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神主さんショック 詰め合わせ

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(極月)




はたはたと風になびく音を立てるのは、病院の屋上に干された白いシーツだ。
翻る風の合間に見え隠れする空は抜けるような晴天で、ただ目に眩しい。
今は、こんなまっすぐな色が似合わない人物のことしか頭に浮かばない。
意識を無くして眠り続ける昔馴染み。
閉じられたままの瞼の向こう、薄い茶色の瞳が自分を忌避する色さえ望んでしまうなんて。
なんてザマだ、と言いたくなる。
自分にも、あの粗忽者にもだ。

(お前は俺に、そんな風に思われたくなどないだろう)

だから、と思う。
だから、どうか、はやく。

(早く、目を覚ませ)





 * * * * * * * * * * 

(シュースク)




くりは、文中に『離れ』を入れて【構って欲しい】をイメージした140文字作文を書いて下さい。 #140SS http://shindanmaker.com/210384


隣町って遠いな、とシュースクは思った。
店の常連で暇があれば(神主という職業が本当にあんなに好きに時間を弄べるものなのか、シュースクは知らない、いつも不思議だ)長月のコーヒーを啜るかシューのランチを頬張るかしているあのひとが、今はその遠いところにいる。
当然、今日も店には来ていない。
見舞いにも行ったけれど、いつもの軽薄な顔はどこにもなくて、ただただ静かな寝顔だった。
階段から落ちた彼、現場を見たのは自分だ。
どうしようと慌てふためくだけの自分には何もできなかった。
全部手配したのは何故か現れた極月だ。
お見舞いにすら、極月に連れていってもらった。
親しくしているつもりだったけれど、何もできない自分がこんなに心許ない。

(神社サン、ハヤク、)

軽薄なあの笑顔が見えないだけで、こんなにも、

(ハヤク起キテヨ、大好キナチャーハン作ッテ待ッテルカラ)





 * * * * * * * * * * 

(霜月)




クリノは、文中に『寝坊』を入れて【心配】をイメージした140文字作文を書いて下さい。 #140SS http://shindanmaker.com/210384


「寝坊ばっかりしていると、みんなに呆れられちゃうんですよ、しーちゃん」

なんて言ってたのはどこのどいつだよ。
滅多に寝坊なんてしない俺が、ちょっと寝過ごしたの聞き付けてわざわざからかいにやってきた時のこと、忘れてないんだからな。
あんたがどんな朝の過ごし方してるかなんて知りもしないけど、どうせ自堕落に暮らしてるんだろ、自分の方がよっぽど。
いつもいつもへらへらふらふら、どうしてこのひとはしゃきっとできないんだろうと子どもながらに呆れる俺を、…でも、本当はものすごくあったかい目で見てたこと、知らないとでも思ってんのかよ。
いつまでもだらだら寝てんなよ。
さっさと起きろよ。
あんまり寝坊ばっかしてると、みんなに呆れられるんだろ?

早く、起きろよ。





 * * * * * * * * * * 

(極月)




どうしてだろう、昔のことばかり思い出す。
昔のように顔を突き合わせて話すことなどついぞなかったせいだろうか。
いや、今も話などしない。
忌避されているのではなく、できない状態なのだから、話のしようがない。
今はもう、昔とは別人のように変わってしまった幼馴染み。
どちらかというと嫌悪を滲ませて、いつも浮かべているはずの軽薄な笑みを保つ努力さえ放棄したのかと思う顔で自分を見る。
けれど、眠っている間は何の色も浮かんではいなくて、夜中に一度だけうっすらと開いた瞳は、奥まで透けるかと思うほどに透明だった。
この男に限ったことでなく、年を追うごとに積もっていく誰しももっている濁りが、あの一瞬だけには見えなかった。
まるで昔の、二人とも何の隔たりもなく接した昔のような。
唇が震えるように動いて、耳を寄せればかすかな声が、自分を読んだのだと知った。
「ごくづき」と。
明確な意思をもったというよりは、おそらく目に映ったものを反芻しただけだろう。
覚醒は朦朧としたもので、とてもではないが長続きするようには思わなかった。
それでも、なんの含みもなく呟かれたたった4つの音が、まるで昔のようで。
二人が距離を置き始めた頃のような焦燥が、胸に燻った気がした。
すぐに閉じて再び持ち上がる気配のない瞼の下の色が、もう一度見たいなんて、自分がそんなことを思うなんて。
胸の内に湧く過去の思い出に身を沈めながら、静かな病室の時間は過ぎていく。




2012.9.29