エルナのことを思い出した。
四人は早速精霊エルナの祠に戻りエルナに会った。
「私は時の精霊エルナ。天空の勇者セーラよ、よくぞ参りました。あなたに授けるものがあります。が、その前に多元宇宙について説明をせねばなりません」
エルナは説明を始めた。
「この世は多元宇宙という無数の平行世界から成っています。あなたが別な世界に迷いこんでしまったとき、たとえその世界が今までの世界とまったく同じように見えても、どこかに違いがあるはずです。その違いは小石一個の違いから世界の根本を変え得るような違いまで様々なものがあります」
エルナは続けた。
「あなたは次元の迷路に入り込んでしまうかもしれません。そのときのためにこの無限のオーブを授けましょう。きっとあなたなら使いこなせるはずです」
精霊エルナに礼を言い、祠を出て再びヘルキャッスルに向かう。
昔ギルドラスと戦った勇者はどうやって倒したのだろうかとセーラはふと考えた。
かつてギルドラスと戦った勇者がいた。
しかしその勇者はギルドラスの罠に落ち、無限のオーブを盗まれてしまった。
ギルドラスが無限のオーブを手にしたとたん聖と魔の力が反発し、ギルドラスの魔力が暴走した。
そのため、その勇者はギルドラスを倒すのをあきらめ、ギルドラスが持っている無限のオーブの力を使い、次元の狭間へと封印した。
だがギルドラスは長い時間をかけ、無限のオーブを魔力で動かす虚無のオーブへと変化させ、次元の狭間から抜け出した。
そして体力の回復を待ち、天空装備の力を利用して虚無のオーブの力を復活させたのであった。
一行はヘルキャッスルの中へ入って行った。
以前同様魔物を倒しながら進んでいく。
やがてセーラは天空装備が強化されていることに気がついた。
受けるダメージが大幅に少なくなっているのである。
セーラはオルドに感謝した。
そして前回四天王に倒された三階についた。
だが四天王はそこにはいない。
四人はほっとしながら先に進んだ。
四階の祭壇の間を抜け、最上階にたどり着く。
おそらくここにギルドラスがいるのであろう。
セーラたちは最後の戦いに向かうのであった。
作品名:ドラゴンクエスト・アナザー 作家名:malta