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ドラマチック

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俺は逃げている。男から、とびきり脚の早い、バスケ界最速と謳われる男からひーひー言いながら逃げいている。なぜ、どうして。当然、逃げなければ追いつかれてしまうからだ。
さっき、往来で突然ちゅーされて逃げいている。俺が不安だといったから。だからちゅーしたのに、俺が逃げたから彼は追いかけるしかない。

青峰っちはこう、口より手が先に出ちゃうから。あんたはそれでよくたって、俺は不安になってしまう。もしかしたらそんなあんたに愛想をつかして女の子と(それもとびきり阿呆で、顔に全部出ちゃうような)付き合ってしまうかもしれない。

そんな内容のことを軽い冗談みたいに口走ったら、突然神妙な顔して、不安になった俺が覗き込んだのをいいことにキスのひとつ、かましやがって、どんな顔すりゃいいんだ畜生。

「くっそ、黄瀬てめ、にげんなっつの」
「だってあんたおっかけてくんじゃん、正直、めっちゃ怖いっス、その顔、ヤメテー!お巡りさぁん」
「ほんとにきたらどーしてくれんだおい!黄瀬ェエエエ」
「ひーこわっ、そんな脅したり、ちゅーしたり、俺が、そんな、あんたの、そんなっきまぐれみたいなっ行動で、いちいちほだされて、不公平だって、あんたは、ほんとに、俺のこと好きだって言ってくんないし、そんで、俺が、さびしいときになんで、かまってくれないんだって。」
不安になるだろ!

そこまでいって、怒涛のような足音は止み、俺も足をとめて振り返るとバツの悪そうな青峰がいて、ため息が聞こえた。ばっかみてぇに沸いた頭しやがって。ていって、そんで頭をかいている。あきれられた、捨てられちゃうのかな、て思ったときに、俺に一歩近づこうとするから俺も一歩後ずさってしまう。舌打ちして、怒声

「めんどくせーやつだな。そっから一歩でも動いてみろ、さっきの二倍の速さで追いかけて捕まえるからな。」

そんな馬鹿な。だが、さすが最速の男。逃げ切れるはずはないとわかってはいたが。
この男、きっと次の瞬間無理やり言わされたみたいに真っ赤な顔で告白するんだろうな。ほんと、俺が好きなんだって、わかりやすすぎるところも、俺は好きで、好きで、好きなところしかみつからなくて、困る。

ほら、もう、キスをしたいと思っている。
作品名:ドラマチック 作家名:桜香湖