二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

「ありがとう」

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「ありがとう、コウ君!」
満面の笑顔でいうあいつに俺はいつも戸惑ってしまう。

「アンタ、ありがとういいすぎ……」
俺がそういうと、
「だって、コウ君が優しいからだよ」
あっけらかんにいう。
「俺は、誰にでも優しいわけじゃない……」
「えっ?」
「……な、なんでもない……」
まずい……今、変な気持ちになった。
あのまま俺……アンタになに言おうとしてたんだ?

背が低い同志というだけで、勝手にカップルにされ、西山に好きな人がいて、そいつが身長が190センチもあって、勝手に振られたことになり……

思い起こせば、出会いは最悪だった。
アンタさえ、いなければ俺は平穏な生活を過ごせたはず……。
事実、そう思ってた。

でも、
隣の席でアンタを見てると、『羨ましい』という感情がふつふつとわき上がってきた。
人にたいして、素直に、
「ありがとう」
そういえる人はどれだけいるのだろう?

俺もそうだが、「ねたんだり」、「うらんだり」、「嫌いになったり」……そういうことは簡単なはずなのに、「感謝したり」、「ありがとう」っいったり、「好き」っていったりするのは、躊躇してしまう。

西山は、素直にそれが表現できる……
いや……
厳密にいうと違うか……

「変わったんだ」

アイツ(広瀬)と付き合うようになってから……

人と付き合うということについて、考えたことはあまりない。
同性とも必要な会話くらいしかしてこなかった……

『怖い』

何が怖いのか……よく分からない……。
人と接するのが怖い……。
どういう目で見てるんだろうと疑心暗鬼になってしまう。

それは、西山も同じで、
アイツは勝手に、

『人見知り同盟』

なんて言ってたけど……。
間違ってはいないと思う……。

「アンタのためならなにかしてやりたい」

そんな気持ちすら、芽生えてしまっている。

☆☆☆

「ジー……」
目の前に今、座っているのは西山の友達で、中野だ。
「なに、じっと見てんの?」
そう尋ねると、
「いま、ひよりのこと考えてたでしょ?」
「えっ?」
……
思っていたことをあてられ、驚いてしまう俺。
「わかるんだから……私は、ひよりの一番の友達だし……」
「そうだよな……っいうか、度が行き過ぎてる気もするけど……」
「う、うるさいな……いいでしょ!」
「まあ……アイツは確かに、俺でも気になるし……」

「えっ?」
「はっ!」

中野と俺がはもった。

「やっぱり……二戸部君はひよりのこと……」
「ち、違う! だれがあんなちんちくりん……」
「……あわてて否定いするところをみると、図星だね?」
「だから違うっていってんだろうが!」
「ひよりのこと、気にしてくれるのは私も嬉しいよ」
「だから別に……」
「おっ、出たね……その、『別に』発言」
「アンタといるとなんか疲れるよ……俺……」

なんか、調子狂うんだよな……
中野も西山も……
やっぱり、友達同士ということは性格とかも似てくるのか?

「二戸部君って優しいよね」

突然、優しい顔つきで答える中野に思わずドキっとする。

「そ、そんなこと……」

「そんな謙遜する必要ないじゃん! この前ひよりとケンカしたときも、私のこと、考えてくれて……嬉しかったよ!」
「……あんだけで、泣かれちゃえば……必然と……」
そう俺が困惑しながらいうと。

「あのね、今からいうことはひよりには内緒にしてね。あのとき、ひよりには結心っていう彼氏がいるじゃん? 彼氏なんだから、あたりまえだけどひよりのことをかばう立場になるよね?」

「まあ……」

「でも、あのとき、私の味方になってくれたのは、二戸部君だよね?」
「そんな、たいそうなもんじゃないけど……」
「ううん。私、思ったんだ。いつでも、ひよりの味方でいる……そう思ってたけど、これからだって、喧嘩したり、意見が合わなくなったりすることだってあるよね? だから、私には、「ひよりのことを大切にしてくれていて、でも、いざというときには私の一番の味方になってくれる人」が必要なんだって思ったの。それが、二戸部君だったら私……嬉しいんだけどな……」

顔を真っ赤にしていう中野。

コイツと初めあったときのイメージは、とにかく『大食漢』、『西山一番』という二つの塊。でも、この前の西山とのすれ違いから、
「とっても弱い奴」
そういうイメージに変わった。
多分、西山よりももろいんじゃないか……

「……そういうのは、彼氏にでも頼めばいいだろ?」
そう俺がいうと、

「だから! それが二戸部君だったら嬉しいっていってるの!」

そう強く言う彼女に、

「……」
言葉を失う俺。
それは、つまり、

『俺のことが好き』
っていうことか?

「アンタ、本気でいってんの?」
そう尋ねると、
「こ、こんなこと冗談じゃいえないよ! で?」

「俺は……アンタのこと、いい奴だと思ってるよ」
「……それは私が振られたということなのかな?」
「そういう訳じゃ……ただ、その、西山のことがどうも……って! あっ!」

「やっぱりそうなんだね……ひよりのこと『好き』なんだ?」

「……なんというか気になるということでいえば、西山の方がという意味で、別に好きというわけでも……第一あいつの彼氏は広瀬だし……」

「まあ、そうだけどね……でも、ひより、二戸部君のこと頼っているのも事実だし……。」

ため息をつきながら言う中野。

「でも! 私の気持ちは本当だから……。だから、いつか絶対、コウ君の気持ちを『射抜いて』見せる!」

そういって、中野は部活へいった。

……
っていうか、あいつ『弓道部』だっけ?
『射抜く』とかいうと洒落になんないな……

そんなことを考えながら、

「まあ、俺はアンタのこと、気にいってるよ」

そう小さくつぶやいた。

☆☆☆

『ありがとう』
『好き』

中野と西山のその台詞が頭の中をこだました。

(Fin)
作品名:「ありがとう」 作家名:kureha