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東方~宝涙仙~ 其の弐拾壱(21)

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東方〜宝涙仙〜
※入力ミスがあっても気にしたら負けだと俺は思います。はい。



「大丈夫よ。魔法使いと共に行動するなんて昔から慣れてるわ」




ー紅魔館廊下(図書館の階)・魔理沙&美鈴側ー
 美鈴と合流した魔理沙は美鈴の案内に連れられてレミリアのいる部屋へと向かう事となった。
「てッ!」
「大丈夫てすか?」
 先に進むほど電気の被害も大きく、薄暗いを通り越して暗いの領域となった廊下では足元の障害物が見えない。そのせいで魔理沙はすでに何回か転んでいるのだ。
「チクショー何にも見えないぜ。お前よく見えるな」
「私にもかすかにしか見えてませんよ。ただ気を放ってその気の反射で距離を測ってるんです」
「お前の能力そんな使い方もできるのか。すごいな」
 焦りの中でも口元を微笑ませて関心を示す。美鈴の気の感度は幻想郷でも上位に入るほど正確らしい。
 そして魔理沙が降った階段とは違う階段を登り、結局魔理沙は侵入した時の階に戻ってきた。
「ここです」
「おお、ここはさっき通ったぜ」
「あれ?そういやさっきこんな明るかった覚えはないけどなぁ」
「目が暗さに慣れてきたんだろ」
「そうですね」
 ポジティブが揃うとこういう事になる。何の仕掛けも考えずお互いのポジティブで現実的な意見を参考にしてしまう。
美鈴を先頭に二人はドアをくぐった。
「お嬢様ー」
 やはり部屋にレミリアの声は響かない。
「…」
「おいレミリアーッ」
 魔理沙も呼んでは見たもののやはり返答はない。
「おかしいですね…お嬢様はここに倒れていたはずなんですが…。探しましょう」
「おう」
 そんな広い部屋ではないが二人は部屋の中を行ったり来たりしてレミリアを探した。それでもレミリアが見つかることはなく、美鈴が焦りを見せだした。
「本当にこの部屋なのか?」
「ええ間違いありません!」
 美鈴は語尾を強めて言った。たしかに二人のいる部屋のドアには『レミリアとフランの部屋』と書かれており、さっきまで戦闘の行われていた形跡まで残っている。
「アイツやっぱ生きてて自分でどっか行っちゃったんじゃないか?」
「生きていてほしいですが…仮に生きていてもあの傷ですよ?」
「いや、アタシはその傷を見てないんだよ」
 だが美鈴の言う通りレミリアがあの傷で自ら動くことは有りえないだろう。
「でもアイツは吸血鬼だぜ?回復くらいできるん…」
 美鈴が魔理沙の話を切るように口を挟んだ。
「傷が癒えたとしても痛みまでの回復は行えないらしいんです。それにお嬢様は吸血鬼にしてはまだ幼いほうですから回復もさほど早いとは思えません」
「アイツが回復魔法唱えれる訳もないしな」
「ええ…」
「これは紅魔館内でレミリアが持って行かれた可能性が高いな」
「あの状態のお嬢様を?」
「レミリアが倒れてるの他の連中にバレたらやっかいになると犯人が思った可能性もあるぜ」
「そうかもしれません。行きましょう魔理沙さん!」
 ポジティブ同士はどちらかがネガティブを考えるとそちらに釣られてしまうようだ。二人は部屋を後にして証拠もヒントもなしにレミリアを攫った犯人を探しに出た。


