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もかこ@久々更新
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novelistID. 3785
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Take me out to the BallGame

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朝早く起きて、日本は支度をしていた。
また彼と約束がある。
邪険に扱ってもめげずにアプローチしてくる彼に、少し、ほだされてしまって。
満足感を感じていて。
だからこんなに朝早く準備をしているのだ、子どものように食べて「おいしい!」と笑う彼の笑顔が好きだった。

「よし・・・うまく出来たな」

彼は油っこいものが好きだ。
あの味覚に合わせるのは至難の技で、日本は気に入るようなものを必死に考えた。
鳥のモモ肉に衣をつけて、揚げてみた。唐揚げだ。
・・・これはかなり気に入りそうだ。
重箱に詰めて、満足した、
彩りもバランスも申し分ない。
完璧だ。
後は、自分の支度をするのみ、日本は柱時計に目を向ける。

「あぁっ、時間がなぃっ!」

約束まで、あと少し。



日本人の悪い癖なのか、彼が特別緩いのか、
彼は待ち合わせに37分遅れてきた。
15分前から待っていた日本は計52分待たされてしまい、イライラと不安を抱えながら彼を待ったのだ。

「あれー日本早いね!待ったかい!?」
「・・・えぇ50分は待ちましたよ・・・遅すぎます」

彼・・・アメリカは陽気に手を振って、今回試合をするチームのレプリカユニフォームを着て来ていた。
あんな呑気なアメリカ人の中で、一人和服を着た日本は余程目立ったことだろう。
視線は二人に集まっていた。

「えぇ!?怒ってる?ごめんよ、君に会えると思ったら髪型が決まらなくてさ!」

いつもと違う点はどこなのか詳しく聞きたかったが、無駄なことは判っていたので聞き流した。

「何食べる?ポテトフライ?ハンバーガー?ホットドッグも良いなぁ、あ、コーラ飲もう!」
「人気の試合なんですから、先に席をとりましょう」
「そうだね!その荷物持つよ、何が入ってるの?」
「・・・お弁当です」

横目に見る、売店の行列。
この野球場に集まるアメリカ人は、誰一人として弁当持参などありえない様子だった。
何だか気恥ずかしくなって、日本はアメリカが持とうとした風呂敷を胸に抱えてしまった。



席につく。
広い芝生で覆われた野球場は美しく、高い高い緑色の壁が選手たちの強烈な打球を拒むように立ち塞がっていた。
「Opening Days」とペイントされたベンチ前には、逞しい選手たちが出番を待つようにバットを振り、キャッチボールをしていて。
ずっと見ていたいのに、気恥ずかしさの方が先に立ってしまい日本は俯いてしまう。

「それ、何が入ってるんだい?」

風呂敷包みは胸に抱えたまま、日本は俯いたままだ。

「日本?どうしたんだい、今日の試合、楽しみにしてたろ。
うつむかないで、国歌斉唱が始まるよ?」
「私、アメリカ人じゃありませんから・・・」

膝に風呂敷包みが重い。
こんなもの持って来なければ良かった。
コーラとホットドッグを両手に覗きこまれても、気分は最悪だ。
日本はあくまで呑気に始まった「God Bless America」を無視した。
アメリカも呑気にそれを歌って、満足げで。
ますます腹が立った。

「ねぇ!気になるよ、それ何なんだい!?」

歌が終わり席についた途端、思い出したように風呂敷に手を伸ばす。

「あっ!ちょ、何するんですか!!」

物凄い力で奪われて、何とか風呂敷を開こうとするアメリカに呆然としてしまう。
このままだと風呂敷が引き千切られてしまいそうで、仕方なく日本は開こうとして開けないアメリカから風呂敷を奪い返した。
何だか大人げなかったかもしれない。
この家の食べ物に嫉妬するなんて、どうかしている。

「・・・お弁当、作ってきたんです。さっき言ったのに、聞いてなかったでしょう。」
「お弁当ー!?日本が作ってくれたのかい!?食べたい食べたい!!食べよう!!」
「そんなに騒がしくしないでください・・・見られてますから・・・」

声がどんどん小さくなっていく、風呂敷を広げ、重箱を開けた。

「うわぁ、いっぱいだぁ・・・!」

おにぎりにいなり寿司、唐揚げと玉子焼き、漬物。
お茶は水筒に入れて。
完璧な遠足弁当に、アメリカが手を伸ばそうとした瞬間、脇から数本の手が伸びてきた。

「おっ、うまそうだな」
「うまいぞ日本!料理の腕はフランス以上だな」
「よく出来てるアル♪」

周りをフランス、イギリス、中国に囲まれていた。
それぞれ好きなものに手を伸ばし、食べている。
絶望的な状況だった。
この痴話喧嘩みたいなものを、見られてしまった。
しばらくは物笑いの種にされるのだろう、日本は小さい体をますます小さくして俯く。

「おいしい!おいしいよ日本、ありがとう!」

空気読めよ、こいつ・・・
呆れながらも、両手におにぎりを持って幸せそうに笑うアメリカに、
これから物笑いの種になることなどどうでもよくなってしまった。

「ほら、ご飯粒つけて、みっともないですよ。」

ご飯粒を取ってやって、口にした、
大胆な行動にイギリスと中国が思いっきり紅茶をフランスに向かって吹いてしまって、
フランスはウーロン茶と紅茶でベタベタになり怒鳴っていたが、日本は見ないことにした。

「なぁ日本、またこうやってデートしてくれるかい?」

幸せそうな笑顔が一瞬だけ不安に揺らいで、すぐ元に戻る。
本当に子どものような彼の頭を撫でて、日本はにっこり笑い返した。

「いいですよ、またお弁当持って来ますからね」