必殺仕事人 in ヴォルケンリッター 第17話
数日後、クラナガン市内の某居酒屋にて、
「皆さん、仕事人としての活躍本当にご苦労さまでした。
仕事人は、本日をもって解散したいと思います」
「総元締め、何故今になって解散を?」
はやてがそう尋ねる。
「もうこれ以上は仕事人として活躍する場が無くなるからです。
今までの様に犯罪者を野放しにする事の無いよう新しい法律がもうすぐ成立します」
「今までとどう違うのですか?」
「執務官、捜査官に隠密行動の権限とその場で即時逮捕権を執行できるように法律を強化しました。
つまり、相手が誰だろうとその場ですぐに逮捕できるようにしました。
もっと簡単に言うなら踏み込まれたり逮捕されたりした方が悪いという風に法律を改正したのです」
「つまり、自由に捜査出来て、自由に踏み込めて、自由に逮捕出来る言う事ですか?」
「そうなります」
「でも、世の中には病むに病まれない事情で訴える事すら出来ない人たちもたくさん居ると思います。
そう言う人たちの事を考えると仕事人も必要ではないか?思うんですが……」
「だからこその隠密行動なのです。
それに、これ以上あなた達に闇に染まって欲しくはないのです」
はやてははっとした、既に自分の中に「悪人=仕事→殺す」と言う図式が出来上がっていたのだ。
闇に染まる自分、そして部下達、もしかしたら取り返しの付かない事になるかも知れない所だった。
「でも、もし巧妙に逮捕を逃れようとする犯罪者が居た場合、仕事は個人の裁量に任せます。私はこれ以上干渉はしません」
これを持って、仕事人は組織を解散した。
レティ提督は今まで以上に忙しい日々を送る事になっていく、そして、はやて達もまた忙しい日々に忙殺されていく事になるだろう。
「……言う訳や、もう殺さんでもええよ、フェイトちゃん」
フェイトの目から大粒の涙が溢れていた。
今までの仕事は、苦い思い出として残るだろう。
でも、これからはそれを教訓に執務官としてやっていけるだろう。
これで、フェイトは何か吹っ切れた様だった、自宅に戻ってもヴィヴィオを見る目が以前の優しいフェイトに戻っていた。
もう、彼女は闇に落ちる事はないだろう?自分の闇と向き合える強い心と暖かい仲間がいるのだから……
「……と言う訳や、みんな、これからは極力逮捕や、でも、どうしても許せへん悪い奴だけは始末する方向で行こうと思う」
「つまり、仕事人はやめるのではなく、たまには仕事をするという方向になるのですね?」
「シグナムの言う通りや、今後は年に1回あるかないかの仕事になると思うけど、これからもよろしく頼むわぁ」
その時だった、シグナムを筆頭にヴォルケンリッター6名がはやての前に跪いた。
「主、我らヴォルケンリッター6名、何時、如何なる時も主に従い、主を守り、どこまでも供すると改めて誓います。
例えそれが如何なる地獄であろうとも」
はやてが、大粒の涙をこぼしながらみんなに抱き付いた。
「ありがとう、ありがとうな、みんな」
彼らの絆は、血の繋がった家族よりも固い。
作品名:必殺仕事人 in ヴォルケンリッター 第17話 作家名:酔仙