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鳴華

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今日はいつもと違う雰囲気の里。
神社の周辺は人で溢れかえっている。
大人も子供も里中の人が集まっている。
浴衣を着ている人も多い。
焼きそば、焼もろこし、わたあめ、くじなど、手にはそれらを楽しんだ後が見える。


今夜は祭り。
あちらこちらに知り合いの顔も見える。
皆この日を待っていたかのようで、とてもにぎやかだ。


キバとサスケも例外ではなかった。「あれやろうぜ」
キバがさしたのは射的。
人形や菓子などが奥の棚においてある。
「お前一人でやれよ」
サスケはやったことがなかった。
今までは皆が楽しんでいるこんな日でさえも、サスケは一人修行の日々だった。


「んじゃお前どれが欲しい?獲ってやるよ」
「別にいらねえ」
お構いなしに店主に金を払い銃を構える。

「言ってみろよ」
キバはこっちを向いて笑った。
胸が縮む感じがした。「・・あそこにあるやつ」
「よっしゃ」
真っ直ぐに標的を捉える眼差しにドキリとする。


しばらくしてそれを獲得するとサスケに手渡した。
だがサスケはただ眺めた後キバへ差し出す。
「え、なんだよ」
「お前好きだろ、そういうの」
照れくさくて、呆然としているキバにビーフジャーキーを押し付けると、歩き出した。

自分を呼ぶ声と追ってくる気配。

横に並んだかと思うと、手を握られた。
「こんなとこで、ヤメロ」


祭りは今がピーク、知り合いに見られたらからかわれるだろう。
「嬉しかったんだよ、バカ」
バカというのにピクッとしたが、照れているらしいので許してやることにした。
「顔赤いぞ」
からかうとキバが余計に赤くなるのがわかった。
「・・お前もな」
自覚していないことを言われ驚く。



夜風が吹いて気温は涼しいはずなのに、身体は熱かった。
繋いでいるところから発熱するようだ。
それでも離したくはない。
キバの体温を感じられるから。

「おぉーでけえ」
花火が上がった。
闇に映える、世界中のどの花よりも大きな花。
今にも降ってきそうな花びら。


「心臓に響くのがいいよな」
キバは言う。

でもその爆発音が胸の辺りに響くと、せつなくなるのはなぜだろう。

「ん、どうした」
伺うようにサスケを見る。

つないだ手に力を込め、少しだけ寄り添う。
「サスケ?」
雨でも降るんじゃねえの、と茶化されてムカついた。
「したかったんだ、悪いかよ」
そう怒鳴って手を離す。だが、すぐに温もりは戻ってきた。
「ごめん」
嬉しそうに、にやけた謝罪。自分でも子供っぽいなと思う。


2人は歩き出した。
花火を背に行くあてもなく。
川原を、水の流れに逆らい辿っていくと、人出がなくなる。
祭りの騒ぎももう聞こえなくなった。
ただ花火の上がる音が響いている。
さっきよりも幾分小さい花だが、音が心臓へ響くのは変わらない


「花火はさ、人いないとこで見るのがいいよな。貸し切りみてーで」
キバは腰を下ろし、
相変わらず咲いては散るソレへ眼をやりながら言った。
「あぁ」
誰もいないから、2人だけの花火だなんて錯覚してしまう。


「たーまやー」
いきなりの叫びに驚いた。
キバといるといつも驚いている気がする。
まだわからないことだらけなんだろうか。
悔しかった。

「やめろよ、恥ずかしい」
言うとキバは気にしない風で。
「なんか言いたくなんねぇ?」
と、もう一度叫びそうな勢いだったから思わず口を塞ぐ。
「誰もいないんだからいいじゃんかよ」
「・・ガキ」
「お前もガキだろ」


一通り言い争った後しゃがみこむ。
風が火照った頬を撫でていった。

「そういや、花火終わったみたいだな」
呟いたキバの言葉に夜空を仰ぐと、そこには花火の代わりにいくつもの星が輝いていた。

「すげえ数」
「・・そうだな」
花火の終わったあとの静けさがお互いを意識させる。

その一言を言われるのが嫌で、恐れて空を見つめ続けた。
けれど、隣で何か言いたげな様子を見せているのに気づく。

「サスケ」
「・・・」
「・・帰るか」
胸を突かれる感覚。

帰りたくないと、もう少し一緒にいたいと、言えればどんなに楽だろう。
バカになれない自分に苛立つ。

「・・・あぁ」
そんな弱みは覚られたくなくて必死に自分を偽る。
でも少しだけ気づいて欲しくて間を空けた。
一緒にいた日の夜、一人でいるのは寂しくて。もう少しでいいからこの時間を味わいたいんだ。
それぞれの家に向かう別れ道まででいいから、ゆっくり歩いて。もうすぐこの手を離す時がくる。
無意識に繋ぐ手を強めると、握り返された。
あと数歩で背を向けるという時、足が止まる。
心臓の音がうるさくてキバに届いてしまいそうだ。

「サスケ?」
キバに声をかけられても顔が見れなくて、やっぱり覚られたくなかったオレは手を離して挨拶もせずに歩き出した。
オレは別れ道を左に曲がった。
「サスケ」
少し遠くから呼ばれる声がした。
一瞬止まったオレの足はさらに歩を進める。
「お前んち、行っていーか」
胸が苦しくなり、眼の奥が熱くなっていくのを感じた。


足は


止まった


視界にキバがゆっくりと近づいてくるのが入ってきた。
だんだんと大きくなるその姿。
すぐ隣で止まる。
「いい?」
「・・別に」
キバの問いにあたかもどうでもよさそうにオレは言った。
この手に温もりが戻ってきて2人一緒の時間が延びた。
少なくとも任務に出かける翌朝までは。

顔を背けこっそりと眼元を拭う。
キバは気づいていたかもしれないけど何も言わなかった。
その代わりに握られた手が強まる。

「お前んち着いたらビーフジャーキー食おうぜ」
キバは笑いながら言う。
それはオレを安心させる。

「オレはいらない」
声が震えなくて良かった。
「お前食わず嫌いすんなよ」
「・・犬が食うもんだろ」
オレは犬かと講義しながらも手は繋がれたままで、なんだかおかしくて苦笑した。
キバはそんなサスケに不満だったらしく文句を言う。

そうこうしているうちにサスケの家が見え始めた。
今日は一人じゃないから、いつもとは違う気分で迎えられた。
家に着いたらキバの好きなソレに挑戦してみようと思った。


 end
作品名:鳴華 作家名:モト