ジャックの手が赤い。触れてみると熱を持っている。血の巡りが良くなると、白い肌は簡単にそれを映す。視線を上げると、耳も頬も真っ赤だ。澄ました顔をしているつもりでも、冷静でいるつもりでも、丸分かりだ。あのジャックでも、皮膚の下までは制御できないのだな、と、遊星は愉快になった。胸にぴたりと寄り添うと、鼓動も随分と速かった。どくんどくんと血を送り出している。その音を全身で聴きながら、遊星はジャックに口づけた。互いの唇をゆっくり湿らせながら、ジャックの上体を倒していった。金色の髪までベッドに押しつけたとき、より強く唇が重なった。こうなると、遊星はジャックを隅々まで、心おきなく眺めることが出来る。眦の描く線や額の形が、見上げるだけの普段よりも、よく見える。ジャックが赤い顔をしているのも。くちづけから解放されると僅かに引き結ばれる唇は、緊張の表れだろうか。両の瞳は遊星を見つめているようで、でも少し揺らいでいる。何事にも自信があるように見え、尊大でさえある幼馴染のこういう一面に、遊星はいつもたまらない気持ちにさせられる。それを表わすための言葉を探して、ふと、心に浮かんだままを述べた。
「……かわいい」
おまえは、かわいい。
声色は淡々としたものだったが、口にした途端、ジャックは目を丸くした。
「な、ッ……」
あまりに驚くものだから、もう一度言ってやりたくなった。もっとはっきり、音にした。
「おまえは、かわいい」
「ッ……!!!」
「ジャック」
伝える度に、ジャックの頬はますます赤くなった。表情には驚愕と共に羞恥と焦りが浮かんでいた。ジャックは二の句も継げない様子で、遊星は別に何も言われていないのに、ジャックのそんな様子を一部始終見つめるうち、遊星は彼に触れたくて仕方がなくなっていた。抱きしめて、余すところなく触れて、大事にしたい。こういうのがきっと、愛しいということなのだろう。ジャックが愛しい。今度はそれを伝えるために、遊星はもう一度キスをした。