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零崎空識の人間パーティー 23話-25話

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<第二十三話 狂戦士>

「ゆらーりぃ……」
 目の前に少女が立っていた。
 やけにボロボロの、服という物の昨日を、ギリギリで果たしているか果たしていないか曖昧な物に身を包んで、両手には恐ろしく凶悪なデザインな、その細腕にはあまりにも不釣り合いなナイフを構えていた。
「……初めまして」
 少女は、まず、そう言った。
「あたし……魔装少女、西条玉藻(さいじょうたまも)ちゃん、です……ああ。それと一年生です」
 そんな少女――西条玉藻の突っ込みどころ満載の名乗りに対して空識は、突っ込まず、少し悲観するように溜息をついた。
「……初めましてって、これで会うの四回目だしー。それと俺はユー派だからー」
 そんなどうでもいい情報を吐露しながら、空識は腰のサーベルを抜いた。
「君がここにいるということは子荻さんも近くに居るということなのかなー?」
「うん、……だけど、それを、おしえ」
 そこで玉藻は休憩する。
「ちゃ、だめって、……言われていて、それで、あなたをお……抑えろって、言われて」
 もう一度休憩。
「いるの……」
「直訳すると、子荻さんの邪魔はさせないってところかー……」  
 と空識は、言葉の意味を咀嚼するように呟いた。 
「うん、やる気が出てきたー」
 サーベルを手首で一回転させ、構えた。
「さぁて、いっちょ、零崎を開催しようかー」
「ちょっと、待って」
 完全に戦闘パートに移行しようとしていた空識を止めるように、玉藻はのんびりとした大声を出した。
「……行き成りなにー?」
 一昔前の芸人のように転びそうになったのを、なんとか耐えた空識は、ほんの少しイラつくように聞いた。
「少し、質問が……あるの」
 そんな玉藻の言葉に対して、興味が湧いたが、速く戦闘パートに入って終わらせたい空識は、
「なんでも答えてあげるからサッサと言ってー」
 と急かすように言った。
「それじゃー……なんで、あなたは」
 休憩。
 空識の気持と裏腹に、玉藻に速く話す気は毛頭ないらしい。
「仮面を被って、いる……の?」
 
 
 
<第二十四話 箱の蓋(葉孤の双)>

 西条玉藻。
 狂戦士。
 読んで字のごとく、戦いに狂っている彼女が、戦いを自分で止めるというありえない事に空識は不思議に思い興味が湧き、玉藻の質問を聞いた。
『仮面を被って、いる……の?』
 どうせつまらない質問だと、高を括っていた質問に空識は驚いた、唖然とした、驚愕した、混乱した、虚を図星を突かれた。
 空識は玉藻が苦手だ。 
 途轍もなく苦手だ。
 戦いに狂っている。
 言い換えれば、戦闘に愛されている。
 戦闘の神に、熱狂的かつ偏執的に愛されている玉藻は、『武器が身体の一部』の更に向こう側のナイフが本体で肉体が付属品の域まで達している。
 さすがの『千刀流』でも本体を奪うことは不可能だ。
 そのうえ西条玉藻は現象である。
 彼女の真意は誰にも知れない。
 本人でさえ知らない。
 勿論、空識もその例外ではない。
(やっぱり、この人は苦手だ。戦闘そのものもそうだけど、中身が分からないうえに、こんなふうに妙に鋭く心抉り込んでくる所とか苦手で嫌過ぎる)
 心の中で悪態をつき空識は嫌々ながら、答えない事を選択せずに答えることを選択した。
「……仮面を被っているっていう表現はあながち間違っていないと思うけどー、俺は蓋をしているという表現をチョイスさせてもらうなー」
「ふた?」
「そう蓋、箱の蓋ー。仮面は偽るもの、覆面は隠すもの、蓋は抑え込むものってことー」
「………?」
 玉藻は空識の言った言葉の意味がわからなかったのか、軽く(おかしな方向に)首を傾けた。
 そんな玉藻を気にせず空識は説明を続ける。
 元々答えたところで、説明したところで、分かってくれるとは思ってない。
 それどころか玉藻は、なぜ戦闘を止めてまで質問をしたかさえ覚えてはいないだろう。
 それでも聞かれた義務とばかりに空識は答え続ける。
「つまりは俺は俺自身を偽っていない、隠していない、抑えてるだけー。 このキャラは、ただ誰よりも『零崎』である俺自身を抑えてるだけー。 分かってくれたかなー?」
 その問いに玉藻は頷いた。
 たぶん、いや確実に理解してはいないだろうが……。
 それも空識は分かっていたがこれで終わりとばかりに、
「うじゃ、零崎を開催しますかー」
 サーベルを構えなおし。
「ゆらぁり」
 玉藻はにたりと笑った。
 それを合図に二人は互いに相手に向かって飛びかかった。
 そして……

 

 そこで目が覚めた。




<第二十五話 愛着(哀摘)>

 気がつくと、そこは古びた小屋の中だった。
 しかし壁には大中小、千差万別の世界中の武器が飾られていて、普通の小屋ではないことは一目瞭然だった。
「起きたようだな。しかしYOU、勝手に寝るのはいただけないな」
 椅子の背もたれに座っている、片目をテーピングでふさいでる男が忠告するように言った。
「ああごめん詰手(つみて)さんー」
 そう言いながら空識は起き上がり、背伸びをした。
「この罪口詰手につまらない依頼をしておいて、しかも私の工房で勝手に寝て。YOUただで済むと思っているのか? 具体的に言うと新作武器のテスト台になっても……」
 片目をテーピングでふさいでる男、呪い名(まじないな)序列第二位『罪口商会』の名を持つ――罪口詰手は懐から禍々しい正体不明な謎の物体を取り出した。
「すみません、もう寝ませんー!」
 空識は一瞬にして土下座に移行した。
「――まあそれは別の機会にしてやろう」
 詰手は謎の物体をしまった。
 ほっとする一方。
(次の機会いって、結局実験台にされるのか……)
 と考え空識の背筋が震えた。
「とにかくほれ、YOUが寝てる間に出来たぞ」
 詰手は椅子の背もたれから降り、布に包まれた物を空識に放り投げた。
「おっとー! もう出来たんですかー? 新しいサーベル」
 空識は布をとり、現れたサーベルの出来栄えを確認するため、鞘から抜いた。
 鞘からゆっくりと生まれる、恐ろしくも美しい刀身に光が鈍く反射され、空識の顔を照らした。
「サーベルなど、オリジナリティの欠片もないやつを作らせおって。YOUの昔からのこだわりなど捨ててしまえ」
「ははー、そうは言っても千刀流を使う前からの長い付き合いですしねー。そう簡単に離せませんよー」
 そう言って空識は、刀身を鞘に納め、慣れた手付きでサーベルを腰に差し、
「うんうんー! やっぱりしっくりくるよー」
 その場でクルンクルンと回転した。
「それはいいのだが空識」
 少し難しそうな顔をして詰手は聞いた。
「うんー? なんですかー?」
 回転スピードを上げながら空識は言った。 
「前の折れたサーベルを見たのだが。YOUあのサーベルで誰も切ってないな」
「ああー」
 その問いを聞き空識は困ったような声を出し、回転を止めた。
「いやーー。 最初から殺す気はなかったんですよー。決め台詞も言わなかったしー。 っていうかーあの人殺したら面倒なことになるじゃないですかー」
「面倒なことにね……」  
 その言葉に可笑しそうに詰手は笑った。
「まあいい。YOU用事は終わったんだしサッサと帰れ」