ー紅魔館廊下(レミリアとフランの部屋の階)・霊夢側ー
 瓦礫の多い道を選んだ霊夢は後悔していた。魔理沙の向かった楽な方の道を選べばよかったと。瓦礫が多いわりにはたいしてなんの発見もない為退屈気味になっていた。
「なーんにもないじゃない!」
 独りでぶつぶつと、たまに叫びだす霊夢。誰もいないが傍から見たら不気味な光景だ。
霊夢はなんとか瓦礫の多い廊下を抜け、舗装の整った廊下にでれた。
「やっと紅魔館に来ましたって感じね。こっちのほうがいいわ」
 とりあえずは一つ一つの部屋を見て回る事にした。霊夢はこの時すでに他の誰かの気配を感じていた。巫女の勘といえるものなのだろうか、こころなしか同じ階に絶対的に誰かが潜んでいる気がしてならない。しかし決してそれが敵味方が区別できるわけではない。ただ"いる"という感覚を覚えているだけだ。
霊夢はドアノブに手をかける度に慎重に行った。
 しかし今のところドアの向こうには誰もいない。
勘が外れたのだろうと慎重にドアノブに触れることはなくなっていた頃、今まさに開けようとしているドアより先の廊下がやけに明るくなっているのに気が付いた。そこの照明だけ特別明るいということもなかった。
「異様ね…」
 再び霊夢は緊張感を取り戻し、この際部屋ごとの確認は無視して光の発している原点をつきとめ始めた。その方法は特に難しいこともなく、ただ明るい方向を追うだけだ。
しばらくより明るい光を追うとまた光が弱まってきだした事に霊夢は気付いた。
「通り過ぎたのかしら。原点ならもっとガンガンに明るいもんだと思ってたけど」
 霊夢は来た道を戻り、ごくわずかな変化を見極め光の原点を探しだした。
「多分ここね。ちょうどドアもあるし」
 霊夢は言葉を続けた。
「レミリアとフラン…の部屋?やっぱ幼い感じはあるのね。部屋の名前的に」
 音があまり立たないようにゆっくりとドアを開けた。
部屋の中は明るく、まるで電灯の生きたような部屋だった。
「誰?」
 霊夢の耳にはそんなに聞き覚えのない声が届いた。
「あら、霊夢」
 霊夢が声の方向に反応を示すと紫色の長い髪の毛の魔女が何か倒れているものの横に座っていた。
「パチュリーじゃないの。なんでこんなとこにいるのよ」
「ここは紅魔館よ。いて当然じゃない」
「まあそうだけどね」
 パチュリーのほうは冷静なようで、お互い冷静な為主に混乱や言い合いも起こることはなかった。
「この光はあんたの…」
 霊夢の台詞にパチュリーが割り込んだ。
「そうよ、私の光魔法。別に名前はないけど」
「どうりで変に明るいと思ったわ。で、そこに倒れてる御嬢さん」
「ふふん…霊夢にしては遅いわね」
「魔理沙が呼びに来るのが遅かったのよ…多分」
「まあいい。霊夢が来る運命は読めてたし」
「わかったから早く要件を言いなさいよ」
「パチェ」
 パチュリーはレミリアにうなずき、霊夢に事を伝えた。
おそらくレミリアから伝えられるよりわかりやすく話をしてくれたのだろう。霊夢は全ての状況を把握した。
「つまりその狂った奴をとっ捕まえて…」
「フランを取り戻してちょうだい」
「ふー。ちゃんと今度お金は払ってよね」
「紅魔館建て直し終わったらね」
「いつになるのよそれ」
「さあ」
「運命で読みなさい!」
「いーやよ」
 パチュリーの存在と回復魔法のおかげで心身共に回復をしたレミリアは意外と元気になっていたようだ。
そして霊夢と合流したレミリア&パチュリーも、魔理沙&美鈴組同様動き出すことにし立ち上がった。
「レミィ、あなたの回復も中身が完全とは言えないわ。戦闘は基本的に私と霊夢に任せて」
「パチェの言う通り我慢できたら戦闘は我慢するわ」
 パチュリーは何も言わず霊夢の顔を見た。
霊夢は耳に小指を突っ込みながら澄ました顔を贈り返した。
「いい?霊夢…」
「大丈夫よ。魔法使いと共に行動するなんて昔から慣れてるわ」
「私の魔法は縦一直線にしか飛ばないわけじゃないのだけは気を付けておいて」
「はいはい」
 霊夢達は部屋を出た。