なぞらえて、
木々の青々とした緑、道路の灰色と。実った畑の金色。
それから、民家のクレヨンのようにカラフルな屋根の色。
車窓を眺めながらフランスはサンドウィッチに噛りついた。
冷蔵庫の中の残りものだったが、野菜が瑞々しくて美味い。
隣で頬杖をついているイギリスにも勧めようかと思い、声をかけようとしたが、どうやら眠っているらしい。
微かに寝息が聞こえ、フランスはイギリスの肩を抱き寄せた。
柔らかい蜂蜜色の髪が一瞬だけ頬に触れ、くすぐったかい。
小さな鼻が、ひくひく動く。唇がなにか動くと、小さく「腹減った」と、寝言が聞こえてきた。
思わず苦笑いをしながら、フランスはバスケットに少しだけ、サンドイッチを残しておく。
二人のオフが重なったのは、実に久しいことだった。
何しろ不況だ何だで、どちらも目まぐるしいほど働きづめだったのだ。
もらえた休みはどちらも二日だけだったが、世界情勢を見れば、それでも不満を言うわけにもいかなかった。
何しろ、失業率がフランスとイギリスを含め、各国恐ろしいことになっている。
(今日と明日でゆっくりしたら……また頑張らないとなあ)
フランスはそう考えながら、欠伸をした。
これから向かうのは、そう遠くないマナーハウスだった。
海沿いの田舎町にあり、不況という二文字から逃げられる場所という二人の希望の下、そこで休日を過ごすことに決めたのだ。
しかし久しぶりに訪ねるマナーハウスと町に、フランスは期待で胸を膨らませた。
田舎の広い土地に建てられたマナーハウスは、パリの家よりもキッチンが広くて、料理のし甲斐がある。
それに、農業と漁業のどちらもさかんな町では、さぞかし良い食材も手に入るだろう。
あとは夕暮れの太陽が沈みかけた頃に、二人で海に出かけるのも良い。
橙色が海を染めて綺麗だろうな、とフランスは思った。
汽車はトンネルに入った。真っ暗な暗闇が広がる。
やがてトンネルを抜けたら、そこには自然の色が待っているだろう。フランスはそれまで、目を瞑った。