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Be continued!

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2008年のものがでてきた2012年。コンユ。



「なんていうか……ズキュン?」
「………………」
「いえホントに」
アルバイト中で失礼します、有利は店の常連のスーツを握って離さない。
高そうなスーツにシワが走って、常連さんは眉をしかめる。いや元々眉は寄りぎみだけど。
「それで」
「いや、だから、その、おっ弟さんのことをちらっと話してくれたりとか!さ!」
「そういうことなら自分でやったらどうだ」
「ちらっとだけだってゴッドファーザー!」
「なんだそのあだ名は!!」
「あっ」
怒鳴った瞬間ゴッドファーザーの手のひらからハムスターがするりと籠に逃げた。
驚いたのか、籠の中のさらに奥の寝床まで潜ってしまっている。
「あーほらあんた叫ぶからだよ」
ゴッドファーザーはハムスターのいなくなった手のひらを、がっしり有利の頭の上に置いた。
なでなでと動く。
「…………あの?」
「代わりだ」
「俺は小動物じゃ………いやあんたに比べたら確かにちっさいけど」
小動物愛好家と誰からも銘打たれるゴッドファーザーは、このペットショップに通いつめてはゲージを覗く。
見かねたバイト君の有利がハムスターを一匹渡したのが始まりだった。彼は仕事の休憩と帰りに必ず寄って家族から電話がかかってくるまでずっとハムちゃんと戯れている。
最近じゃあきっかり9時には店の電話が鳴る。
それが、一昨日はたまたま、迎えにきた。
全く似てない弟が二人。
「紹介してとまでは言わねーけど」
「………ヴォルフは昔から男に言い寄られて苦労している。すまないがお前に協力はしない」
「へーヴォルフ、ヴォルフさんかー」
彼の弟は全く似てないが、やはり兄弟揃って格好いい。
茶髪の彼はおそらく次男で、見事に渋谷有利の心臓をつらぬいた。
男にも女にもモテた経験はないが、あの人ならかなりモテモテだろう。
面食いだった覚えはないんだけどなーと、それでも顔がにやける。
「手とかマメ出来てたけど野球とかやってる人?」
「二人とも剣道だ」
「へー!流石!……ていうか教えないんじゃなかったの」
「多少は教えてやるから早くハムちゃんをだせ」
彼の手は未だ有利の上だ。
「あーはいはい。おいでーハムー」
食事をやってるだけあって、有利の手にはすんなりと乗ってくる。
ゴッドファーザーに渡そうとすると、しゃかしゃかと肩にまで登って逃げてしまった。
「うわちゃー」
「……………」「エサとかやってみる?」
「できるのか」
「お客さんは特別」
長めにスライスした人参を持たせると、顔の横でハムスターはひくひく鼻を動かした。
「…………全員父親が違って、そうだな、それを知ったときヴォルフは随分ショックだったようだが」
「…それ俺が聞いて大丈夫な話?」
「お前なら大丈夫だろう」
なにが大丈夫なのかと首を傾げると、頬に毛皮の感触がした。
目の前でゴッドファーザーがうやらましそうにしていたから、少し強引にハムスターを肩から離してゴッドファーザーに乗せてやった。
彼の目元が少しゆるむ。
「でもヴォルフさんでそうだったなら弟さんもっと大変じゃなかったの?なんか歳小さい方がショックでかいだろうし……っと、ごめん。立ち入りすぎた」
ゆるんでいた目元が少し変化していて、咄嗟に謝った。
ただのアルバイトと客の間柄ででしゃばりすぎた。
「何を言っている」
「へ?」
「ヴォルフは三男だ」
「え!?じゃあ金髪の人がお兄さんなの!?」
「違う。金髪なのがヴォルフだ。何を勘違いしたんだお前は」
「ええ!?じゃあ茶髪の人の方は!?」
「そっちはコンラートだ」
今までの勘違いに脱力した有利に、ゴッドファーザーは不思議そうに首を倒した。
「女か?」
「なんで?」
「コンラートに言い寄るのは女ばかりだったが」
「あーごめん男で」
今まで聞いたことも初めから仕切り直しだ。
詳しく言わなかった自分が悪いかと有利は深々ため息を吐いた。
「コンラートなら野球が好きだ」
「え!?」
共通点を見つけて有利がぱっと顔をあげた。
嬉しそうだ。
「一緒に今度見に行けばどうだ」
と懐からだしたチケット一枚。
「もう一枚をコンラートが持っている」
「いいの!?」
「気にするな。新聞の勧誘で貰っただけだ」
「そっちじゃなくて!」
「野球好きの知り合いができればコンラートも喜ぶだろう」
「ありがとうゴッドファーザー!!」
叫びながら有利はチケットを大事にしまうために奥に消えていった。
だから、煩さと付けられていたあだ名に眉をひそめながらのゴッドファーザーの呟きを拾ったのは肩口のハムスターだけだった。



「もともと渡してくれと頼まれていたからな」




081130


(おまたせ!なんか言ってた?)
(いや何も言ってない)
作品名:Be continued! 作家名:ぴえろ