【カイルカ】 お題:影
夕日が照らす坂道に、三つの影が揺らめいた。
「リン、危ないよ。ちゃんと前を見て」
ひらひらと坂を横切る蝶を目で追っているリンに、カイトが声を掛ける。
ルカは、そんなカイトの横顔に視線を向けてから、気付かれないよう手を伸ばした。
ルカの影がカイトの影に触れようとした瞬間、彼の影はふいと逸らされる。
「もー、転ぶでしょ? ちゃんと歩いて」
地面に足を引っ掛けてよろめいたリンの体を、カイトが両手で抱きとめた。
危ないからとリンの手を握るカイトに、ルカが内心溜め息をついていたら、
「ほら、ルカも」
差し出された片手に不意を突かれ、ルカは耳まで真っ赤になり、
「なっ、あっ、ば、馬鹿じゃないの!? 子供じゃないんだから!!」
慌てて足早に歩き出す。
「リンも子供じゃないからっ」
「えっ、ちょっ、二人とも待ってよー」
足早に先を行くルカの背中を、カイトの情けない声が追いかけた。
脇を追い抜いて駆けて行くリンを見て、ルカも駆け足になる。
「わーん、置いてかないでー」
慌てて追いかけてくるカイトの足音を聞きながら、ルカは坂を登り切ったら足を止めようかなと考えていた。
終わり
作品名:【カイルカ】 お題:影 作家名:シャオ