【黒バス】黒子の怪談
ユクカタシラズ
※フィクションです。現実のあれこれとは一切関係ありません。
そういえば電車と言えば怖いと言うより不思議な話を思い出しました。
部活の試合で隣県の学校に遠征した時の話です。
普段使い慣れない線を使った為か帰りにとある駅で接続が悪くてかなり待つことになったんです。
私鉄と地下鉄が直通乗り入れしている駅なのであまり調べなくても大丈夫だろうって……あれ? 青峰君が言ったんですよね? ――はい、青峰君、一緒だった時の話ですよ。
それで空いてる時間でボク、トイレに行ったんです。その時、青峰君に声、掛けましたもの。
一度階段を降りて済ませて……5分くらいの間の話です。再度ホームに上がったらもう誰も居ないんです。その日は一軍だからかなりの人数ですよ?
――青峰君に置いてかれたとかかなりショックでした、正直。
……もしかしたら先に電車に乗っただけなのかも……って余りよく確めずに、ホームに止まってた電車に乗ったんです。
乗った瞬間にドアが閉まって電車は駅を出ました。さあ皆を探さなくては……と見渡して気付いたんですけど、居ないんです。
いえ、青峰君達が、ではなくて。誰も乗ってないんです。お客さん、ボクだけなんです。
おかしいなって思って窓の外を見ても見覚えない風景で……暫く行くと川が見えました。土手の斜面に何故かお墓がいっぱい立ってて変な感じでした。
実はこれ、先に種明かしをすると、ボクが間違えたんです。
トイレに行って出た時に上がるホームを間違えてたんです。更にその駅、私鉄はもっと先まで行くけど地下鉄では終点駅なんです……ボクがよく使うJRと相互乗り入れの駅は終点で折り返しなんですが、何故かその駅止まりの電車は全部回送になるんですね。
駅員さんが点検してドアが閉まる隙間にボク、乗り込んじゃったらしくて。
……青峰君、何怒ってるんですか?
え? ボク、方向音痴じゃないですよ、失礼です、火神君……皆さんまで!?
まあ普通なら車掌さんが気付いて止めて再度ドアを開けてくれて怒られるんでしょうけれど、気付かれずに乗れちゃったんです。
その時は訳が解らなくてちょっとした恐怖でした。
いつ止まるのかも何処に行くのかも解らないし……それで運転手さんは居る筈だから運転席の方に行けばなんとかなるんじゃないかって進行方向を目指して歩き出しました。
6両くらい歩いたら人が居たんです。
駅員さんや乗務員さんではなく白い和服のお爺さんでした。まだその時は自分がした間違いに気付いてなかったので、なんだたまたま乗り間違えて人が少ない路線に乗っちゃったのかな、って思ってほっとしました。声を掛けて助けを求めようとしたんですが、そのお爺さんにも気付いて貰えず――いえ、もう慣れてるから平気です、お気遣い有難うございます、高尾君――耳が遠いのかもしれないからもっと大きな声で話掛けなきゃ……って思ったら。
電車が止まったんです。
え……と思っているうちにお爺さんは降りる為にドアの方に行ってしまい、ドアが開きました。
人気のない妙に薄暗い駅でした。
どちらにしても此処で降りて駅員さんに尋ねればとボクもお爺さんに続いて降りようとしました。
そうしたら急に携帯が鳴ったんです。
たまたま制服のポケットに入れたままだったので驚いてよく確認しないですぐ出ました。
こちらがモシモシって言うよりも早く
「その駅で降りてはいけないよ、テツヤ」
って。
赤司君の声で間違いなかったと思います。
踏み出そうとしたまま止まった足の目前でまたドアが閉まりました。
……スミマセン、結局、その後どうやって帰り着いたのかは今では思い出せないんです。不思議です。
ただそれ以上に不思議なのが赤司君からの電話なんです。
作品名:【黒バス】黒子の怪談 作家名:天野禊