Sore/nante Fate
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「それじゃ話を始めるけど。衛宮くん、自分がどんな立場にあるのか判ってないでしょ。」
「…………。」
俺の幸せな学園生活に突如と介入を果たした魔術師『遠坂 凛』
彼女は何処からかと取り出したメガネをかけ、高圧的な言葉をずらりと並べた。
その言葉に多少の含む所もあるがここは頷いておく。
事を荒げたくない。
「でしょうね、でも一応確認をとったのよ、知ってる相手に一々説明するなんて心の贅肉だし。」
なら関わらないでくれ
俺の心底から絞り出した絶叫は華麗に無視され話は続けられる。
「率直に言うと、あなたはマスターに選ばれたの。どっちかの手に聖痕があるでしょ?手の甲とか腕とか、個人差はあるけど三つの令呪が刻まれてる筈。」
彼女の視線に釣られ手を見る。
「手の甲って…ああ、これか」
「そ、それはサーヴァントを律する呪文でもあるから大切にね。令呪っていうんだけど、それがある限りはサーヴァントを従えていられるわ」
「…?ある限りってどういうことだ」
「令呪は絶対命令権なの。サーヴァントの意思をねじ曲げて、絶対に言いつけを守らせる呪文がその令呪よ。発動に呪文は必要なくて、貴方が令呪を使用するって思えば発動する。」
ちらりとセイバー・・・・・・のおっぱいを盗み見る。
令呪は絶対命令権
令呪は絶対命令権
令呪は絶対命令権
いい響きだ。
三つあるんだし、一画くらい別にエロい事に使っても問題ないよな?・・・ないよな?
「貴方はあるゲームに巻き込まれたのよ。聖杯戦争っていう、7人のマスターの・・・・・・って、何で腕まくりしてるの?」
「これか?これは気分だ・・・・・――――――――――同調、開始」
「なんか令呪発光してるけど?」
「なあセイバー?令呪って魔力通すだけで使え「使えます」ああ使えるのか。そうか分かった。「その説明今私がしたでしょ!!」」
呼吸を整え、意識を集中する。
後ろで遠坂が何かを言っているがもう何も聞こえない。
手の甲の令呪は発動の時を今か今かと待ち構えていた。
―――――「衛宮士郎の名の下に、令呪を以て命ず。」
息を呑む声が聞こえた。
「セイバー、俺の許可無しに服を着ること禁ずる!!」
「なっ」
「はぁ!?」
令呪が眩い光を一瞬走らせた―――かと思えば徐々に光は失われていき、最後には消えた。
既に手には面影を薄らと後を残すだけ、三つ有った内一画の令呪は完全に失われた。
「ふ。っふふふふふふ」
自然と口から声が溢れる。
「俺、魔術使いやっててよかったあ!!」
俺は満面の笑みを浮かべ、隣に座るセイバーに視線を向け―――おおおおおなんだこれは!?
そこには透明な何かを杖に立ち上がり、体中から魔力を放出させ、苦悩の表情を浮かべ何かに耐えているセイバーの姿が有った。
「おい遠坂この令呪不良品だぞ!!」
セイバーが服を着ている―――そう言葉を続ける。
咄嗟に遠坂に話しかけるが何故か呆然と一点を見たまま反応がない。
「ならばもう一度・・・、第二の令呪を以て、重ねて命ず。セイバー服を「不良品はあんたの脳みそだーー!!」
突如復活を遂げた遠坂が殴りかかってきた。
遠坂の右!?俺はそれを咄嗟に避ける。
「何すんだよ遠坂、危ねえな。」
「危ないのはあんたの思考回路よ!!ああもう信じられない、三つしかない令呪をこんなくだらない事に使うなんて。」
「マスター、何故―――! ぁ、はあ、あ、っ………!」
苦しげだが艶を含んだ吐息を吐きながらセイバーは問をかける。何故と
「セイバー、真剣に聞いてくれ。これは作戦なんだ。」
馬鹿と天然は知的に攻められると弱い。
今回は真面目に攻めさせてもらうぜ?
「こんな、ぅ―――、自らの防御――ぁぅ、防御力を下げる作戦――………っにぃ―――、何の意味が、有ると言うのですか!」
最初は辿たどしく、最後にはハッキリと自分の意思をセイバーは発した。
「セイバー、俺は最初思ったんだ。何故君みたいな少女が剣を振り回せているのか。」
「?、何をいって――「魔力放出」!?」
「セイバー、君は自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。そうだろ?」
「・・・・・・」
セイバーは既に言葉を口にする事自体が億劫なのか、首を上下振り、俺の言葉を肯定した。
「セイバー、君が戦闘時に身につけている鎧、衣服。それらは全て魔力で作られた物だ。」
「「・・・・・・・・・。」」
「日本にはこんなことわざが有る。二兎追うものは一兎をも得ず。君は無意識の内に防御に力を入れ攻撃を疎かにしていた、これは紛れもない事実だ。」
「マスター!――っ、貴方は騎士の誇りを侮辱するつもりか!、私は―――。」
「だが、済まない。セイバーがそこまでの不利益を受けているのは俺のせいなんだ。」
「!?」
セイバーも遠坂も、突然の俺の変わり身に酷く驚いている。
「俺の、俺の魔術師としての才能の低さがセイバーのパラメータに影響を与えたんだ。」
「!?そうか、それで私は無意識の内に・・・」
「そう、セイバーは無意識の内に体の構成に力を入れていたんだ。肉体、衣服、防具。それだけが生前へと近づいてしまった。攻撃力を代償にしてね。」
「そんな、しかしそれでは聖杯戦争を勝ち抜けない!いくら身を守ろうと攻めきれなければ―――私は・・・どうすれば」
セイバーはとんでもない事実(嘘)を士郎から聞き歯を噛み締める。
「セイバーは何もしなくていい。」
セイバーの肩に手を掛ける。
「あ―――
今ので完全に力が抜けてしまったのか、セイバー杖代わりにしていた剣を手放し俺に倒れこむ。
「マスター、私は・・・何も出来ないのですか?」
「出来ない事を可能にするのが令呪だ。セイバーが防御に回していた分の魔力を攻撃に回す。令呪はこの為に使った。」
「「!?」」
「マスター・・・私は貴方のサーヴァントになれて良かった。」
セイバーは召喚されて始めて笑みを零す。
「士郎で良い。」
「シロウ、あぁ、この響きはとても好ましい」
落ちた、か―――――――計画通り
「さあだから早く服を「ちょっと待ったあ!!」――む?」
「なんだよ遠坂、俺は今セイバーを洗脳・・・じゃなくて、セイバーと親交を深めているんだよ邪魔するな。」
「いいや言わせて貰うわ。いや言わせなさい!それ令呪使う必要なかったよね!口頭でも良かったよね!!」
っち、本当にめんどくさい女だな遠坂は。セイバーにかけた洗脳が解けたらどうするつもりだ。
「アーチャーのマスター、シロウは私に無意識を気がつかせる為にワザと―――
セイバーは令呪に抗うのをやめ受け入れたのかやけにスッキリとした表情をしている。
「セイバーはもうだめだ!!後凛で良いわよ」
「まあ現実問題鎧着た女が街中歩いてたら目立つだろ?」(後付け)
「サーヴァントは霊体化できるのよ!このおたんこんす!!」
「あ、凛。私霊体化出来ません。」(まさか士郎はこの事を初めから知っていて)
「ああもう分かったわよめんどくさい!!」
作品名:Sore/nante Fate 作家名:mo