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東方~宝涙仙~ 其の弐拾参(23)

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~東方宝涙仙~
※入力ミス注意報!ワーニング!


「大好きなお姉ちゃんは自分を裏切らないってな」


ー紅魔館エントランス・フランドール組ー
 フランドールはかすかに聞こえる足音と会話を察知していた。聞き覚えのある声や初めて聞く声。それらは徐々にエントランスに近づいて来ている。
「なにか来てる」
 アイラもその声を察したようで、シズマに警告をした。
「なにかが?」
 もちろんその警告にはシズマは反応を示した。正直なところフランドールはアイラにその声を嗅ぎ付けてほしくはなかった。もしかしたら魔理沙達が奇襲を狙っているかもしれないからだ。
「うん。人の声…フランちゃんも聞こえるよね」
 アイラの質問にフランドールは少し固まり、顔を横に振った。明らかに嘘をついているのがバレバレで、アイラにその嘘は通用しなかった。
「嘘だ」
「……」
 またも首を横に振るフランドールにアイラが少しイラつきを見せた。
「嘘つきが…」
 それ以降フランドールは首を動かしもしなかった。ただ階段の段の影をじっと見つめているだけの石像のようになった。
重々しい空間がまたも沈黙を作りだす。
 ついに足音はシズマの耳にも届くほど近づいてきた。
「たしかになにか来てるわね」
 フランドールが目線をふと近くのドアに向けた時一瞬ではあるがドアのガラスの部分からその正体が見えた。
水色の服に透明な羽。その横にいるのは緑の服に白の羽。その後ろには黒い服に赤いリボン。さらにその後ろの人物は見たこともなかったがオレンジの服に蝙蝠型のリボンを付けていたのがわかった。
フランドールはその蝙蝠のリボンから姉の姿を連想させ鬱に浸った。誰か助けて―という心の叫びの"誰か"が明確になる。それは魔理沙でもなくなった。

―助けてお姉さま
―私を信じてお姉さま
無意識のうちに姉レミリアを頼っていた。
 インディアン島に10人の人物が招待された。And Then There Were None―そんな事はない。生き残るはU.N.オーエンただ一人。犯人はU.N.オーエンただ一人。
フランドールはU.N.オーエンを演じる。演じているのではない、犯人不明のUnknownを恐れる周囲の目線が彼女を無理やり演じさせている。
"U.N.オーエンは彼女なのか?"。彼女の正体は決して大切な者を殺したりはしないU.N.オーエンだった。
  フランドールは何の犯人でもないという事に気付く者が少なすぎただけなのだ。勝手に犯人にされたU.N.オーエン。その姿はただのインディアンの一人となんざ変わりはない。
フランドールは今も心の暗闇の中で孤独を感じていた。


ドアの向こうから声が聞こえる。
「この先階段がすごいぞー」
「せっかく上の階に来たのにそれじゃまた降りちゃうよ」
「そうかー」
 その声をアイラとシズマは聞き漏らさなかった。
「誰かいるな!」
 アイラが叫ぶとドアの向こうでざわついたような会話が行われた。
「やばいまた誰かにみつかった!」
「どうするの!?」
「さっきみたいに攻撃されるかもしれない。ひとまず逃げよう!こっちに!」
 バタバタと逃げるのが見なくても伝わる。
「逃がすか馬鹿がぁ!」
 興奮したアイラがシズマとフランドールを残して声の犯人を追いかける為にドアもろとも壁を殴り壊して走って行ってしまった。
「あっ、アイラ!」
 フランドールに逃げ出すチャンスが到来したが、鬱に浸ったフランドールはそのチャンスに反応できず暗い顔でシズマと手を繫いだままだった。
「フランちゃんもほら行くよ!」
 シズマがフランドールの腕を引っ張った瞬間フランドールが我に返った様に目を見開いた。鬱の世界から現実に戻ってきたのだ。
「ほら。早く!」
「い…いい…嫌だ。行きたくない…」
「どうしちゃったの早く!」
 さらに強く腕を引っ張られた。フランドールの体が前にガクンと持って行かれる。
「痛っ…。嫌だ行かない!」
「どうせここに至ってお姉さんがフランちゃんを殺しに来ちゃうかもよ?」
 母親が小さい子に"早く着いてこないとお化けにさらわれちゃうよ"と言い聞かすような口調ではあったが内容があまりにも子供向けではないのは確かだ。
「そんなこと……お姉さまは…」
 フランドールの脳裏に運命の鎖で繫がれて神槍を向けられた恐怖が浮かんでしまった。
「そん…な…。ああ…あ…ぁ…。そんなこと…お姉さまが……」
「だから着いてきなって言って……」
「そんなことないぜフラン」
 シズマの言葉に上書きされるように声がかぶさった。
「まだ誰かいたの!?」
 フランドールは素早く上を向いた。フランドールの見たものは大きめのシャンデリア。その天井から吊るされたシャンデリアの上ににやけた少女が乗っていた。
フランドールは驚ききった。人生で今までにないほどの驚きなのに怖くない、むしろその驚きは安心をもたらせた。フランドールの表情にささやかな笑顔が帰ってきた。
「フラン、レミリアに信じて貰いたいならお前がレミリアを信じろ!」
「なんて信じるの…?」
「そんなんも聞かなきゃわかんないのか?しょうがない今回は教えてやろう!」
「誰ですかあなたは!」
 空気と化しかけたシズマが口を挟んだ。
しかし全くもってフランドールと少女の間を割って入ることなど失敗に終わった。シャンデリアの少女は答えを続ける。
「大好きなお姉ちゃんは自分を裏切らないってな」
 フランドールの心にその言葉は奥深くまで伝わった。励ましでも応援でもないその言葉だけでフランドールの心の暗闇は少しながら光に照らされた。
「さーて。無視してすまないなそこのお姉さん」
「随分とマイペースなお方ですね。名前は?」
「アタシも知らないなんて幻想郷のブームに乗り遅れてるぜ!」
「あまり家から出ないニート生活ですからね」
「竹林のニートでもアタシは知ってるのになぁ。まあここで覚えてけ、アタシは普通の魔法使い――」
 自己紹介の途中で彼女はシャンデリアから飛び降りた。 
小さなミニ八卦炉がシズマに向けられた。

    ▼其の弐拾四(24)へ続く