神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~49-59話
第53話 地獄メニュー
5月6日、いよいよ地獄メニューが幕を開ける。
「先ずは裸足になってこれを履いて貰おう」
士郎が取り出したのは半分に切ったゴム草履だった。
足の裏の半分しか隠れないゴム草履、一体これで何をしようと言うのか?
「上履き用と、外用と2足ずつ準備してある、
中で過ごす際は必ず履く事、近所の買い物程度ならこれを履きなさい。
でも絶対に踵を地面に着けない事、これを守るように」
「別にハイヒールでも良いじゃん」
と言うなのはに、士郎はこう答える。
「あれは踵が支えられているからダメだ、これは踵を常に浮かせている事に意味があるんだ」
最初は平気でも意外とと言うかもの凄く地味にキツイ。
立っているだけで結構疲れるのだ。
普段の筋トレはメニューそのままに、新たにとんでもないメニューが追加された。
「これをやって貰おう」
士郎が紐を引くと道場の天井から何本もの木の棒が出てくる。
天井から下に向かって伸びた棒は、長さはおよそ50センチ、太さはT字ほうきの柄と同じぐらいだ。
前後左右30センチ間隔で横に4列、道場を一周している。
「この棒に掴まって道場を10周して貰おう、
ただし出来る限りゆっくりやるんだ、片手当たり1回10秒程度掴まるように、それからギブアップは許さんぞ」
そう言って床に画鋲をぶちまけた。
これで着地できるのはそれぞれが立っている椅子の上だけとなった。
「き、キツイ、ヴィータちゃん早く行って~」
「ば、バカ、あたしだってそんなに早く動けねえよ!」
「う、腕が抜ける~」
前が詰まれば大変な事になる、まあそれを避ける為に横が4列あるのだが、
横へ避ければその分移動する距離は長くなる、それが地味に体力を奪っていく。
そして最初の犠牲者はフェイトだった。
7週目の前半で力尽きて下に落ちた。
「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
もの凄い悲鳴になのは達はご愁傷様と心の中で手を合わせた。
そしてシグナムも犠牲に、落ちた際足の裏だけでなく尻餅をついた為更に悲惨な事に成った。
結局最後まで落ちずに頑張ったのはなのは、はやて、ヴィータだった。
体重の軽い方が有利なようだ。
「でもこんなことして腕が太くならないのかな?」
なのはの素朴な疑問に士郎が答える。
「チンパンジーを見てみろ、腕は太いか?」
そんな事はなく細い腕をしている。
「チンパンジーはあの細い腕で、握力250Kg、最大700Kgの物を持ち上げるんだ。
このトレーニングは上半身の筋力を付けると共に腕の筋持久力を大幅にアップさせる為にあるんだ」
そう、このトレーニングは僧坊筋、大胸筋、三角筋、各腕の筋肉と握力を鍛えるトレーニングだ。
これをクリアすると、士郎が画鋲をほうきでどかしてくれた。
流石に地獄メニューである。
でも、美由希の話によるとこれはまだ序の口で、これからどんどん酷くなるらしい。
「お、鬼だ……」
なのは達はそう思った。
「さあ、ジョギングの代わりのメニュー行くぞ!」
初詣で行ったあの神社までマラソン、そしてそこでまたとんでもないメニューを言い渡される。
「この斜面を3往復して貰おう」
ここの斜面、傾斜が40度くらいある。
しかも距離にしておよそ150m、結構キツイ、しかも3往復からである。
やっている事は地味なのだが恐ろしくきつかった。
これに慣れるまで、およそ一月、
雨の日は道場の中で足腰のトレーニングが待っていた。
その後、更にメニューがきつくなっていく訳だがそれはもう少し先の話。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~49-59話 作家名:酔仙