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漆黒と純白・6

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ゴミが無惨に散らかり、薄汚いコンクリートの地面には血痕が転々と続いていた。

途中倒れていた数人の男性は皆銃殺であった。
傷口から弾を取り出してみた所、ショットガン専用の弾だという事がわかった。
香が殺ったのだ。
つまりこの先に行けば彼らに逢える。
またはすれ違いにもなるかもしれないが確認も兼ねて行くしかない。


湾はハンドガンを構えて血痕を追っていた。
先程菊にまだ新しい血痕があると無線で連絡をした所湾さんはそちらを追ってくださいとの事だった。
このだだっ広いコンテナ置き場で二人を四人で探すには骨が折れそうな作業だ。
そんな中で些細な情報は見逃せない。
まだ新鮮な赤い血はまだ続いている。
血痕は、フェンス際にぽたぽたと続いている。
そして足跡と血痕の様子からしてこの人間は脚を撃たれたのだろう。
ふらついているのでフェンスに体重を掛けながら引きずる様にどこかに歩き続けている。
そんな状態なら直ぐ様追い付くだろう。
湾は小走りに血痕を追った。


「まずい…先生、持っていかれた…。」

こめかみに滲む血は遂に頬を伝ってぽたりとスーツに染みを作った。
左足は既に真っ赤に染まり、明らかに出血多量である。
それでも尚、香は歩き続けた。
普通の人間が数歩で行ける距離を今では痛みを噛み締めてなんとか左足を庇いながら右足を動かし、フェンスに肩を預けながらよろよろとしか歩けないでいる。
右手は左肩から流れ出る血を押さえようと掴んでいるが血は止めどなく流れ出ていた。
頭がくらくらしてきた。

「やべぇ…血が、足りな…い…。」

目の前が真っ白になり香はそのままどさり、と倒れた。


******


「―――っ!!香!!」

血痕を追っていた湾が遂にその人物を見つけた。
ハンドガンを置き、うつ伏せで倒れている香を仰向けにし、傷口を見た。
左肩と左足に一発ずつ。
そしてこめかみに深い擦り傷。
確実に神経と血管が集中している場所に弾がめり込んでいた。
先ずは応急措置だ。
湾は血止めをする為に救急用の包帯を傷口の少し上にきつく巻いた。
縛った途端、うっと呻き声が上がった。

「香、意識はある?私ヨ、湾だヨ!」
「…湾…早く、菊さん、に…先生の…。」
「今は香が優先ヨ!待ってて、いま勇洙のヘリを呼ぶから。先生は菊さんが見付けてくれるヨ!」

寒さで震える香に上着を被せて湾は尚も耀を探そうとしている香を説得してみせたが、どうやら何か違うらしい。

「…駄目だ。…先生、は、見つからない。」
「香?」

そうだ、そもそもどうしてこの二人が雑魚相手に血を流すのだろう?
どうして弾を喰らったのだろう?
矛盾が湾の頭を駆け巡った。
何かがおかしい。
無線で勇洙に連絡すると直ぐ様ヘリは来た。
取り敢えず中で怪我の処置をしなければ。
香を抱きかかえ、ヘリからぶら下がるロープに掴まった。


******


「香さんが重症?」

無線越しのエリザベータはどこか慌ただしくしていた。

『左足と左肩に一発ずつ。出血多量だわ。無理して歩いたから。』

コンテナの上に乗ってサーモグラフィックを覗く菊はやはり、と呟く。
人間が居る気配は無い。

『それと、さっきからずっと耀さんはもう見つからないと繰り返すのよ。今は眠ってしまったからどういう事かはわからないけど…。』
「見つからない?」

サーモグラフィックを懐に仕舞うと、チッと舌打ちをした。
一足遅かった。
もっと頭の回転が早ければ、こんな事には…。
怒りが治まらないが、今は冷静になって対処しないともっと酷い事になり兼ねない。

「私もそちらに戻ります。退却しますよ。」

コンテナから飛び降り、着地をすると暗い道を革靴を鳴らして走った。


******


見栄えの良い黒塗りの車が一台、街中を走っていた。
カーテンは全てひかれているので中の様子を伺う事が出来ないのである。

「…あぁ、こっちで捕獲した。」

車の後部座席に優雅に脚を組んで座るアーサーは嬉しそうに煙草をふかした。
どこか独り言の様に話す彼だが、その耳には無線機がはめられており、誰かと会話していた。

『なんだよー。だったらお兄さん出なくてよかったじゃない!折角美女と飲んでいたのに…。』
「こっちはその美女より何倍と美しいもん捕獲したんだぞ?分け前は欲しくねーのかよ。」
『どうせアーサーが一番楽しむんだろ?』
「あんま文句つけるんだったら見せてもやんねぇぞ。」
『はいはいわかりましたよ。じゃあ俺も戻りますから。』

ブツッと無線が切れる音が聞こえるとアーサーは耳から無線機を外した。
そして再び煙草の煙を吸い込むと美味しそうに吐き出した。
車の中が煙草臭いのはその為である。
暗い街中ではビルの看板や車のライトで華やかにライトアップされていた。
今頃きっと必死に探し回っているのか、それとも生かしておいたあの“馨”とやらが伝えたか…。
アーサーはくつくつと喉を鳴らした。

「ふふふっ、ははっ、なぁ、楽しもうぜ?耀。」


アーサーの隣では拘束され、口にテープを貼られて座席に横になった怪我をした耀がアーサーを睨み続けていた。



(続)
作品名:漆黒と純白・6 作家名:菊 光耀