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ハイイロオオカミでマフィア企画

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目の前に立つ二人の人物を見て、李織は驚かざるをえなかった。
大財閥の使いだという二人は、李織の予想を大きく裏切っていた。

「初めまして、鈴虫と申します」

そう言ってぺこりと頭を下げたのは、まだあどけなさを残した少女であった。
金色のウェーブのかかった髪を揺らし、ふんわりとしたスカートをはいている。

「…松虫と申します」

そう言って頭を下げたもう一人も、鈴虫と同じ年齢くらいの少女であった。
こちらは艶やかな黒髪に赤い着物が印象的だ。

「俺がこのファミリーのボス、蒼紀だ。こっちは俺の部下の李織」

蒼紀がいつもの定位置に座って足を組み、頬杖をつきながらゆったりと紹介する。
二人はちらりと李織を見た後蒼紀に視線を戻した。

「そちらのソファへどうぞ?」

蒼紀が手でマックのよく座っている二人掛けのソファを指し示す。
今は当然誰も座っていない。

「いいえ、ここでけっこうです」

入口付近に立ったまま、二人は首を横に振った。

「さっそくですが、本題に入らせていただきます。私たちは主人の命により、こちらで取引をさせていただきたくその交渉に来ました」

鈴虫が軽やかな声でそう告げる。

「ふーん…アンタたちのご主人様ってのも物好きだねぇ。わざわざマフィアと取引しようなんて」
「もちろんあなた方でなければ手に入らないようなものを主人は望んでいます」
「そちらで手に入らないものなんてないだろうに」

蒼紀の半分からかうような口調にも二人の表情はまったく変わらない。

「…手っ取り早く聞こうか。何がほしい?」
「情報です」

その返答に李織も納得する。
確かに裏世界のことを知りたければマフィアなどから情報を買うのが一番というわけだ。

「ふぅん。まぁ、取引してやらないこともないけど…」

ちらりと蒼紀が二人を上から下まで見た。

「それにその主人がふさわしいかどうか確かめないことには何とも言えないなぁ」
「もちろんです。そして、それはこちらにも言えることです」

そう松虫が言った次の瞬間、鈴虫の姿が消えた。



蒼紀の鼻先からちょうど30センチあまり先。
きらり、と太い針が光っていた。
ほんの数秒の出来事だった。
鈴虫はローテーブルの上に乗り、アイスピックのような武器を蒼紀に向けていた。
だが、それ以上は動けなかった。
鈴虫の喉元には、細かな装飾の入ってたきれいに磨きあげられたナイフが今にも食い込まんとしていたからだった。

ぎり、と歯ぎしりしてナイフを鈴虫の首にあてたまま李織がうなるような声をあげる。

「貴様っ…」

そのセリフにかぶせるように声が聞こえた。

「ごめんね?」

その声とともに後ろの方で立ったままだった松虫の後頭部に銃口が押しあてられる。
にこにこしながら姿を現したマックがすうっと目を細めた。

「…でも、ボスに仇なそうとする者をほおっておくわけにもいかないから、ね」

そう言って彼は松虫に向けた拳銃のトリガーに指をかけた。

「……………」

その間、蒼紀はぴくりとも動かなかった。
話をしていたときとまったく同じ体制のまま、面白そうな顔ですぐ目の前にある鈴虫の顔を見つめている。

どのくらいそうしていただろうか。
ふいに鈴虫が持っていた武器をおろし、身軽な動作でローテーブルから飛び降りた。
そして何事もなかったかのようにぺこりと頭を下げる。

「突然、失礼いたしました」

横にいた松虫も一緒に頭を下げたので、マックも向けていた銃口をおろす。

「それで、どうだった?」

蒼紀も何事もなかったかのように問いかけると、鈴虫が頭を上げてこたえた。

「はい。まことに勝手ですが、あなたが本当にマフィアのボスとして素質があるかを試させていただきました」
「結果として、あなたになら取引をお任せできると判断いたしました」

松虫が言葉を引き継ぐ。

「へぇ、そりゃよかった。こっちも合格だ。なんでも好きな情報をやるよ」

蒼紀のその言葉に鈴虫と松虫がもう一度頭を下げる。

「ほしい情報があったら連絡しな。取引日時はこっちから追って連絡してやるよ」
「ありがとうございます」



二人が部屋をでて扉が閉まる。
そのとたん、全身を包んでいた緊張が一気に解け、代わりにこみあげてきた怒りを蒼紀にぶつけた。

「っこのバカ! お前何余裕ぶってんだよ! お前だって一応ボスなんだから何かあったらどうするんだ!」

李織のセリフにも蒼紀はまったく気にするようすはない。

「いや、だってお前がいるから大丈夫だと思って。っていうかなんだよ、一応って…」
「そういうことじゃない!! 少しはボスだって自覚を持って…」
「まあまあ。李織もそのくらいにしてあげてよ」

結局いつもの流れになってしまい、李織はため息をついてソファに座りこんだ。

「すげー焦ったんだからな」
「悪かったよ、ごめん」

蒼紀が帽子を軽くあげてみせる。

「でも本当に信用してたんだって。マックだっていたし、外にはテオもいるんだろ?」

そのセリフに扉が開いてテオが顔をだした。

「バレてましたか」

だがその顔を見て、蒼紀が噴き出す。
李織もつられてみて、思わず噴き出した。
テオの顔に黒く落書きがされている。

「笑わないでくださいよ、ボス」

居心地が悪そうに入ってきたテオを見て蒼紀はますます笑いだした。

「今日のヨハン、すっごく機嫌がよかったよ」

そうマックが答えて合点がいく。
なるほど、ヨハンのおもちゃにされたというわけだ。
お気の毒に。
李織は困った顔をしているテオに内心合掌した。


「取引だけどテオ、おまえも来い」

ひとしきり笑った後、蒼紀が顔を拭いているテオに声をかけた。

「え? 俺もですか?」
「あぁ。今回はこっちはどっちかっていうと守りだからな。お前がいた方が都合がいい」
「わかりました。ボスがそうおっしゃるなら」
「これは面白くなってきたなぁ」

そうつぶやく蒼紀を見ながら李織はこれからの取引のことを考えてまた一つ小さくため息をついたのだった。